カンティアの森
結局サリアはリアンを連れて帰れなかった。
もう少しでついていけたのにカルナのせいでついていけなかった、と愚痴る。
結局あのまま緊急事態とか何とか言われ家に帰されてしまった。
サリアはまだ帰らないと言ったが父親に怒られてしまった。サリアはこの頑固親父が、と内心で叫ぶ。
しかし、サリアはまだ諦めたわけではなかった。家でもう一度アリシアに行く為の準備をする。
あとはどうやってアリシアに行くかだが…私には心強い友達がいる。
「サリアさん!お久しぶりです!」
「久しぶり」
そう、皇族の力で異世界に行こう!
「あれ、リアンさんは一緒じゃないんですか?」
「実はその事で相談が…」
すると穏やかな声が聞こえる。
「なるほど、それでゲートを通りたいという話でしたか…」
シズネの母親…サクラ・サクラギがポットを持って部屋に入ってくる。彼女は全員分のお茶を淹れるとシズネの隣に座った。
どうやら彼女はリアンが不法に異世界に渡った事を知っているようだ。
「お久しぶりです」
「はい。お久しぶりですね」
シズネはまだ幼いので可愛らしいお姫様のような雰囲気をしているが、サクラには高貴な皇族という雰囲気をサリアは肌で感じていた。
「それでゲートを通りたいという話ですが…」
サクラは言いにくそうにする。
「やはり危険という事でアリシアへの渡航は許可できません」
「そう…ですか」
サリアは期待していただけに落胆の表情を見せる。
「ですが貴方達に私達を救って頂きました。その事を考慮し、条件付きですがアリシアへ行く事を許可します」
サリアは喜びの表情を浮かべ、サクラに感謝を伝える。
「で、その条件というのは…?」
「実はベオニアが手を貸して欲しいと応援要請が来ていまして…その応援に手を貸して欲しいのです」
サリアは一瞬逡巡するが
「分かりました」
と了承する。
「私も行きます」
「ダメです」
シズネも行くと言うがサクラに拒否される。
「アリシアはこっちの世界と違い危険なのよ」
「それはサリアさんも同じでわ?」
「サリアさんには私の指示に完全に従ってもらうという約束で行くのです」
「私もできます!」
その宣言にサクラは私の知らないうちにこんなに友達思いに成長したのかという嬉しさと、やはり私は駄目な母親ですね…という自虐があった。
そして長い沈黙の後、折れたのはサクラの方だった。
「…分かりました。ですが貴方達は一番後方で危険だと思ったらすぐに連れ戻します!」
「ありがとうございます!お母さん!」
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カンザキのゲートを潜ると、その先は森だった。
この森はカンティアの森といい、別名死の森とも呼ばれる。
この森は大陸の中心に存在し、アリシアで最も広大な森だ。その為、多くの魔物が生息している。
そして最も多くの王達の住処でもある。
サクラが一歩前に出る。
「来ましたよ、ベオニア」
「ようやく来ましたか、サクラ」
それは巨大な牡丹の花だった。
前にチェインで見た時より巨大化してる?
「何故鎖の称号を持つあなたが応援なんて呼んだんですか?」
「機械仕掛けの封印が解けた」
「あの!?1000年前に大戦を起こした種族が…?」
サクラは驚いた。
「ですが…何故」
「封印の鍵は龍鎖が持っていたはずなのです。しかし封印が解けたという事は…」
「龍鎖が負けた…?」
「そういう可能性があるってだけだ」
会話に入って来たのは軍服を身に纏った男だ。
30代くらいの筋骨隆々な男だ。スパイキーヘアの黒髪を後ろに流している。
後ろからは細く長い足を地に刺し歩く巨大蜘蛛の姿と見事に整列している軍服の男達が待機していた。
そして、横からコツコツと音を立て歩く音が鳴る。
「サクラ、遅かったじゃないの」
女性は森に似つかわしくない豪華なドレスを纏い扇子を広げる。20代ほどの年齢で長い金髪が特徴的だ。
女性の後ろには見えないが何かゆらめくような感覚がある事を感じる。恐らく魔術で身を隠しているのだろう。そして後ろに控える人間は女性のみだ。
「…?なんだこの子供達は?」
男が疑問に口にする。
「私の子共とその友人です」
「っ!ならこいつがキクスケを殺したのか!」
サリアは殺気を感じ構えを取る。
「ゼクトさん!言ったではありませんか!キクチは血統派に与し戦いに敗れ死んだのだと!」
「すまない。しかし彼は戦友だったのだ…」
「私も信じられませんでしたわ。キクチがチェインで死んだとは…」
どうやらこの二人にとってキクスケ・キクチは高い評価をされているようだった。
そんな彼女らにゼクトは謝罪する。
「悪かったな。少し頭に血が上った」
「大丈夫です。それに私達も助けられなかったので…」
シズネが答える。
ゼクトは雰囲気を変える為咳払いをする。
「よし、三国揃ったな。これからスフェイラ山に向かい何があったかを確認しに行く!」
ゼクトが声を張り上げる。
「では!出発!」
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飛行機と車を乗り継ぎスフェイラ山脈の麓までやって来た。
そこにはグランミディアの基地がある為、そこでグランミディア軍と合流してカルナの下に向かう事になっている。
三国の軍隊が基地の前に並ぶ。
すると基地からグランミディアの軍人達が出てくる。その様子に他の国の軍人達が騒ぎ出す。
「おい、見ろよ。先頭のあの人」
「ああ、あの龍鎖 チェインカルナと契約を結んだっていうグランミディアの英傑だろ」
「すっげ。やっぱ威厳あんなー」
などと黄色い歓声が聞こえてくる。
サリアは自分の父親が羨望の眼差しを受けている事に少し照れ臭く感じた。
「サリアさんのお父さんすごい人なんですね!」
「ええ、そうね…」
普段家で寛いでいるのを見ているので少し違和感を感じる。
「諸君!此度は集まってくれてありがとう。私の口から此度の事を説明する!」
その説明にリアンの名前は無く正体不明の何者かが突如、スフェイラ山を強襲、その後私と謎の人物がチェインをした事。犯人が白いコートを着てフードを被っていた少年とうい事。そしてカルナから封印の鍵を奪った事が説明された。
「大丈夫だったんですか!?犯人とチェインして、何処かケガとか…」
サリアは父親に見つからないようフードを目深く被り出来るだけ目立たないようシズネの影に隠れた。
「どうしたんですか?」
「ケガとかは大丈夫。でも、私一回家に帰されたから…」
「え!それなのに私達と来たんですか!?」
「騙しててごめん」
(そんなにまでリアンさんのことを…)
シズネは小さく呟いた。
「何?」
「い、いえ何でもないです!それにしても言ってくれれば変装道具とか貸しましたよ!」
そういうシズネにサリアはありがとうと返した。
そこから全員でスフェイラ山のサリア達がいた所まで車で移動した。
スフェイラ山に到着すると竜達は厳戒態勢を敷いていた。空はワイバーンや翼竜が飛び回り、地上は巣に閉じこもっているはずの地竜や赤竜が跋扈する。
そこは正しく竜の住処だった。
「これから王達の話し合いが行われる!速やかに配置に付け!」
ゼクトやドレスを纏った女性…ロゼがそれぞれ自国の軍人達に命令を出す。
そしてサクラ、ゼクト、ロゼ、サリアの父が建物に入ると扉が閉まった。




