表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/120

4.まさかのワンナイトラブ

朝、目が覚めると、見たことのない光景に香織は目を見張った。


豪華なダブルベッドになぜか裸でいる自分。そして、横には規則正しい寝息を立てている男性が一人・・・。彼も服を着ていなかった。


衝撃過ぎて、頭が働かない。香織は頭を抱えた。


(何が、どうなっているの?)


昨日のことは記憶がない。いや、陽一とバーまで行った記憶はある。

そこでカクテルを数杯飲んだ記憶まではあるが、その後は全く覚えていない。


悶絶している香織の横で、陽一はスヤスヤと眠っている。


(・・・!とりあえず、このままトンズラする??)


香織はそっとベッドから抜け出そうとすると、するっと腕が伸びて、ガシッと腰を捕まえられた。


「・・・起きたのか・・・」


「ひっ!」


「・・・なんだよ、その悲鳴は」


陽一は上半身を起こすと、改めて香織を見た。

端正な顔立ちと、逞しく、立派な胸板を目の前に、香織の心臓はドクドクと音を立て始めた。目のやり場に困り、慌てて目を逸らした。


「あ、あの・・・、これは、一体どういう状況で?」


「は?」


「・・・」


「・・・もしかして、お前、記憶ないのか?」


香織は頷いた。それを見た陽一は短くため息をついた。


「まあ、結構酔ってたもんな・・・」


「あ、あの・・・、んっ・・・」


動揺している香織の唇に、陽一の唇が押し付けられ、口をふさがれた。

陽一はゆっくり唇を離すと、香織の顔を覗き込み、少し口角を上げた。


「初めての日を忘れられるのは癪だが、次は忘れるなよ」


「・・・つ、次って・・・」


「今日からお前と付き合うことにする」


「はい?」


香織は全く思考が追い付かない。何がどうなっているのかさっぱりだ。

とにかく、この陽一って男と一夜を共にしたのは、まぎれもない事実のようだ。


「あの!今回のことは、酔っぱらってたんで!その、責任を感じて付き合ってくれる必要なんて、全然ないですよ!ホント!」


「は?」


「だって、陽一さん、御曹司でしょう!お見合い相手、いらしたでしょう?今回は一夜の過ちですよ!気にしないください!」


陽一は、香織の提案に目を丸めた。

よもや、自分が拒絶されるとは!女だったらここは喜ぶところだろうに・・・。

陽一はそう思うと、顔をしかめた。


「ふーん、じゃあ、お前が責任取れ」


「はい?」


「俺の大事な体を奪った責任として、俺と付き合うこと」


今度は香織が目を丸めた。なんでそんな方向に話がいくの?


「ちょっと待ってくださいよ!私、記憶ないんですよ!もしかして、そっちが嫌がる私を襲ったんじゃないでしょうね!」


「へえ、じゃあ、これは何だよ?」


陽一は自分の胸を指差した。香織は改めて陽一の逞しい胸を見た。

それを見て、ギョッとした。

陽一の首元から胸元にかけて、いくつものマークが点々と付いている。


「・・・これって・・・」


「無理やり襲った女が、こんなに跡つけるか?普通」


香織は、頭から血がサーっと一気に下がる音が聞こえた。

陽一は香織の胸元を指差すと、意地悪そうに笑った。

そこには、一つ二つ小さなキスマークが見える。


「俺が付けた数よりずっと多いんだけど」


「も、も、申し訳ございません!!」


香織はベッドの上で、陽一に土下座した。


「酔った勢いとは言え、とんでもないことをしました! でも、でも・・・。今回はどうかご勘弁ください!陽一さんと私じゃ不釣り合いです!」


「そんなことは、付き合ってみないと分からないだろ」


いやいやいや、分かるって!香織が顔を上げた時は、陽一は立ち上がり、シャワールームへ向かっていた。


「とにかく、朝食だ。腹が減った」


そう言い残し、シャワールームに消えていった。


(いやいやいや、無理無理無理!ないないない!)


香織は、フルスピードで自分の服に着替えると、髪の毛もボサボサのまま、その部屋を飛び出した。


部屋を出ると、美しい絨毯と、たくさんの扉が目に入る。どこかのシティホテルのようだ。エレベーターのボタンを連打し、急いでロビーに向かった。

エレベーター内の鏡の前で、髪を手櫛で何とか整えて、ロビーの前を澄ました足取りで通り過ぎると、自動回転ドアに飛び込んだ。


朝の日差しのまぶしい都内の街を、香織はダッシュで駆け抜けて行った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ