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27 ティララの人造魔宝石


 ティララとニャゴ教授が錬金術の勉強を始めて一ヶ月。

 アーモンドが咲き乱れ、すっかり春になっていた。

 ニャゴ教授の薬草畑も芽吹きだしている。


 ニャゴ教授は、ティララに宿題として出していた人造魔宝石を見て唸っていた。

 今日の帰りに、スコーンとともに受け取ったのだ。


 ティララが宿題として作った人造魔宝石は、明らかに自分が作った物よりも純度が高かった。


 ニャゴ教授は自分の錬金術には自信がある。

 経験値も高い。それが習い始めた五歳の幼女に劣るとは考えられなかった。

 錬金方法は教授が教え、ティララは同じようにまねていたはずだ。


「いったいニャにが違うんニャ?」


 悩みながら、ティララから貰ったスコーンを食べる。

 なにやら人族の間で流行っている料理本から『みなぎるスコーン』を作ってくれたのだ。

 ほうれん草やチーズ、ベーコンの入ったスコーンでたしかに力がみなぎりそうだ。


 ニャゴ教授は一口食べて唸った。


「ニャンだこれは? 料理というより、ほぼポーションニャ」


 人の料理とは一線を画していた。単純に栄養価が高いのではない。

 まじない以上の効果を感じる。

 ニャゴ教授は『明らかのルーペ』でマジマジとスコーンを見た。


「……人造魔宝石と同じニャ……。すべての素材の純度が高いんニャ。そしてすべてが正確なのニャ……。どうしたらこんなことができる?」


 ニャゴ教授は、正確に計測配合し、正確な魔法陣を描くことができる。

 しかも、ティララとは違い、自身の持つ魔力を込めることだって可能だ。


「……ま、悩んでいてもしかたがニャいか。明日本人に聞けばいい」


 ニャゴ教授は残りのスコーンを口に入れ、モシャモシャと味わった。

 塩気が効いた美味しいスコーンだ。力がみなぎってくる。


「明日はなにをやらせてみよう。あそこには、『にえたぎるの大鍋』も、『夢見る金床』もあるからニャ! やってみたいことはいっぱいあるんニャ。まずは材料をそろえなきゃニャ」


 ニャゴ教授はバタバタと引き出しを開け始めた。


 珍しい材料がたくさん集められている。


すずなまりどう、人魚のため息、青い鳥のフン、ハシバミの枝と……。今年はもっとたくさんの薬草を育てるニャ。そうすれば、もっといろいろなことができるニャ!」


 知識に貪欲どんよくなニャゴ教授はワクワクした。

 長く錬金術を研究してきて、もう新しい知識は得られないかと思っていた。

 しかし、ティララに出会ってそうではないとわかった。


 明日がこんなに楽しみなのは久々だニャ。錬金術を初めて見た日のことを思い出すニャ。


 そして、ランタンを見た。

 ランタンの中では、不死鳥フェニックスの羽根が、赤く青く輝いていた。


***


「ティララ! いったいなにをしたニャ」


 顔を合わせてすぐのニャゴ教授の剣幕けんまくに、ティララは面食らっていた。


 もふもふの指に挟まれているのは、昨日宿題として提出した人造魔宝石だ。

 ニャゴ教授に教わった手技そのままに、ひとりで作ってみた物だ。


「あの、しっぱい、だった?」


 昨日渡した時点では不備はなかったはずだ。

 きちんと温かくできており、人造魔温石として申し分ないと思っていたのだ。


「違う! 違うニャ!! 精錬の純度がオレより高いニャ!」


 つばを飛ばす勢いで詰め寄ってくるニャゴ教授。


「ええ? きょうじゅにおそわったとおりにしただけだよ?」


「そんなわけないニャ! だったらオレのほうが上手く作れなきゃおかしいニャ!! ここでやって見せるんニャ!!」


 ティララは言われるままに再現した。


 まずは、自分の両手にアトマイザーでアルコールを吹き付け拭いた。


「今のはなんニャ! なんのアーティファクトにゃ? どんな秘薬ニャ!!」


 バッとニャゴ教授がアトマイザーを奪い取る。


「……ただのガラスのアトマイザーに、ラム酒がはいってるだけだよ?」


 ティララは勢いに気圧けおされる。

 たしかに、ニャゴ教授に教わった手順ではなかったが、前世の実験では当たり前すぎるほど当たり前のことだったので、当然の手順として組み入れていたのだ。


「なんでこんなことするニャ! 誰に教わったニャ!?」


「アルコールはよごれをきれいにするから、きれいにしてみたの。よごれたてのままだと、そざいがよごれちゃうから。……じぶんでかんがえたんだよ」 


 ティララは小さな嘘を吐く。前世の記憶と言っても信じられないだろう。


 そして、エンチャントベンチをアルコール消毒した。

 そして、破滅石の入った弾薬庫から、魔法陣を描くためのガラスペンと、魔法インクを取り出した。


 魔力のないティララは、魔法インクを使うことで、魔力の代わりとしているのだ。

 ニャゴ教授は自分の魔力を使うので、わざわざペンもインクも使わない。


「それが原因ニャ? どんな伝説のアーティファクトにゃ」


「ニャゴきょうじゅがくれたやつでしょ?」


 ティララは苦笑いする。ニャゴ教授は納得ができない、魔法インクをマジマジと見る。


「……これも純度が高くなってるニャ……」


「もしかしたらはめついしのせいかも」


「どういうことニャ?」


「たぶん、はめついしにはきれいにするちからがあるんだとおもうの」


「……そうなのニャ?」


「たぶん? だから、れんきんじゅつにつかうどうぐははめついしといっしょにしまうようにしてるんだ」


 ティララの言葉にニャゴ教授は呆気にとられた。


「錬金術と汚れを関連付けて考えたことはなかったニャ。場合によっては地面に魔法陣を描いて発動させたりするからニャ」


「まりょくがつよいひとはそれもできるとおもうんだけど、わたしはまりょくがないから、まほういんくのちからにじゃまになるものはできるだけへらしたいなって……」


「よい考えニャ」


 ニャゴ教授は感心した。


 ティララは『須臾(しゅゆ)天秤てんびん』を使って、素材を計る。

 綺麗にしたエンチャントベンチに正確に魔法陣を書いた。

 そして、素材を魔法陣の中央に置く。


「れんせい!!」


 ティララの声に魔法インクが反応して、魔法が発動する。

 中央には人造温魔石ができあがっていた。






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