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24 わたしのせんせいになって!


「ニャンだお前!! さっきまで可哀想な感じだったくせに! さすが魔王の娘だニャ!!」


「そんなことないよ、じじつをいってるだけだもん。ああ、わたしは、ねこさんたすけたかったのにな……」


 ティララは悲しそうな顔のまま、チラリと黒猫を見た。


 ティララもまた必死なのだ。この機会を逃したら、二度はないかもしれない。

 できるだけ早く錬金術を身につけ、魔王城から逃げ出さなければ、マッドサイエンティスト錬金術師と結婚させられてしまう。

 どんな汚い手を使おうとも、チャンスをつかみ取らねばならない。


「な、なんニャ、冷血帝王にオレを引き渡すのかニャ」


「どうしよっかなぁ。ほんとはいわなくちゃいけないよね。でもパパこわいから、ねこさんがころされちゃったら、かわいそうだな……」


 ティララは哀れむように黒猫を見る。


 実際のところ、エヴァンは宝物庫に興味がない。

 盗み出されたとしても気にしないだろう。

 しかし、これはティララが持っている唯一の切り札だ。


「脅すつもりニャ?」


「ああ、パパはれんきんじゅつしがきらいだから、ひどいことするかも……」


「ひ、ひどいこと?」


「みずにつけてごうもんとか」


「水責めっ!?」


 黒猫が恐怖でブワリと毛を膨らませる。


「ごうもんべやにはいどがあるから……ちかすいでつめたいんだろうなぁ……」


「返すニャ! 返すから見逃してくれニャ! ポケットの中に全部あるニャ!」


 黒猫は慌てて白状する。ティララは身動きの取れない黒猫に代わって、ポケットの中身を出した。


「これで全部ニャ」


「うーん……。とったものかえせばいいってわけじゃないよね? ほうもつこにかってにはいったんだし。そういうの、よくないとおもうの。しかもねこさん、パパのきらいなれんきんじゅつしでしょ? だまっててあげるから、れんきんじゅつをおしえて?」


 しかし、黒猫はかたくなだった。


「……今、泥棒として殺されるか、あとで錬金術師として殺されるかの違いでしかないニャ。あとで殺されるほうが酷い目に遭うニャ。魔法アイテムが欲しいニャら、作ってやるから言え。『瞬く星のブレスレット』ニャ? 『賢者のピアス』ニャ? それを使えば。多少の魔法が使えるようになるニャ」


 説得が難しそうだとティララは思い、黒猫のポケットから取り出した物を摘まんでみる。

 大人の手のひらに収まるサイズの筒に三本の足が付いている。

 さび付いた金属製のボディに、色違いの石が付いていた。筒はクルクルと回る。


「これ、なあに」


「どうせお前はわからないニャ」


「ルーペでしょ? でもれんきんじゅつしがまおうじょうからぬすみだしたいほどのだから、きっとただのルーペじゃない。アーティファクト?」


 ティララはルーペをカチャカチャと動かした。

 指が紫の石に当たると、そこから紫の光線が伸びた。埃がチラチラと光る。


「はめついしのこうせん……?」


「わかるニャ? あんまり見過ぎると目が壊れるにゃ。これはすごく貴重なルーペだ。見えない物を見るアーティファクト『明らかのルーペ』ニャ。今では作り方がわからない古代の魔道具ニャ。それなのに、こんなところで使われずにもったいないのニャ。オレならちゃんと使ってやるニャ!」


 早口でまくし立てる黒猫を見て、ティララはニヤリと笑った。


「わたしのせんせいになってくれたら」


 ピクリ、黒猫の尻尾が立った。


「ここのものじゆうにつかっていいよ」


 ティララの言葉に、黒猫はゴクリとつばを飲む。


「本当かニャ!!  あの『虹の糸巻き』も『おしゃべりな姿見』も? いや、罠だニャ? いや、罠でも……。でも、死んだら……。どのみちバレたら水攻めで……」


 自分の命とはかりにかけて誘惑に負けそうなのだ。


 ティララはほくそ笑んだ。


 あと一押しね。


「ポッケにいれてたもの、ぷれぜんとするよ。じゅぎょうりょうのまえばらいとして。たりないぶんはいって?」


「あのアーティファクトをプレゼント? 正気じゃないニャ……」


 猫の耳がヒクリと立った。


「もちろん、きょうのことひみつ。ここにねこさんがれんきんじゅつをおしえにくることもひみつにする。わたしもパパにしかられたくないもん」


 黒猫がジッとティララを見た。


 ティララは真剣な目で黒猫を見返した。そして、正座をし居住まいを正す。


「せんせい……。だいれんきんじゅつしさまなら、きょうじゅのほうがふさわしいですね?」


「大錬金術師? オレが教授?」


 黒猫は照れたようなまんざらでもないような顔をした。尻尾がフヨフヨと動いている。


「はい、きょうじゅ! おねがいです。わたしをでしにしてください」


 真摯に頭を下げた。キラキラと光る美しい髪が黒猫の腕に落ち、床に触れる。


「……こ、この……悪魔……。悪魔ニャ。サイアクニャ」


 ティララは目を瞑って頭を下げ続ける。


 黒猫は、はーと長いため息を吐き、ポリポリと頭を掻いた。


「しかたがニャいニャ。お前を弟子にしてやるニャ……。そのかわり約束は守れよニャ?」


「はい!」


 ティララはパァァと笑顔になると、黒猫のポケットに盗もうとしていたアーティファクトを詰め込んだ。


 黒猫は少し気まずい気持ちだ。


「で、お前の名前ニャ?」


「ティララです」


「生意気な名前だニャ」


「生意気?」


豊穣ほうじょうの王女の名ニャ」


 ティララは意味を知り首をかしげた。


 作者は死にゆくキャラになんでこんな名前をつけたのだろう。


「教授の名前は?」


 黒猫は鼻を鳴らした。


「好きに呼べばいいニャ」


「なまえないの?」


「あるが、悪魔になんか教えないニャ」


 黒猫は意地悪く笑った。ティララはむーっとする。


「じゃ、きょうじゅのことは、ニャゴきょうじゅってよぶ」


「ハニャ!?」


「ニャゴきょうじゅ。じぶんですきによべばいいっていったもん!」


「ガキニャ」


「こどもだもん」


「クソガキにゃ!」


 ニャアニャア鳴くニャゴ教授を横目にティララはクスリと笑った。


「ルゥ」


 ニャゴ教授は、カーバングルからの攻撃に備えて体を硬くする。


「ドゲドゲとって」


「はいママ」


 ルゥの一言で、教授を床に縫い付けていた赤いやりがハラハラと崩れ落ちた。

 戒めが解かれた瞬間、ニャゴ教授はヒラリと窓に飛び乗った。

 そして、ティララを見て笑うと、がま口カバンからマントを取り出しフワリとかぶった。


 魔法アイテムなのだろう。そのまま窓ガラスを通過して外へ逃げ出してしまった。


「あ……にげちゃった……。もふもふしたかったのに……」


 本当に猫みたい。もう戻らないかもしれないな。


 ティララは悲しげに小さく笑う。


「もふもふ、ボクのほうがもふもふよ! ママ!」


 ルゥがクルリとティララの首の周りを回り、尻尾で鼻先をくすぐった。


「ルゥ、くすぐったい! まって、むねのもふもふ、もふもふさせて!」


「いいよ。ママだけ特別なの」


 ルゥはティララの手に抱かれて、おとなしく胸を反らす。

 ティララはルゥの胸の毛にグリグリと顔を埋めた。




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