振った元カノが窓の外にいるんだが……★カクヨムホラー日間1位★
みんな聞いてくれ、俺は深刻な被害に遭っている。それはまさに、これを語る今この瞬間も、被害の真っただ中という訳だ。
ことの発端は、彼女と別れてしまったこと。俺から一方的に振って、それで今は新しい彼女もいる。なんの変哲もない、よくある失恋と新たな恋。それだけの出来事だったはずなのに……
カーテンの合間から窓を覗けば、そこには暗闇に佇む女が見える。死人のような白の肌、それに張り付く黒の垂髪。光を失くした瞳には、怨念だけを宿しており、ひたすらにこちらを睨めつけている。
あぁ……怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い……
あの女の目的はなんなんだ、別れてひと月も経つというのに。前のアパートも引越して、住所も変えたはずなのに……
付き合っていた頃のあいつは明るく、えくぼの映える愛らしい笑顔の女の子だった。お笑いが趣味で、腹の底から笑ってて、お気に入りのチャンネルは芸人で満載。良く飽きないなと呆れながらに、そんなあいつを見てて、俺も自然と笑ってたんだ。
それがいつの日か、次第に影を見せ始め、笑顔を見せることが少なくなる。当時は素直に心配だったし、料理とか家事とか気を遣って、なるべく負担は掛けないようにしてあげた。誕生日には、あいつの大好きなお笑いのDVDもあげたけど、結局それを見てはくれなかった。
そういうことが続き、次第に興味が失せていく。そして俺は別れを告げて――いや、告げもしなかった。振りもせずに、あいつの傍から姿を消した。
まさか、それを根に持っているのか? 好意と憎悪が入り混じり、それで俺を付けて回るのか? もう嫌だ……耐えられない、俺の方が病んでしまう。こいつはきっと、どこまでもどこまでも追ってくる。歪んだ愛情を心に宿して――
今こそ伝えよう。もう愛してはいないと、勇気を持ってそれを伝えよう。念の為にナイフを持とう。きっとあいつも、何かしら隠し持っているに違いない。
もう、あいつとの思い出はほとんど捨ててしまっていた。しかし無言で別れたからか、心に少しの未練があるのか、未だに残っている物も僅かにある。それを突きつけて、金輪際の絶交を誓う。もう俺の心は、今の彼女に向いているのだから。
みんな、応援しててくれ。じゃあ、行ってくる――
「俺を付け回るのは止めろ! これも返す、だから二度と俺の前に姿を現すな!」
「か……髪の毛……なんでこんなの持ってるのよ……そんなのいいから、お願いだから、風呂場のカメラのデータを寄越して!」
本人は本気でそういうつもりなのでしょうね、っていう話。
「長編も書いてるから、みんな、応援しててくれ!」
「せ……宣伝……そんなのいいから、お願いだから、フォローと評価を寄越して!」