九十八話 罪滅ぼし
「え!? 貴方がシフィーに剣を……じゃあ将来はスリーナイト……!?」
「そういう事になる……ふふ、こういう偶然もあるものだな」
リビングに戻ると、ステラとティアの二人が話していた。
「おお、アグレ。戻って来たか」
ステラが自分の存在に気付き、そう言ってくる。
「随分と盛り上がっている様だな。スリーナイトの新たな候補の話か?」
「ああ、シフィーの話だ。お前も会った事くらいはあるんじゃないか?」
「いや、会った事があるのはその姉の方だ。数日前、海都オラシオンで」
「エリカと会ったんですか!?」
ティアの目色はステラから自分に移り変わる。
「エリカは元気にしていましたか!? それに、何で海都に……帝都の士官学校に通っている筈じゃ……」
「落ち着け、順を追って話す」
ティアにある筋から聞いた、エリカについて知っている事を話した。
「……クラスメイトの実家に……それも軍のお偉いさんの……その上、皇太子殿下や貴族の名家の人と知り合いって……」
「ふむ、やけに詳しいな。まさか……」
自分はステラに頷き返す。
「……そうか……」
「へ? 何がですか?」
俺達のやり取りをティアは不思議に思う。
「何でもない」
別に言っても良いが率先して言う理由も無いだろう。
「それより海都でもう一人、お前の知り合いかもしれない奴に会った。妙にエリカと親しい仲だったんだが」
「もしかしてその知り合いかもしれない奴って、アルベールって名前じゃないですか?」
「ああ、そうだが」
「やっぱり! アルも私の幼馴染なんです! 海都の方に配属されるって聞いていたので、もしかしたらと思って……アルも元気でしたか!?」
「ああ、恐らくな」
その言葉を聞くと「良かった……」と安堵の声を漏らす。
まぁ、今はどうか分からないが……。
「……そっか、皆頑張ってるんだね……でもシフィーがスリーナイトの一人になるなんて……シフィーには悪いけどちょっと想像出来ないかな……」
「そんな事は無かろう。シフィーは闘神の娘、スリーナイトになるべくして産まれてきた様なものだ」
「あ……そうでしたね……エレナさんから昔からその事はシフィーの前では言わない様に言われていたので、すっかり忘れていました……それでステラさん、シフィーの様子は……?」
「うむ、未熟なりに頑張っている。先のメルディアシエの任務ではかなり役に立った」
東方の国、メルディアシエか。
「海都で別れたのか?」
「ああ、あいつはエリカ達と合流して、私はそのままこっちへな」
「そうか……」
少し、心配だな……。
「……そう言えば、他の奴らはどうした? お前達以外の姿が見えないが」
「怪盗と人形、あの盲目の娘は二階、ゼノと科学者は地下だ」
「地下?」
「奥の部屋から地下へ行けるらしい。詳しくは知らんか、研究施設があるそうだ。ゼノがそれに興味を示してな。お前も興味があるなら、行ってみるといい」
研究施設か……一度行ってみても良いかもしれない。
「そうだな、行ってみる。お前達はどうする」
「私達は、暫くここで語り合っているよ」
「分かった」
自分は一階の奥にある部屋へと向かった。
中に入ると、部屋の隅に地下に降りる階段があった。
それを降りて地下へと進む。
地下はあの時と同じ様な部屋だった。
薄暗く、何やら機械が並んでいる。
「――ですから、こうなるのです。分かり……ましたか?」
「……ああ、説明させて悪いが、全く分からん」
「あ、あはは……仕方ないのです。普通に生きていればこんな技術、触れる事も無いので」
ゼノとアリス・ガルシアの二人が、機械に向かって話をしている。
自分はゆっくりと歩きながら、二人に近付く。
「こんなのが理解出来るあんたには恐れ入るよ……ん、アグレ、あんたも来たのか」
ゼノが自分に気付く。
「ああ、何をしているんだ?」
「……人工遺物を作っているのです」
「人工遺物? まさか、あいつを助ける為にか?」
「は、はいです。クラリッサは人工遺物の影響で、今の状態に至りました。その人工遺物の尋常では無い力が働いて、回復魔法や、普通の治療ではもう……なので、賢者の石では無い、誰も犠牲にならずに済む様な人工遺物で彼女を助けようと、こうやってそれを作っているのです」
なるほどな……。
「……あの、怒らないのですか?」
自分が黙って聞いていると、アリス・ガルシアが恐る恐るそう聞いてきた。
「何故だ?」
「だって……またこの力に手を出して……」
「ふう……そんな事は今更だろう。これは必要な事だ、あの時と違ってな。それにお前がどうしようもない外道であっても、お前のこの罪滅ぼしの行動を咎める資格は、自分には無い」
「アグレさん……」
「アグレ……」
ったく、何をやっているんだ、自分は。
「まあそういう事だ。自分はもう行く。ゼノ、あまりにのめり込み過ぎるな」
「……ああ、分かっている」
自分はその場を去り、家の前へと出た。




