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探偵の異世界生活  作者: わふ
第二部 創世始動編
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九十四話 W.H実験

 

「……後悔したのです。賢者の石を作った事を、その技術に手を出し事を……」

「だったら何故、創世の騎士団と手を切らなかった?」


 その時点でこいつが手を切っていれば、あんな事には……。


「そうなのです……そこで私が手を引けば、皆さんをあんな目に遭わせる事は無かったのです……あの人は、賢者の石で悲惨な結末を迎えた私に『今回は失敗に終わったが、それは無知だった故の過ち。決して人工遺物(アーティファクト)が悪と言う訳では無い。人工遺物(アーティファクト)の善悪は、作り手によって左右される。もし、今回の失敗を悔いているなら、きっと、次は成功させられる。次は成功させ、良い物を作ろう。大丈夫、私の知恵も全て貸そう。君ならやれる』と、優しく語り掛けました……私はそれにまんまと言いくるめられ、あの日までずっと、お二人を監禁して、村の人達を……私は、過去の過ちを曇らすくらいの成功を手にしたくて、周りが見えていなかったのです……でも、あの日、気付いてたのです……私はずっと騙されていたって!」


 騙されていた――いや、そんな事はあってはならない……そんな事があってたまるか……。

 もしもそうなら、自分は今まで何の為に……。


「あの日……」


 辞めろ。


「あの爆発は、作成段階のドラゴンの幼体を目覚めさせたのは……」


 辞めてくれ……それ以上は……。


「トリスメギス、あの人――」

「辞めろ!!」


 それ以上は言わせない。


「信じないぞそんな話! 第一お前の話が本当だって証拠は無い! 今までの話だって、お前が自分達の同情を買う為の作り話だろ! そうだろう!?」

「……確かに、何も証拠は無いのです。貴方がそう思うのも、当然の事なのです……でも、私はもう、嘘は付かないと決めたのです。私のせいで死んでいった、傷付いた皆さんに、償う為に!」

「っ……」


 そう語るアリス・ガルシアの目は真っ直ぐ、透き通った、嘘偽り無い目だった……。


「アグレ……こう言う無責任な事は言いたくは無いんだが、確かにあんたの気持ちは痛い程分かる。だが、話くらい聞いても良いんじゃないか? あんたがその……手を下すのはそれからでも、遅くない筈だろ?」


 隣の席に座っているゼノが語り掛けてくる。


「……確かに。まだ聞いていない話がある筈だ。もう少し、話を聞いてみようではないか」


 反対隣のステラも、ゼノと同じ様な事を言う。


「……分かった。最後まで話を聞こう」


 自分は少しだけ、二人のおかげで落ち着きを取り戻した。

 分かっているんだ、こいつが嘘を言っていない事くらい……。


「うむ。では、何故トリスメギス・アニマはドラゴンを覚醒させたのだ? 村を壊滅させる為か?」

「概ね、合っているのです。あの人は、私が作ったドラゴンの性能を確かめる為に、その場で覚醒させたのです」

「じゃ、じゃあ、村の人達は実験の為に、死んだと言う事ですか?」

「……はいなのです」


 そんなくだらない理由で、あいつらは殺されて……。


「なんて奴だ……あんたがアグレと、ラルフと言う人を監禁し、実験材料にしたのもそいつの指示なのか?」

「半分は、なのです。もう半分は私の意思なのです。あの人にある実験を行う様に、指示されましたのです。でも、その実験には人の個体が必要で、どうしようか悩んでいた私は偶然、教会に訪ねてきたラルフさんを攫ったのです。アグレさんはもし、実験が失敗した保険として攫ったのです」

「予備の実験体、と言う訳か……下衆だな。幼い子供と、恩を売り自分に心を許した者を私欲の為に利用するとはな」


 ……そんな事だろうとは、思っていた。


「その、ある実験と言うのは何なんだ?」

「それは、人体の構造を弄り、通常ではなし得ない力を付与する実験なのです。あの人は、その実験をW.H実験、そう呼んでいたのです」


 W.H実験……。


「人を武器に変える実験とも、言っていたのです。正確には、人を武器の様に、戦わせる目的だけに絞って、体を作り変える実験なのです」

「人を武器に……具体的には?」

「実験体は、体内に溜めた魔力を身に纏い、一時的に身体能力を強化する事が出来る様になるのです」


 ……そう、魔力武装の事だ。


「簡単に言えば、体の構造を弄り、生成する魔力を強化するのです。魔力が強化され、魔力を鎧を着る様に身に纏う事が可能になるのです。それの副産物として、通常では放てない強力な魔法も放てる様になるのです。人工遺物(アーティファクト)の作成技術を応用して行った、実験なのです」

人工遺物(アーティファクト)の作成技術を応用して……? じゃあ、アグレは……」


 ゼノの言葉で、皆の視線が自分に集まる。


「彼は、人型の人工遺物(アーティファクト)へと、私が作り変えてしまったのです」

「人型の、人工遺物(アーティファクト)……信じられない、そんな事が……」

「本当だ。自分は、それを魔力武装と呼んでいる。全ての身体能力の強化し、数分その状態を維持する事が出来る。使えば、三日程、クールタイムがあるが」

「え? 数分だけなのですか? それにクールタイム等無い筈ですが……」


 ん、どう言う事だ……。


「まぁその辺りも、後で話してもらうとして……そろそろ、話の続きに戻ってもいいか。俺達の七年間について」


 ……そうだった。元はこいつらの七年間についての話から始まったんだ。


「ああ、聞かせてくれ」

「よし……何処まで話したか……確か、鍵付きの部屋の所までだったか」


 ルカとクラリッサが、二階の鍵付きの部屋を見つけて、そこで……。


「……賢者の石を見つけたのか」

「ああ」


 ルカは頷く。


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