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探偵の異世界生活  作者: わふ
第二部 創世始動編
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七十五話 エルドラド大聖堂

 

「……ここに来るのも久しぶりだ」


 自分はやっと目的の場所、中央通りにあるエルドラド大聖堂へと到着した。

 神オーディンを信仰するアルパベーラ教会が管理している内の一つだ。

 まあ、最近は神と言う存在を信じない人間の方が多く、寄付者が減って壊滅寸前だが。

 大きく重い扉を押して、中へと入る。

 大聖堂内に礼拝客は誰も居ない。

 天井が高く広さも充分あり、高価な装飾品も多く飾ってある。

 なのに、相変わらず寂しい場所だ。

 そんな静かな空間の中で、主祭壇に一人、ぽつんと立って、奥のステンドグラスを向いている後ろ姿があった。

 ゆっくりとその背中に近付く。


「久しぶりだな、リゼ」


 そいつの名前を呼ぶと、こちらを振り向く。

 ローズグレイ色の髪をハーフアップにし、修道服の袖と裾を上げた、がさつな女。この大聖堂のシスターで管理人、リゼ・ウォルドーラだ。


「久しぶり、じゃないわよ! エレナさんから通信越しで聞いた話では、もっと早くここに来るんじゃなかったの?」


 リゼは怒鳴り声が、大聖堂に響く。


「そんなに騒ぐな。あいつから話を聞いているんだったら、色々あった事も知っているだろ?」

「それ込みでも遅いって事よ」


 一々うるさい女だ。こいつの小言を聞きに、ここへ来た笑じゃない。


「小言は良い。こっちは人を待たせてるんだ」

「あんたねぇ……もういいわ……人を待たせてるって、あのちっこいの?」

「ああ、そいつと、帝国憲兵隊の大尉をな」

「あー、ネハルム・ロバーツ?」

「そうだ」

「まぁ、こっちの事件には流石に関わらせれないわね、今更だとは思うけど……それにしても、あんた、濃いの連れて来たわねぇ? まさか、あのスリーナイトのレジーナ・オルティスを殺した犯人を捕まえた奴が来るって聞いた時はびっくりしたわ。まだ大尉っていうしょぼい役職なのもね」

「しょうがない。世間には病死と公表されているからな」


 レジーナ・オルティス。スリーナイトの一人だった女騎士だ。

 獅子剣レジーナと謳われ、雷帝ステラの前任を務めていた。ステラはレジーナの……弟子だったか。


「スリーナイトがただのゴロツキに殺された、そんな事実が世に出たら民衆からの信頼を失う、って言うしょうもない理由でね。ほんっと、勿体ないわー」

「そんな事はいい。さっさと本題に入れ」

「はいはい、分かったわよ」


 リゼはこほんと、咳払いをする。


「……死体が発見されたのは、八月十八日午前五時頃。場所は王都東の旧市街の廃家で発見されたわ。殺されたのはエスメ・モハンマド、こっちがシスターの方ね。それでもう一人、騎士団員の方が、マックス・ニーバー。どっちも腐敗が進んでて、死後1週間以上経過していたわ。死因は前と同じ、首を切られての出血死」


 エスメ・モハンマド、マックス・ニーバー……どっちも古参メンバーか。


「事件の概要はこれぐらいかしら?」

「ああ。そいつらが姿を消したのはいつだ? そこから殺された月日を絞れるかもしれない」

「七月八日よ」

「何? 一ヶ月も死体が見つからなかったのか?」

「そこがおかしいのよ。流石の騎士団でも見つけると思うわ。ましてや、旧市街は最近、倉庫なんかの運搬関係の建物が建ち始めてるから、騎士団の警備が強化されるの」

「……ますます不可解だな」

「ええ。だから私達は、二人を別の場所で殺して見つからないところに隠して何日か経った後に、その廃家に運んだって推測してるわ」


 別の場所から発見現場まで運んだ……何故、死体が見つかる様な事をしたんだ?

 何か意味があるんだろうか。

 …………いや、そもそもそんな事が可能なのか?


「……死体を運ぶのだって、不可能じゃないか? 旧市街の警備は厳重なんだろ?」

「そうなのよ。どうやっても無理なのよね……タイムストップも対象を止められるのはほんの数秒だし、ワープムーブも移動出来るのはたかだか一、二メートル。その上、連続使用も魔力の消費が激しいからね。普通の人間じゃ、不可能に近いのよ」

「……現場に血痕は? そこで殺されていないのなら、血痕は無い筈だ」

「それがねぇ、現場は封鎖されてて分からないのよ。事件が解決するまでずっとね」


 今から現場に行っても無駄って事か。


「犯人の目星は?」

「無いに決まってるでしょ。これだけの手掛かりで特定なんて出来ないわ」


 やはりか。

 ……さて、どうしたものか。


「どうする、これから?」

「……そうだな。一旦この件は置いておこうと思う」

「ま、それが賢明ね。先ずは目撃情報がある、こそ泥の方から片付けなさい。この件は、何か分かり次第教えるわ。それでいいわね?」

「ああ、異論は無い」

「おっけー。あ、そうだ、少し待ってなさい」


 リゼはそう言って、大聖堂内右奥の執務室へと姿を消し、何かを持って戻ってきた。


「はいこれ」


 そして、それを自分に渡す。


「これは……太刀か?」

「そう、昨日の夜、アインさんがあんたにって、持ってきたの」

「爺さんが? 王国に来ていたのか?」

「そう、何の用かは言ってくれなかったけど、あんたがここに来るってエレナさんに聞いたらしく、その太刀をあんたに手に渡るように、私に預けてったの。アインさんは忙しいらしくて直接渡せないから。何でもヒヒイロカネを使った武器らしいわ」


 ヒヒイロカネの武器か。これで戦術の幅が広がると思うと、非常に有難い。

 早速、今まで使っていた太刀と一緒に背負う。


「ん? 何だ?」


 そうすると、リゼがじっとこちらを見てくる。


「いや、アイテムボックスの魔法使ったら? 重いでしょ」

「あの魔法は物を入れる度に消費魔力が増える。他の魔法に使える魔力が減るのは困る。それに、いざとなった時に素早く取り出せない」

「ならせめて一本でも入れたらいいじゃない」

「使っている太刀が折れた時、直ぐにもう1本使える太刀を抜ける様にしておきたい」


 何を言っている、こいつは。

 折角二本あるんだ。そのアドバンテージを最大限に活かしていきたいんだが。


「あんたがそれで良いなら、良いんだけど……戦闘で動く時、邪魔にならない?」

「これぐらいなら許容範囲だ。なんなら、二本同時に振ることだって出来る」

「あー、そう言う奴だったわね、あんたは……」


 何故かリゼに呆れられる。

 ……ふむ、別におかしな事は言ったつもりは無いぞ。


「……まぁ、何はともあれ、頑張りなさい……私もあいつらの無念を晴らすために頑張るから」

「ああ。じゃあ、またな」

「ええ……あんたまで死ぬんじゃないわよ?」

「ふ、近いうちにまた顔を出す」


 ロゼに別れを告げて、大聖堂を後にする。

 それからネハルムに連絡を取り、騎士団本部前で落ち合う事となった。


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