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探偵の異世界生活  作者: わふ
第二部 創世始動編
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六十九話 アグレとノーラ

 

 そしてその日の夜。七月二十五日、午後十一時。

 あれから自分達はアルパベーラ王国へ向かう為、イーハ村の最寄駅がある近郊都市ヘルシラから、夜行列車に乗っていた。

 現在はノースフィア州の北部を走行し、メンヒ山脈のトンネルを潜ろうとしていた。

 他の二人はと言うと、向かいに座っているネハルムは黙って窓の外を見ており、自分の隣に座っているノーラはすやすやと寝息を立てて眠っていた。

 それにしてもよく眠っている。ノースフィア州に入った午後八時頃からこの調子だ。

 まぁ、仕方ない。最近は充分に休息を取れていなかったからな。


「……寒くなってきたな」


 ネハルムがこっちを向いて、座席がガラガラの静かな車両でそう口を開く。


「メンヒ山脈が近いからな」

「メンヒ山脈……別名、国境(ざん)か」


 メンヒ山脈は国境山とも呼ばれている。山脈を超えれば、周辺諸国を挟んでアルパベーラ王国の領地内なので、そう呼ばれる様になった。


「……へくちゅ!」


 寝ていたノーラ、いや寝ているノーラがくしゃみをする。

 なんとも器用な。そんな事を考えながら、ロングコートを脱いで、ノーラの体に掛けてやる。


「……付き合いは長いのか?」


 それを見ていたネハルムが咄嗟にそう聞いてきた。


「かれこれ三年になる」

「三年、か……二人はどういう経緯で知り合ったんだ?」


 何だ、急に色々と聞いてくるな。


「尋問か?」


 素直に答える気は起きなかったので、適当に反論する。


「そういうつもりは無いんだ。ただ噂を聞いて、想像していた君とはイメージが違ったから……」

「イメージ?」

「あ、ああ……魔獣狩りなんて異名で呼ばれているから、俺はてっきり、冷徹で、なんと言うか……誰とも群れない一匹狼な人物かと思っていたんだ。でも、実際の君は、俺の想像していた人物像とは違っていたから、考えを改めなければいけないな、と思って。それとこれから暫く一緒に行動を共にするんだ。少しはどういう人間か知っておきたい」


 なるほど、さっきから何かを言いたげだったが、これが理由だったのか。

 ネハルムは自分とノーラの知り合った経緯を聞きたいと、かこつけて、間接的に自分の事を聞き出そうとしているのかもしれない。

 まぁ、別に断る理由は無い。適度に話しておこう。


「……自分とノーラが知り合ったのは、三年前、アルパベーラ王国の北部にある小さな村だった。ノーラはその村の医者の娘だった。そこにしくじって、少し怪我を負った自分がその村に立ち寄った」

「ちょっと待ってくれ……いや、やっぱり良い……その怪我は冒険者ギルドの依頼で?」

「そんなところだ。村に着いた時には体力を使い果たし、地べたに伏せてしまった。その時は夜でそこは小さい村だったから、人通りは無くどうしようかと思っていたところ、そこに偶ノーラが通り掛かった」


 こう改めて思い出すと、三年しか経っていないのに随分と懐かしい事に感じる。


「それで、慌てふためくノーラに村の診療所に運び込まれ、ノーラの父親に診てもらった。彼いわく、もう少しで取り返しのつかない事になっていたらしい」

「待ってくれ、先程『少し怪我を負った』と言っていなかったか?」

「言葉の綾だ。自分の中では、あれぐらいは少しの怪我と言う事だ」

「……続けてくれ」


 納得がいかない。そう言いたげな顔だったが、気にせずに続きを話す。


「結局、自分は一週間程、その診療所で入院する事になった。その間、ノーラは毎日看病してくれた。その時のこいつは、村から出て世界を見て回りたいと、言う願望があった。だから、村の外から来た自分に興味を持ち、色々な事を聞かれた。それに応えて、自分が冒険者である事や、帝国と王国を旅している事、色々話した」

「ほう、王国にも良く行くのか」

「昔はな。もう王国には三年程、立ち入ってない。今は帝国を放浪している……そして、あっという間に一週間が経ち、退院して村を発とうとした。その時、ノーラが自分と旅をすると言い出した」

「突然だな」

「だろう? これは後からこいつに聞いたんだが、村を出て旅をしたい。あんな大怪我をした自分を放っておけないこれからも同じような怪我をするかもしれない。その二つの理由でそう言い出したらしい」


 ノーラらしいと言えばノーラらしいんだが、当時は見知らぬ、会ったばかりの自分についてくるなんて言い出したのはどうかと思った。


「その子の父親には何か言われなかったのか?」

「もちろん言われた。主にこいつにだが。必死に止めようとしていた。『会ったばかりの奴について行くなんてどうかしているぞ』とな」

「至極真っ当な意見だ」

「そう思う。結局、ノーラは父親の反対を押し切って、自分についてきた。自分も止めたんだが、強引にな。全く、馬鹿な奴だと思った」


 そんな悪態をついていても、今は助かっているという気持ちの方が大きいが。

 医療の心得がある奴が居れば、いざと言う時に役立つから。


「……それが二人が知り合った経緯、か……」

「悪いな、殆ど、自分の話が出てこなくて。全く分からなかっただろう?」

「いや、そうでも無い」

「何か分かったのか?」

「ああ、一つ。だがこれは俺の胸に秘めておくことにしよう」

「そうか」


 変わった奴だ。そう思いながら、少し頬を緩める。

 それと同時に、列車はメンヒ山脈を突き抜けるトンネルへと潜る。

 そろそろ王国領地に入るか。後七、八時間もすれば王都に着くだろう。

 この辺りで自分も少し体を休めよう。そう思い、目を閉じようとする。その時だった。

 列車の通路、自分達が座っている座席前で、こつ、そう靴音が聞こえた。

 それに気付き、そっちを見るとーー。


「――見つけマシタ、アグレ・サリヴァン」


 そこには白色の髪の、大鎌を持った娘の姿があった。

 ……何だ? 全く気配を感じなかった。それこいつは……。


「っ! お前はラグナロクの使徒の!」


 ネハルムは座席から飛び立ち、拳銃を娘に向ける。

 自分もそれを見て、座席から腰を上げる。


「帝国の憲兵隊、デスカ。ナルホド……デスガ、今日は貴方に要はありまセン」


 娘は大鎌を自分に向ける。


「自分狙い……そういう事か」

「ハイ」


 ったく、最近よく狙われる、面倒だ。

 だが、今回に限っては、面倒と同時に好都合。目的の奴があっちから姿を現してくれた。

 随分と手強そうだが、何としてでもここで捕らえる。


「キット、そちらも私達を狙っているのでショウ。デスガ、貴方には死んでもらいマス……!」


 娘はそう言い放つ。そして気付いた時には、自分の背後で、空中から大鎌を振りかざしていた。

 太刀を抜き、大鎌を受け止める。

 気付いたら違う場所にいる、そう前にエレナから聞いていたが、どうやら本当の話のようだな……。


「離れろっ!」


 ネハルムが拳銃をぶっぱなす。


「えっ! なになに!?」


 銃声に驚いて、ノーラが飛び起きる。それと周りの乗客も「何だ!?」「銃声だ!」と慌て出す。

 娘はと言うと、自分の太刀を踏み台にして、弾を躱していた。そして通路の方へと逃げる。

 自分もそれを追って、通路へ。


「ネハルム、乗客とノーラの避難を頼む!」

「君は! アグレはどうするんだ!」

「自分は奴を捕らえる」

「分かった、避難が終われば、君に加勢する!」

「ああ」


 ネハルムが「え、え、どういう事?」と戸惑っているノーラと他の乗客達を後ろの車両に避難させてくれている間に、奴と対峙する。


「ソンナ事をしなくても、他の乗客には手を出しまセンヨ。用があるのは、貴方デス」

「お前の言葉なんて信用出来ない。そう言って、本当はテロを企んでいるのかもしれないしな」

「ツマラナイ疑いデスネ。デモ、そう考えるのが普通かも知れまセン……」


 娘は鎌を構える。自分もそれを見て、太刀を構え、相手を見通す。


「イイ目デス。コレハ楽しめそうデスネ」

「御託はいい。殺るならさっさと来い!」

「フフ、デハ……」


 娘が身を動かす。


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