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探偵の異世界生活  作者: わふ
第二部 創世始動編
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六十一話 詰所へ

 

「そ、それじゃあ今度こそ詰所に行きましょうか……」

「いや、ちょっと待ってくれ。その前に寄りたい所がある」

「寄りたい所、ですか?」

「ああ、と言っても通り道だからそんなに時間は掛からない」

「わ、分かりました」


 二人は大通りへと向かい、騎士団の詰所がある通りの北へと進む。


「あ、あの、ゼノさん……もしかして寄りたい所って言うのは教会、ですか?」


 歩いている途中、ジゼルが不意にそう口にする。


「……ああ、子供達の様子が気になってな……心配なんだ」

「ゼノさん……」


 間もなくして、教会に着いた。

 教会前には数人の騎士団が居り、2人は彼等を横目に中に入る。


「! ゼノ兄ちゃん……!」


 ゼノの姿を見た子供達が、彼に駆け寄り抱き着く。

 子供達の中には、泣いてる子も居た。


「お前達……よしよし、怖かったな」


 ゼノは子供達の頭を優しく撫でる。


「ひっく……テッサさんが……テッサさんが……」

「大丈夫だ……」


 子供達の嘆きに、そう答えるしか出来ないゼノは頭を撫で続ける。


「ゼノお兄ちゃん……何でテッサさんが死ななくちゃいけないの……?」


 一人の少女がそう聞く。


「……分からない……でも、お兄ちゃんが必ず見つける。約束だ」

「……うん、約束」


 ゼノは穏やかな笑顔を見せる。


「……なぁ、お前達、辛い事を聞くかもしれないが、テッサさんが何故港通りに行ったか分かるか……?」


 ゼノがそう聞くが、子供達は知らない様子だった。


「そうか……ジゼル、そろそろ行こう。一刻も早く、犯人を見つけないといけないからな……子供達の為に」

「あ……そう、ですね……」


 二人は子供達が落ち着いた頃合に、今度こそ詰所へと向かった。


「い、遺体は地下に……」


 ジゼルはゼノを地下の死体安置所に案内する。


「ここか……」

「は、はい、こっちです……」


 安置所の死体保存用冷蔵庫から、1つを引いて開ける。

 中から布に包まれた死体が姿を現す。

 ジゼルがゆっくりと、頭部の方から布を捲る。


「っ……」


 喉仏あたりを掻っ切られた男性の死体、被害者の1人、セス・ホーラン。


「だ、大丈夫ですか、ゼノさん……?」


 明らかに顔色を悪くしているゼノを心配そうに見つめるジゼル。


「あ、ああ……それより、遺体を調べてもいいか?」

「あ、これを使ってください」


 ジゼルはそう言って、白い手袋をゼノに渡す。


「すまない」


 ゼノは手袋を着け、慎重に死体を調べる。


「っ…………外傷は……この致命傷になった首の傷だけか」

「は、はい。それ以外は確認されていません」

「所持品は?」

「えっと……手帳なんかの私物と、騎士団指定の拳銃、それから……」


 ジゼルは腰にかけていた剣を見せる。


「これと同じ物を。こちらも騎士団指定の物です」

「ふむ……テッサさんの方も調べよう」

「は、はい」


 死体に布をかけ、冷蔵庫を閉じ、セスの死体があった下の冷蔵庫を同じ様に開ける。

 そしてまた、ゆっくりと布を捲る。

 セス同様、喉仏あたりを掻っ切られたテッサ・マクシームの死体が姿を現した。


「っ………………」


 ゼノはふらついて、近くの壁にもたれ掛かる。


「あ、あの、私が調べましょうか……?」

「い、いや、大丈夫だ。俺が調べる」


 なんとか立て直し、死体を調べ始める。


「こっちも喉の傷以外、外傷は無しか? ……所持品は?」

「い、いえ、何も持っていませんでした……」

「そうか……これ以上、調べても何も出ないだろう」

「じゃ、じゃあ、閉じますね」

「ああ、そうしてあげてくれ」


 ゆっくりと冷蔵庫を閉じる。


「……あまり、手掛かりになる様なものは見つかりませんでしたね……」

「いや、充分だ」

「え……もしかして、何か分かったんですか?」


 ゼノはその問いに、静かに頷く。


「……まず外傷が一つ、つまり致命傷しかない点に注目してくれ。テッサさんならまだしも、訓練を受けた騎士団員、セス・ホーランなら、多少抵抗して、致命傷の他に傷の一つや二つは付くだろう。いや、普通ならこんな結末にはならなかった。そう思う」

「た、確かにそうですね……それに犯行時刻は深夜ですし、誰かが近付い来たのなら、身構えもしますから……」

「そうだ。それを意味するのはある程度訓練を受けていて、夜道で近付いても、彼が警戒しなかった人物……」

「そ、それって……」


 ジゼルは唾をごくりと飲み込む。


「ああ、同じ騎士団の人間……俺はそう思っている」

「で、でも、それだけじゃ、犯人分からないですよね……?」

「そうだな。それだけならな……ジゼル、午前4時から5時の間、港通りで見回りをしていたのは誰だ?」

「た、確か、ネッド・パチル曹長、だった筈です」

「そうか、今そいつは何処にいる?」

「え? きょ、今日はもう非番ですので、宿舎に居るかと……」

「よし、行くぞ」


 ゼノは死体安置所の扉を開け、廊下に出る。


「ち、ちょっと、待ってください!」


 ジゼルも慌ててゼノの後を追う。


「ど、どういう事ですか? 詳しく説明してください!」

「…………」


 ゼノは歩きながら説明する。


「……最初、疑問に思ったんだ。何故、三時から四時の間に殺された二人が、五時過ぎに発見されたのか」

「そ、それは、たまたま発見されなかっただけじゃ……人通りも少ないらしいですし……」

「少なくとも、一時間も発見されないのはおかしい。騎士団の見回りがあるからな」

「確かに……そう考えると……」

「現場は別に裏路地みたいに死角になっている訳では無い。普通に見回っても、充分見つかる位置だ。それなのに、見つからなかったのがおかしいんだ。まだ犯人と決まった訳じゃ無いが、話を聞く必要がある」


 詰所を出て、歩いてすぐにある騎士団の宿舎へと到着する。


「部屋は?」

「た、確か二階です」


 宿舎の廊下を歩き、階段に差し掛かる。


「あ、あの、もし、パチル曹長が犯人なら、何故二人を殺したんでしょうか……?」

「セス・ホーランの方は分からない……だが、テッサさんは恐らく、偶然……だろう。テッサさんは何らかの用事で港通りに向かったんだ。そこで殺害現場に出くわしてしまい――」

「口封じ……」


 ゼノは頷く。


「か弱い女性を殺すのは簡単だろう。曹長となれば、それなりに腕が立つだろうしな……信じたくは無いが……」

「ゼノ……さん……」


 階段を登り、二階の奥の部屋でジゼルが立ち止まる。


「こ、ここです」


 ゼノは扉をノックする。


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