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探偵の異世界生活  作者: わふ
第一部 学校生活編
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五話 四人班

 

 翌日。


「アッシュ、起きて。朝だよ?」


 俺はベッドで寝ているアッシュの体を揺らす。

 今日から本格的に朝から授業が始まる為、アッシュを起こそうとしている所だ。

 アッシュはゆっくりと目を開け、体を起こす。


「おはよう、アッシュ」


 アッシュは、俺の方を向く。


「……何だよ、エリー」


 そう言うと、アッシュは大きな欠伸をする。


「今日から学校だよ?」


 アッシュは壁掛け時計を見る。


「授業開始は九時からだろ、まだ六時じゃねぇか……」


 アッシュは溜息つき、ベッドから立ち上がる。


「……それで?何かあったのかよ?」

「はぁ……忘れたの?昨日の夜、一緒に食堂で、朝食を食べようって言い出したのはアッシュだよ?」


 少し考え込み、アッシュが口を開く。


「……ああ、確かにそんな約束してたな!」


 アッシュは左手の掌をポンと右手の握り拳で叩く。


「わりぃ、わりぃ! 直ぐに着替えるから……って、エリーもまだ着替えてないのか?」


 俺もまだ寝間のままだった。

 起床してからアッシュを起こすまで、それ程時間は経っておらず、実はさっき起きたばかりだ。


「そんじゃ、お前さんはここを使っていいぜ。俺はあそこを使うからよ」


 そう言うとアッシュは出入り口から見て、左の隅の扉を指さした。

 そこは洗面台と洗濯機、簡易的なシャワーがある、三畳半程の部屋だ。

 俺はあくまでも、この世界での体は女なので、アッシュがどちらかが着替える時は洗面所の部屋を使う。そう言う提案をしてくれた。


「あ、いいよ、アッシュがこっちを使って?」


 俺はそう言い制服を持って、洗面所の扉に歩いて行く。


「そうか、なら遠慮なく使わせてもらうぜ」


 アッシュのその言葉を聞き、洗面所の扉を開け、中に入った。

 数分後、制服に着替え終わり、洗面所を出て部屋に戻った。

 その時、アッシュは、あちらの世界でいう、折りたたみ携帯電話と似て非なる物で、誰かと話していたようだ。

 数ヶ月前に、携帯電話に代わる物が、この世界で発明された。

 アルパベーラ王国の天才発明家、オリバー・アークライトが発明し、携帯型通信機と名付けた。

 ただ携帯型通信機はまだ広範囲での通信機能の運用が難しい為、一部の貴族とこの学校の生徒しかに出回っていない。

 オリバーはこの学校のスポンサーらしく、資金援助の代わりに俺達生徒に、それがデータ収集の為に与えられている。

 つまり、今はまだ試験段階だ。


「アッシュ、誰かと話してたの?」


 着替え終わっていたアッシュは窓際で、左手に携帯型通信機を折りたたんだ状態で握り、立っていた。


「……あ、ああ、まぁな……」


 アッシュの口調はぎこちなかった。

 あまり聞かれたくない様だ。


「……着替え終わったんなら、早く行こうぜ?」


 アッシュは不自然な素振(そぶ)りを見せ、部屋の出入口の扉に向かう。


「……そうだね」


 俺達はその後、1階の食堂で朝食を食べてから、校舎へと向かった。



 ◇◇◇




「アッシュってどのクラスなの?」


 俺は、寮前を歩きながら、アッシュに聞いた。


「そういえば、まだ言ってなかったな。Aクラスだぜ」


 やはり俺と同じAクラスだったか。

 昨日行われた入学式で指定された座席が隣だった為、もしかしたらとは思っていた。


「アッシュもAクラスなんだね。私もAクラスだよ」

「へぇ、こんな可愛い女子が部屋だけで無く、クラスも一緒か! 嬉しいぜ」


 アッシュがそう言って茶化してくる。


「どんな奴が居るんだろうなぁ。皇太子がいるんだから、そこそこの貴族も居そうだよな」


 アッシュは頭の後ろで手を組みながら、そう言う。


「もしかしたら、皇太子殿下が自身がクラスメイトだったりしてね」

「いや、それは無いな」


 その時のアッシュの返事は、冷たく、透き通った声だった。


「あれはSクラスだ。間違いない」


 アッシュは真剣な顔でそう断言した。

 絶対的な確信がある様な顔だ。


「……って、天下の皇太子様をあれ呼ばわりしちゃ不味いか」


 さっきの表情が嘘のように、アッシュは笑いながら言った。


「ま、早いとこ教室に行こうぜ? 初日から遅刻はやべぇからな」


 アッシュは話を無理矢理切り上げるように、歩幅を広げて歩いていく。

 俺もそれに合わせ、アッシュについて行く。


 俺達は一階のAクラスの教室に着き、合格通知の手紙に同封されていた紙を見ながら、指定された座席を探す。

 他の生徒は既に殆ど席に着いていた。


「アッシュの席は何処なの?」


 俺がそう聞く。


「俺は……四列目の窓際の席だぜ。エリーは何処なんだ?」


 教室には、二人用の木製の長椅子、長机が共に縦四列、横四列、合わせて三十二人分の席がある。


「私は、最左列四列目……あれ、これって……」

「なんだよ、俺の隣の席じゃねぇか」


 アッシュと俺の席は隣同士だった。

 アッシュが窓側で俺が内側だ。

 俺達は席に座り、数分後にチャイムが鳴ると橙色の髪を三つ編みワンテールにした、二十代と思えるお淑やかな女性が、教室に入って来て、教壇に立った。


「はーい、皆さん注目してくださーい」


 気が抜けるような声でそう言う。

 俺達生徒は、その教室に入ってきた人物を一斉に見る。


「これから皆さんの教官を務める、カミラ・フローレンスです。気軽にカミラ教官とお呼びください」


 カミラは小さくお辞儀をする。


「それでは親交を深める為、皆さんも自己紹介してみましょう」


 カミラはその言葉に続き「では出席番号順に……」と言って、一列目の最左の席に座っている男子生徒を、指名した。

 その生徒から右に順に席から立ち上がり、自己紹介をしていった。

 一列目の最右の生徒が自己紹介を終えると、二列目の最右の生徒が自己紹介をという形で進行していき、最後はアッシュが自己紹介をした。

 席順は出席番号に伴って決められているようだ。

 このクラスの生徒、三十二人全員が自己紹介を終えると、再び、カミラが口を開く。


「はーい、皆さん、ありがとうございます。次に皆さんには、四人班を作って貰います」

「ここで作った班で、これから3年間、課題や実践訓練をこなしてもらいます。よく話し合って、決めてくださいねー」


 この学校は学年が上がる事の担当教官、クラスの入れ替えは一切無い。

 つまり、このクラスでここでの学校生活三年間を過ごすということだ。

 カミラの言葉を聞いた生徒達は次々に席から立ち、一緒に班になってくれる人を探している。


「エリーはどうするんだ?」


 アッシュが聞いてくる。


「うーん……アッシュ、一緒に組まない?」


 このクラスに他に顔見知りはいないので、人数を確保するのは難しいだろう。

 ここは顔見知りのアッシュを確保しておくのが良い。


「おう、いいぜ。特に組みたいやつも居ねぇしな」


 アッシュは二つ返事でそう言った。


「ありがとう、それじゃあ、あと二人だね……どうしようか……」


 俺がそう聞くと、アッシュが席から立ち上がる。


「ま、そこら辺のやつに話しかけてみるか」


 アッシュの言葉を聞き、俺も席から立ち上がる。


「そうだね、じゃあ……」


 俺がそう言いかけた時、ある生徒が隣の席から立ち上がり、話しかけてきた。


「そこのお二人、良かったら、(わたくし)達と組みませんこと?」


 そう聞いてきたのは、縦ロールツインテールをした明るい金髪の女子生徒、リディア・リース・スレイプウェル。公爵家の娘だ。

 いかにもお嬢様な口調、見た目をしている。


「へぇ、スレイプウィル家のお嬢様か。それともう一人は……」


 アッシュはそう言い、リディアの隣にいた紺色の髪の爽やかな男子生徒を見た。

 彼は確か……。


「クロウ・スカーレットだよ、僕も班の人を探してるんだ」


 クロウは微笑みながらそう言った。


「他の方々はもう、班をお決めになって居られて、入れて貰える班を探してますの! 良かったらそちらに入れてくれませんこと?」


 俺は周りを見渡す。

 リディアの言う通り、他の生徒はもう班を決め終わっていた。


「あんたに声が掛からないなんて珍しいな。お前さん位の爵位なら、選びたい放題だろ?」


 アッシュが、リディアにそう言った。


「その学校じゃ、爵位なんて無いようなものですわ。全ては入学試験の結果で決まりますわ」

「……? どういうことだ?」


 アッシュは、苦い顔をしてそう言う。


「この学校はね、入学試験の結果で出席番号が決まるんだよ。数字が少ない番号を持つ人の方が、試験の結果が優秀って言う証拠なんだ」


 リディアの代わりにクロウがその疑問に答える。


「だから出席番号が後尾の僕達は見ぬ気もされないって事」

「はぁ? なんだよそりゃ。そんじゃ俺達、滅茶苦茶不利じゃねぇかよ」


 アッシュは不満な声を漏らす。

 確かにこのシステムは生徒一人一人の試験の結果を開示してる様なものだ。

 あちらの世界だったら苦情ものだろう。


「仕方ないよ。班での活動は成績に響くからね……」


 俺はアッシュを宥めるようにそう言った。


「それは分かるけどよ……はぁ、くだくだ言ってても仕方ねぇな。エリー、お前さんが決めていいぞ」


 それは、リディア達と班を組むかと言う事を指しているのだろう。


「私はいいけど……リディアとクロウはいいの?さっきクロウが言った事が本当なら、私達……」


 俺達の席は四列目の窓際の席。

 つまりこのAクラスでは最後尾と言う事になる。


「実践になれば、試験の点数なんて何の意味もありませんわ。それに私は入学試験の時に見た、エリカさんの戦いに惹かれて、お願いしてますの。結局は教官から一本取ることは出来ませんでしたけど、私、感動しましたの!」


 リディアの言う通り、俺は試験において時間切れで引き分けで終わった。

 だが戦いでの戦術が評され、なんとか合格した。


「アッシュさんのあの奇妙な武器の扱いも見事でしたわ!是非ともご教授願いたいと言いたい程、素晴らしいものでしたわ」


 アッシュは「へぇ、見所あるじゃねぇか」と言い、少し笑っていた。


「クロウさんの素晴らしい剣さばきも見ていましたわ。あの剣の腕なら、立派な騎士になれると思いますわ!」


 リディアは、クロウの方を向き、そう言った。


「少し大袈裟だと思うけど、そう言って貰えると嬉しいよ」


 クロウもリディアの方を向いてそう言った。


「ですから、あなた方を下になんて見ていませんわ。それに私も言えた立場じゃありませんからね」

「へぇ、中々立派なお嬢様だな」


 アッシュが、ニヤリと笑う。


「当然ですわ!私 はスレイプウィル家の跡取り娘ですもの! エリカさん、アッシュさん、もう一度言いますわ。私達と、班を組んで頂けませんこと?」


 リディアは改めて、願いを伝える。


「うん、分かった。他に組めそうな人もいないからね」

「これからよろしくね、リディア、クロウ」


「うん、こちらこそよろしく」

「ええ、よろしくお願いいたしますわ!」


 こうして、俺達は四人班を結成した。


「皆さーん、作り終わりましたかー?」


 その直後カミラが教室全体に響き渡る声


「……大丈夫な様ですね。それじゃあこれから、先程作った班で、練習試合をしてもらいます」

「皆さんの実力が見てみたいので、全力でやって下さいね?」

「それでは、二十分後、各自の武装を持って、グラウンドに集合してください」


 そう言うと、カミラは教室から出ていった。


「へぇ、面白そうじゃねぇか。腕がなるぜ」


 アッシュがそう言い、それに続いてリディアも口を開く。


「ええ、教官の言う通り、全力で戦いましょう!」


 なんだこの血の気の多い二人は。


「そうだね、他のクラスメイトの戦い方も見てみたいし」


 クロウも好戦的なようだ。

 俺はあまり乗り気ではないが、仕方ない。

 俺達は寮に戻り、各自武器を取りに戻った。

 どうやらリディアとクロウは同じ部屋だったみたいだ。

 恐らくだが、出席番号で誰とルームメイトになるかを決められていると思う。

 それはさておき、俺達は寮のロビーに集合してからグラウンドへと向かった。



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