表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探偵の異世界生活  作者: わふ
第一部 学校生活編
56/127

五十五話 社交界

 

 そして、その日の夜五時半、俺達はドレスに着替える為に、早めに宮殿へとやって来た。


「うお……間近で見るとでけぇな。な、コルネ」

「へ、あ、そうですね!」


 ん? 何かコルネの奴反応鈍いな。


「コルネにしてはリアクション薄いじゃない。何かあったの?」

「そ、そうですか? 別に普通だと思いますけど……ほ、ほら早く入りましょう!」


 アリッサの問いにコルネが焦りながら答え、宮殿に入って行く。


「うーん、明らかに怪しいですわね……」

「そうだね……そう言えば昼間、マリーはコルネと一緒に出掛けてたけど……何か知ってるんじゃない?」

「えっ、私は何も知りませんよー?」


 マリーは分かりやすくとぼける。

 何だろう、嫌な予感しかしない……。


「あの、俺もついて来て良かったのでしょうか?」


 アルベールが恐る恐る、マリーにそう聞いた。


「もちろんです。アルベール様はエリカ様の護衛役なんですから。護衛の仕事があるかと思いますが、楽しむ事も忘れないで下さいね」

「……お心遣い感謝します」

「ふふ……さ、皆様も中にどうぞ」


 俺達も宮殿の中へと入る。


「お待ちしておりました、皆様」


 玄関ホールでは車で送ってくれた執事、ルーデッヒが出迎えてくれた。


「ルーデッヒ、皆様を更衣室へと案内して下さい」

「はい、分かっておりますとも。皆様こちらでございます」


 中央の階段を上がり、正面から左手の回廊へと足を踏み入れる。

 回廊には幾つもの部屋が並んでおり、その内の二部屋へと、それぞれ案内された。


「ドレスはそこのハンガーラックに掛かっているのをお着替え下さい。マリー様が見繕って、それぞれ皆様の名前が書いた名札が掛かってあります。何かあれば、お申し付け下さい」


 ルーデッヒはお辞儀をして、部屋を出て行く。


「どれどれ……へぇ、中々見どころがあるじゃない。しっかり、それぞれにに似合うドレスを用意して――」


 ハンガーラックを眺めていたアリッサが急に黙り込む。


「エ、エリカ……あんた、これ着れる? いや、私が着るんだったら、別にいいんだけど、エリカって意外に恥ずかしがり屋だから……」


 アリッサが意味不明な事を言ってくる。

 恥ずかしがり屋? 何の話だ?

 もしかして、昨日一緒に、浜辺に行かなかったから、肌を見せたくないって勘違いされたのだろうか。

 あれは本当に泳ぎが苦手だから行かなかっただけなのだが。

 それにドレスぐらいなら着れる。問題は無い筈だ、多分。


「? 着れると思うけど……」

「そう? じゃあ、これなんだけど……」


 アリッサはそのドレスを持って、俺にに見せてきた。


「……え゛」


 それは背中開きの紫色のドレスだった。

 これを……俺に着ろって言うのか……?


「おお、綺麗。絶対エリカに似合う」

「そうですわね。エリカさんのミステリアスさにピッタリですわ!」


 確かに、普通ならあまり抵抗は無いだろう。

 だがしかし…………。

 ……絶対にこれ、用意したのコルネだろ。

 コルネの方を見たら、ニヤニヤと笑顔を見せている。

 案の定と言った感じだ。


「そ、その様子じゃ無理っぽそうね……」

「……これしか無いんだよね……着るよ……はぁ……」

「ほんとですか!? じゃあ私が手伝いますね!」


 コルネはこれ見よがしにそう言って、服を脱がしてくる


「ぬ、脱ぐくらいは自分で――」


 そう言おうとしたが、コルネの勢いに押される。


「それじゃ、あたし達も着替えましょ」

「そうですわね」


 他の三人も何時もの事だ、と言う風に着替え始める。

 誰かこの状況を止めてくれ……。その願いは届かず、コルネに言われるがままにドレスに着替えさせられた。


「……ふむ、後ろ髪上げた方が良いですね!」


 ああ、もう勝手にしてくれ。

 くそ、何で始まる前からこんなに疲れないといけないんだ……。


「……出来ました! どうですか?」


 コルネに姿鏡まで連れて行かれる。

 ……まぁ、コルネのセンスは良い。それだけは認めよう。


「あら、良いじゃない」

「ええ、素敵ですわ!」

「綺麗……」


 と、着替え終わった3人も見に来る。


「コルネさん、流石ですわ!」

「へええ……じゃあエリカさん! 次は私を着替えを手伝って下さい!」


 自分で着替えろ、そう言おうとしたが面倒くさくなり、渋々手伝う事にした。

 そんな事もありながら、全員着替え終わったのを確認して、回廊に出る。

 アッシュ達は既に着替え終わっており、隣の部屋の前で立っていた。


「着替え終わったか……って、エリーお前……」

「わぁ、凄い綺麗だね、エリカ!」

「一番目立っているな」

「ほう、これは中々……」

「ああ、似合っている……」

「是非ともティアにも見せたいものだ」


 と、一人ずつコメントを添えて、アッシュ達の視線が俺に集まる。


「ちょっと、あんた達。エリカばっかりじゃなくて、私達も見なさいよ!」

「ん、そうだなぁ……ま、お前は馬子にも衣装って言ったところだな」

「な、な、何ですってぇ!?」

「ア、アッシュ、失礼だよ! アリッサも綺麗だよ。他の3人も」


 クロウがそう言うと、アリッサが「そ、そう?」とちょっと戸惑いながら頬を掻く。


「そうだね。皆、綺麗だよ」

「ふふ、殿下に褒められるなんて光栄ですわ。ありがとうございます」


 そんな会話をしていると、そこにルーデッヒがやって来る。


「皆様、着替え終わったご様子で。とてもお似合いでございます。では、そろそろ会場の方へとご案内させていただきますが、よろしいでしょうか?」

「ええ、お願いします」


 俺がそう答えると頷き返し、先程歩いて来た回廊を引き返して行く。

 俺達もそれについて行き、三階へと上がった直ぐにある扉の先へと案内される。


「ここがパーティー会場でございます。では、(わたくし)はこれで」


 ルーデッヒはお辞儀をして、その場を離れて行く。


「わぁ、もう結構来てますね」


 会場は貴族や軍人達で溢れ返っていた。

 まぁ六時前だし、丁度良い時間だろう。


「おお、料理も沢山あるな! じゃあ早速……」

「だからはしたないから辞めなさいってば!」


 アリッサはテーブルに歩いて行こうとするアッシュの肩を掴む。


「良いじゃねぇかよ。パーティーってのは料理も楽しまないと損だぜ?」

「だからって、まだ主役も来てないのよ? 流石に遠慮しなさいっての!」

「わーった、わーった。だからそう熱くなんなって」

「はぁ……誰のせいだと思ってんのよ……」


 何にせよ、あまり騒がない方が良いだろうな。

 若干周りの視線が、俺達の方に向いている。


「ふふ、相変わらず元気だ」


 そう言って現れたのはグレイグだった。


「あ、やっぱり父さんも来ていたんだね」

「ああ、警備で呼ばれてな。そっちはマリー嬢の招待か?」

「うん、今日当然言われてね……」

「そうか……ハーシェル、二度目にはなるがエリカ君の事、よろしく頼んだぞ」

「はい、もちろんです」


 グレイグは満足そうに頷く。


「がはは、相変わらず、肩苦しく振舞っておるな、グレイグ」


 そう豪快な笑いをして、新たにもう一人、こちらに近付いてくる。

 左目に眼帯を付け、灰色髪でガタイの良い、グレイグと同じ歳ぐらいの男性だ。


「おいおい、まさか……」

「え、ええ、この方って……」


 ……こんな大物もパーティーに出席しているのか……。


「……余計なお世話だ、ジャックス」

「そう返すところも変わっておらぬな!」


 男性はもう一度豪快に笑う。

 ……ジャックス・ロックハート、スリーナイトの一人だ。

 巷では『双撃のジャックス』と呼ばれている。

 二十五と若くしてスリーナイトに選ばれ、二本の槍を巧みに操り、戦場を蹂躙する。そう昔にアルベールから聞いた筈だ。


「やはりあのジャックス卿でしたか」

「お、スレイプウェル家の嬢ちゃんか! 久しぶりだ!」

「はい、お久しぶりです」

「あの堅物の方も来ておったわ。挨拶して行くといい」

「そう……ですか……」


 リディアの表情が暗くなる。

 堅物の方……。

 もしかして、リディアの父親か?


「ユリウス殿下もお久しぶりですな」

「ああ、ジャックス卿は、相変わらず元気そうだね」

「ええ、もちろんですよ!」

「それは頼もしい」


 ユリウスは「ふふ」と小さく笑う。


「クロウも久しぶりだ、元気にしとったか?」

「はい、久しぶりですね。ジャックスさん」

「そう硬くならんでいい。わしとお前達の仲だ」

「は、はは……ところでジャックスさんは何でここに? 社交界の護衛にしては、スリーナイトの貴方が出張ってくるなんて、大袈裟じゃありませんか?」


 確かに、社交界にしてはこの人が出張ってくるのは不自然だ。

 今はもう一人のスリーナイト、雷帝ステラが居ない。

 こんな社交界よりも、皇帝の近くに置いておく方が先決だ。

 もしかして、Sの件で来た……いや、別にこのオラシオンは人手が不足しているとは思えない。

 それに被害も今のところ俺達だけ……そう考えると益々疑問が強くなる。

 もしリディアの父親が来ていても、さっきの口振りでは、リディアの父親の付き添いで来たという訳では無いだろうし……。


「ふむ、それはな――」


 ジャックスが答えようとしたその時。


「皆様、お待たせしました」


 マリーとセレストブルー色の髪色をした老けた男性、恐らく現当主のフランク・フォン・グレスティアだろう。

 その二人がパーティー会場の奥から現れる。


「おっと……まぁ良い、見ていれば分かる事だ。それでは、皆、後でな」


 ジャックスはそう言い残し、この場を離れて行く。

 それと同時にアルベールは敬礼をする。


「いい頃合いだ。私もそろそろ警備に戻らせてもらう」

「うん、頑張ってね父さん」

「ああ、では、後で」


 グレイグもこの場を離れて行った。

 その際もアルベールは忘れずに敬礼をした。


「では、公開の主催者グレスティア家当主、フランク・フォン・グレスティアのお言葉です」


 マリーは持っていたマイクをフランクに渡す。


「えー、皆様、今日はお集まり頂いた貴族の皆様、それと警備を頼まれて頂いた軍の皆様、誠に感謝します。今日は存分に楽しんでいって下さい」


 老いた声でそう言うと、会場で拍手が鳴り響く。


「――それと、もう一つ……今回はある方に特別に、お越し頂いております」


 そう言ってフランクは一歩後ろに下がると、奥からある人影がゆっくりと現れる。


「な、なぁ、あれってもしかして……」

「え、ええ、まさかここで直接お目通りするなんて……」


 それは誰もが知っている人物だった。

 金髪で五十代前半くらいの風貌の男性。

 この世界で生きていれば、嫌でも目にする人物。

 その男はマイクを受け取り、口を開く。


「皆、今日は良く集まってくれた。ユスティア帝国、皇帝、セオドリク・フォン・ユスティアだ」


 そう、それは帝国皇帝セオドリク・フォン・ユスティアだった。


「ち、父上……」

「嘘だろ……皇帝がこんな所に来んのかよ……」

「ア、アッシュさん、失礼ですわ!」


 背後からそう小声が聞こえてくる。

 会場もざわついている様だ。


「と、言っても私から何も言うことは殆ど何も無い。ただ一つ、先程フランク君が言った様に、今日は楽しんで帰って欲しい! 以上だ」


 そう言って、マリーにマイクを手渡し、フランクの様に一歩後ろに下がる。


「はい、驚く事に今回、皇帝陛下に特別にお越し頂きました。どうやら会場の様子を見ると、サプライズ成功した様ですね、良かったです」


 マリーは「ふふふ」と少しはっちゃけた様子で笑う。


「マ、マリー……」


 クロウは額に手を当てる。


「……こほん、それはさて置き、私からも言う事は一つです。今日は楽しんで下さいね」


 その言葉で主催者の言葉は締められ、会場も直ぐに始まる前の雰囲気へと……とは流石にならなかった。俺達を含め。


「殿下は知ってたのですか?」

「いや、私も知らなかったよ。これが本当のサプライズ、という事か……流石は父上、あっぱれだ」


 ユリウスは何か勝手に感心して、一人で頷いている。


「だからジャックスさんが来ていたんだね……」


 クロウは落ち着かない様子でそう言った。

 そうか、この可能性があったか……。


「流石に予想外だ……皇帝陛下が直々にいらっしゃるなんて……」


 ウィルバートはそう言う。

 まさか、ただの社交界と思っていたが、皇帝が現れるなんてな……。

 ますます来ない方が良かったと後悔した瞬間だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ