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探偵の異世界生活  作者: わふ
第一部 学校生活編
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五十四話 クロウの目指す道

 

 翌日、アッシュから昨夜行けなかった、クロウが行きたい店に行こうと誘われ、大通りに来ていた。

 昨夜と同じメンバーと護衛のアルベールで来ている。


「エリカ、あれから何もなかった?」


 クロウがそう聞いてくる。


「うん、大丈夫だったよ。ね、アル?」

「ああ、エリカの言う通り、何も無かったぞ」

「そっか、それなら良いんだけど、何かあったら何時でも言ってね」

「俺も協力するぜ」

「私もです!」


 と、三人がそう言ってくれる。


「うん、ありがとう、三人共」

「ふふ、何だか微笑ましいですね」

「ええ、幼馴染が良い友人に恵まれて良かったです」


 アルベールとマリーは遠目でそう言っている。

 そんなちょっと嬉しい事もありながら、目的の店へと到着した。


「ここは……画材屋か?」


 アッシュは店の看板を見ながら、そう言った。

 なるほど、クロウが来たい店は絵の道具が売ってる画材屋だったのか。


「ああ、クロウさんは昔から絵が好きですもんね」


 やはり、昔から好きだったんだな。


「今も絵描きを続けているんですよね?」

「うん、学校では美術部に入っているよ」

「まぁ、それは素晴らしいですね!」

「そ、そうかな……」

「そうですよ! 応援してますよ、クロウ様!」

「あ、ありがとう……」


 クロウはぎこちなくそう答え、画材屋に入る。


「……クロウ様、やっぱり……」


 マリーは小さくそう呟き、クロウの後に続く。


「どうしたんでしょうか、クロウさん。様子が少し変だった様な……」

「ま、何かあんだろ。俺達も入ろうぜ」


 俺達も画材屋へと入る。

 店の中はキャンパスや筆、イーゼルや絵の具等の品々が並んでいた。


「お、久しぶりだな、クロウ君。オラシオンに帰ってきていたのか」


 中へ入ると、クロウが店主らしき男性と喋っていた。


「はい、昨日帰ってきたところです。と言っても、2日後には帝都に戻るんですけどね」

「そうか。もっとゆっくりしていけば良いのに……と、いけねぇ。ここに来たって事は、何か買いに来たんだろ?」

「はい、この紙に書いてあるのをお願いします」


 クロウはポケットから1枚の紙を取り出し、店主に渡す。


「あいよ、ちょっと待ってな」


 店主はそう言い残し、店の奥へと消えて行った。


「随分親しげだったが、よく来る店なのか?」

「うん、学校に通う前は、週一回は来てたよ」

「へぇ、それ程絵が好きなんだね。そんな頻繁に画材を必要になるって事は」

「はは、まぁね」


 暫くして、店主が商品を持ってきて、料金を払い、店を後にする。


「よし、そんじゃ帰るか……おい、あれって……」


 店を出たところで、アッシュが東門に続く道の方を指さす。

 そっちの方から、装甲車が走ってくる。

 その装甲車は大通りを抜け、宮殿の方に向かって走り去って行った。


「あれって軍の動力車だよな」


 ほう、あんなのまで開発されているのか。


「そうみたいですね。側面に帝国軍の紋章が入っていましたし……でもあれって、第1陸軍の紋章ですよね? 何で、ここに来てるんですかね?」


 確かに、さっきの紋章は第1陸軍のものだった。

 ここの管轄は第五陸軍の筈だが、何かあったのだろうか。


「昨日、Sが出たからじゃねぇのか?」

「うーん、どうだろ……マリーは何か聞いてない?」

「あれ、言ってませんでしたっけ? 今夜、うちの宮殿で社交界が開かれるんですよ。他の貴族方々も多く集まるので、第1陸軍の皆様に警備の強化をお願いしているんですよ」


 いや、初耳だ。


「ええ!? そうなの?」

「はい、そうなんです。そこでですね、この話も、昨日の内にするつもりだったんですが、エリカ様達も社交界にご招待しようかと思いまして……」


 これまた随分と急だな。


「おぉ、良いじゃねぇか。美味いもんとか沢山出るんだろ?」

「ええ、もちろん」

「社交界……良いですね! 私も行きたいです!」

「エリカ様はどうですか?」


 うーん、実を言うと、あまり気が進まない。

 貴族のお偉い方が集まると言うことは、恐らく肩苦しい場になるだろう。

 俺はそう言う場所は苦手なのだが……選択権は無いだろうな。

 それをどうこう言う前に、今こうしてお偉いさんに誘われている。

 断る訳にはいかないだろう。


「もちろん、行きたいです」


 本心を隠して、そう答えた。


「決まりですね!」

「ちょっと待って、皆のドレスやタキシードはどうするの? 僕は家にあるから良いけど……」

「その点はご安心下さい。私の家の方から、貸し出しますから」


 ……そうか、ドレスか……。

 うわぁ、ますます嫌だ……。


「おっし、なら、早いとこ帰って、他の奴らにも伝えてやろうぜ」

「そうですね!」


 それからは屋敷へと戻り、他の皆にも社交界の話をした。

 案の定、全員行く事になり、皆は社交界を楽しみにしていた。

 社交界は夜の六時からなので、それまでは自由行動となった。

 俺はそれまで何をするかを考える為に、取り敢えず部屋へと戻った。

 コルネは珍しく、用事があると言い、マリーと一緒に屋敷を出て行った。

 ……さて、夜六時までどうしようか……。

 何か、面白い事が無いか、屋敷の中をぶらついてみるか。

 そう思い立って、部屋を後にする。


「ん?」


 すると、二階の一部屋から何か物音がするのに気が付いた。

 扉が空いてるな。行ってみるか。

 そんな軽い気持ちで、その部屋を覗いてみた。


「あ、エリカ、どうしたの?」


 部屋にはクロウが居た。

 この部屋、画材が沢山あるな。もしかして……。


「ここってクロウの部屋?」

「あ、うん。ちょっと絵を描こうかなって思って……」

「あ、もしかして、その為に、画材屋に行きたかったの?」


 そう言いながら、部屋の中へと入る。


「そうだよ。昨日、絵を描こうと思ったんだけど、殆どあっちに持ってたの思い出してね」

「やっぱり……どんな絵を描こうとしてるの?」

「うーん、それが悩んでるんだよね……」


 クロウはキャンパスに向かって椅子に座り、顎に手を当てる。

 暫くして、はっと何か思い出した様に顔を上げる。


「そうだ、折角だし、エリカの絵を描かせてよ」

「え? それって私をモデルにしたいって事?」

「うん、そう言う事!」


 ……困ったな、絵のモデルなんてやった事無いぞ……。


「あ、そんなに難しいポーズなんかじゃ無くて、立ってるだけで良いから」


 立ってるだけか、それならやってもいいか。


「分かった、いいよ」

「じゃあ、そこに立って!」


 俺はクロウに指定された場所に立つ。


「顔の向きは正面でいい?」

「うん、大丈夫だよ」

「分かった」


 クロウは筆を取り、真っ白のキャンパスに色を入れる。

 スムーズに筆を走らせる事一時間、クロウは筆を置き「ふぅ」と息を吐く。

 どうやら完成したようだ。


「出来た?」

「うん、何とかね」


 そう言ってキャンパスを持ち上げ、こちらに見せてくる。


「綺麗……」


 思わず、そう口にしていた。

 絵の内容は、俺が晴れた草原に立ち、そよ風に吹かれている様子だった。

 何とも爽やかな絵である。


「え、そ、そうかな?」

「うん、そうだよ! これは将来、立派な画家になるよ!」


 気付かぬ内に声のトーンを上げていた。

 それ程までに美しい絵だ。


「エリカにそんなに褒められると嬉しいな……」


 クロウはそう言っているが、何処か表情が暗い。

 どうしたんだろうか……何か気の触る事言ったか?

 ……もしかして……。


「……ねぇ、クロウ。もしかして、画家を目指している事、両親に言ってないの?」

「っ……」


 クロウは図星と言った表情を見せた。

 やはりか……。ずっと疑問に思っていた。

 何故画家目指しているのに、士官学校に入学したんだろうと。


「……実はそうなんだ。ほら、うちの父さん、軍人だから、きっと許してくれないだろうって思ってね……きっと父さんは僕に、同じ軍人になって欲しいんじゃないかって思ってるんだ。だから、僕から士官学校に通いたいって言い出したんだ」


 確かに、グレイグは緋の戦域と呼ばれる程の凄い軍人だ。

 その子供も傍から見れば当然、軍人になるだろうと思う。

 でもそれとこれとは話が別だ。


「……そんなに後ろ向きに考えなくても良いんじゃないかな?」

「え?」

「だって、まだ言ってない訳でしょ? 1度試しに言ってみたら良いじゃん」

「で、でも、万が一駄目だって言われたら……」

「その時はその時だよ。でも先ずは言ってみないと分からないよ。断られても、人生終わり……って事にはならないよ。案外許してくれるかもしれないよ?」


 あの人はああ見えて、そんなに堅物な人じゃ無いだろう。

 あんなホテルみたいな風呂場を作らせるぐらいだ。もっと面白いと言うか、なんと言うか……気軽な人、と言えばいいのだろうか……?


「それに」

「それに?」

「こんな立派な綺麗な絵を描ける才能を挑戦する前から、無駄にするなんて勿体無いよ」


 それがクロウに画家の道諦めて欲しくないを一番の理由だ。

 この絵だったら、極めれば天下を取れると思う。

 あまり絵に詳しくない、素人目線の意見だが。


「絶対に画家の道を目指した方が良いよ!」

「……そ、そこまで言うなら……一度話してみるよ。父さんに」

「うん、それが良いと思う。応援してるよ、クロウが画家の道に進めるように」

「うん……ありがとう、エリカ!」


 クロウは自信満々に頷く。

 きっと今日の夜にでも話すだろうな。

 それまで結果が楽しみだ。

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