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探偵の異世界生活  作者: わふ
第一部 学校生活編
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四話 新たな生活

ここから、学校生活編です。

 

 ―帝都ログレス―


 俺とシフィーは何事も無く、帝都ログレスに汽車で到着し、ログレス中央駅前の大通り、パールストス大通りを経由して、目的地のログレス士官学校がある、帝都北東に位置するユノル地区に向かっている。


「凄い賑わいですね」


 シフィーは人混みの多さに浮かれた様子だ。

 彼女の言う通り、辺境のイーハ村とは比べ物にならないくらい賑わっていた。


「うん、他国を繋ぐ交通機関があるからね。色々な国の人が来てるんだと思うよ」


 この帝都ログレスがあるユスティア帝国はアヴァルタ大陸中央部に位置し、諸国との流通、他の国から来た旅人が多く立ち寄る。

 その為、帝都ログレスは帝国の中央都市と言うだけで無く大陸全体の中央都市とも言える程の発展、賑わいがある。


「だから、色々な出店があるんですね!」


 俺達は街並みを楽しみながら大通りを進んで行き、ログレス士官学校に着いた。


「……やっぱり何度見ても、迫力ありますね……」


 俺達はログレス士官学校の正門で立ち止まる。

 他の新入生が絶え間なく門の先へと歩いていく。

 去年にも試験の為、ここに来たが、規模の大きさに驚いてしまう。

 敷地中央に、四階建ての校舎があり、校舎の後方にそれなりの広さを確保している、あちらの世界で言う、グラウンドに相当する場所がある。

 正門左手には礼拝堂があり、右手には校舎よりも横幅が大きい、六階建ての学生寮がある。

 俺達新入生は先ず、右手の学生寮に行き、指定された部屋に荷物を置いてから礼拝堂に向かうことになっている。

 俺達は学生寮に向かった。


「エリカ姉さんと部屋が違うんですね……残念です……」

 シフィーは少し俯きながらそう言う。


「それにクラスも違うしね……」


 この学校は、S、A、B、Cに分けられ、Sに近い程、入学試験での点数が高かった生徒が集まる。

 つまり、単純な優秀さの順はSから数えて、S、A、B、Cとなる。


「私がSクラスなのに、エリカ姉さんがAクラスなんておかしいです!」


 この組み分けは、シフィーの方が試験での点数が高かったと言う事を物語っている。

 当然の結果だろう。


「仕方ないよ、私剣術苦手だし……」


 入学試験は筆記試験と身体能力の合計点数によって、審査される。

 身体能力は魔力量と戦闘能力の2つが、採点対象になる。

 俺は、魔力量の方は問題無かったが、戦闘能力は、百点満点中五十四点だった。

 合格点は五十点なので本当にギリギリだった。

 戦闘能力は主に自分が得意な武器を使って良いと言う、定めがあった。

 戦闘能力はこの学校の教官と模擬試合をして、その結果や戦闘行動で採点される。

 魔力量と筆記試験はほぼ満点だった為、何とかAクラスに入れたと言う訳だ。


「シフィーは凄いよね。三百点中、二百九十六点なんでしょ?」


 シフィーは全ての試験でほぼ満点の成績を収めていた。


「はい、戦闘能力と筆記試験が百点で魔力量が九十六点でした」

「……でも、もし魔力量では無く、魔法の使える数で採点されていたら多分私、合格してなかったですよね……」


 シフィーは魔力量自体は多いが、魔法を使う事が苦手だ。

 シフィーはその事を気にしている。


「大丈夫、これから使えるようになれば良いよ」

「……そうですね!これから頑張りますね!」


 シフィーは、笑顔を見せる。

 そんな会話をしている内に、学生寮に着いた。

 入って直ぐの場所にロビーがあり、ロビーの左右に扉があり、真ん中に上の階に繋がる階段があった。


 俺達は階段を上り、シフィーとは三階で別れた。

 シフィーの部屋は六階にあるので、再度階段を上って行った。

 俺は三階の廊下を歩いて行き、指定された部屋の前に着いた。

 俺は部屋に入ろうとするが中に人の気配を感じ、ドアノブから手を離し、扉をコンコンとノックした。

 寮の部屋はルームメイト式だ。もう一人の部屋主が既に来ているんだろう。

 数秒後、扉越しから、「開いてるぞー」と気だるそうな青年の声が聞こえてきた。

 俺は再び、ドアノブに手をかけ、扉を開く。


「よう、お前さんが俺のルームメイト……」


 白髪(はくはつ)の青年が、こちらを振り返り、目を丸くする。

 ネクタイを緩く締め、Yシャツの裾をズボンに入れていなく、チャラチャラした雰囲気の青年だ。


「……って! まじで女子かよ!?」


 青年は、ルームメイトが、異性になるかもしれないとは聞いていたが、本当になるとは思ってなかったんだろう。

 この学校の寮は、男女混合の寮制度だ。

  恐らく、異性との交流の機会を増やす為だろう。


「……へぇ……こんな美人さんが俺のルームメイトとはなぁ……中々粋なことしてくれるじゃねぇか!」


 青年が俺の顔をまじまじと見てくる。


「……貴方が私のルームメイトなの?」

「どうやらそうらしいぜ。お前さん、名前なんて言うんだ?」


 青年はそう聞いてくる。


「私はエリカ、エリカ・ライト。貴方は?」

「俺は、アッシュ・クレセントだ。気軽にアッシュって呼んでくれて良いぜ!」


 アッシュと名乗った青年は、右手を前に突き出して、握手を求めてくる。


「よろしくね、アッシュ」


 俺はそう言いながら、握手に応じる。


「おう、よろしくな、エリー!」

「エリー?もしかして私の事?」


 所謂あだ名と言うやつだろうか。


「おう、良い呼び名だろ?」


 アッシュがそう言いながら親指を立てる。


「うん……良いと思うよ? 良く分からないけど……」


 正直、呼び方なんてどうでも良い。


「はは、何だよそりゃ」


 アッシュは、少し笑いながらそう言う。


「まぁ、取り敢えず礼拝堂に行かねぇとな」


 アッシュは廊下へと歩いて行く。


「そうだね」


 俺は相槌を打ち、荷物を置いてからアッシュの後に続き、廊下に出て礼拝堂に向かった。




 ◇◇◇




 数時間後。


「では、これにて、第百九十二回入学式を閉式する。みな、帝国の名に恥じぬよう、勉学に励たまえ!」


 そう言い放ったのは、金髪でオールバックの髪型をした、四十代前半くらいの男だ。

 その男はこの学校の学園長、ダリオス・ルイスだ。

 ダリオスの言葉を期に、礼拝堂に何列も並べらている木製の長椅子に座っていた、俺含む新入生達は立ち上がり、礼拝堂から退出しようと出入り口に歩いて行く。


「いやー長かったな、学園長の話。途中寝ちまいそうになったぜ」


 俺の隣に座っていたアッシュが大きな欠伸をする。

 頭の後ろで手を組み、長椅子の背もたれに持たれながら悪態をついている。


「あはは……確かに長かったね……」


 天に昇っていた太陽が沈みけており、礼拝堂の窓からは夕暮れ時のオレンジの光が差し込んでいた。


「ったく、何処に何時間も話し続ける元気があるんだっつの」


 アッシュは勢い良く、長椅子から立ち上がった。


「そんじゃ、俺達も部屋に戻ろうぜ」


 アッシュは座っている俺の方を振り向きながら、そう言った。


「そうだね、今日はもう何も無いみたいだし」


 俺も立ち上がり、アッシュの横に並んで礼拝堂の出入り口に歩いて行く。


「そういや入学式中、前で話してた女子、お前さんと何か関係あるのか?」


 シフィーの事だろう。

 シフィーはこの学校に首席で入学した為、新入生代表として、礼拝堂の後陣に立たされ、簡単な演説をさせられていた。


「シフィーのこと?」

「そうそう、首席のシフィー・ヴァイス・ライト。お前さんの姓が入ってるのが気になってな」


 俺達は礼拝堂を歩きながら話を続ける。


「うん、シフィーは私の妹だよ。血は繋がってないけどね」

「私が9歳の頃にお母さんが引き取ったの」


 俺がそう言うと、アッシュは少し暗い顔になる。


「……何か、訳ありみたいだな」

「続き、聞きたい?」


 アッシュは頭を掻きながら、答える。


「いや俺、湿っぽい話嫌いだし、話さなくて良い。それに、勝手に聞いちまったら、お前さんの妹に申し訳ねぇからな」


 アッシュは、俺の方を向き、微笑みながらそう言った。


「……うん、そうだね。ありがとう、アッシュ」


 俺はアッシュの顔を見ながら、そう言った。


「おうよ。他人の過去にずかずかと入り込む趣味はねぇからな」


 アッシュはそう言うと、再び前を向いた。


「エリカ姉さん〜!」


 俺達が礼拝堂を出たタイミングで、前からシフィーの声が聞こえてきた。

 シフィーがこちらに向かって、小走りで近づいてきた。


「シフィー、演説お疲れ様。立派だったよ」


 シフィーは俺達の元で立ち止まる。


「あ、ありがとうございます! 少し……いえ、だいぶ緊張しましたけど」


 少し言葉に詰まっていた部分も多々あった。

 人見知りのシフィーにはさぞ辛かっただろう。


「あの……そちらの方は……?」


 シフィーはアッシュの方を向き、そう言った。


「アッシュ・クレセントだ。よろしくな、お嬢ちゃん」

「シ、シフィー・ヴァイス・ライトです……こちらこそ……よろしくお願い……します……」


 シフィーは目を逸らしながら、答えた。


「おうよ!」


 アッシュが返事をする。


「そうだ、シフィーのルームメイトは誰だったの?」


 俺がそう聞くと、シフィーは焦りながら答える。


「そ、それがですね……本当に凄い方なんです!」

「何とですね……あのユリウス皇太子殿下だったんです!」

「え、えぇ!?」


 俺はシフィーの答えに驚いてしまう。

 ユリウス・フォン・ユスティア。この国の次代の皇帝を担う人物だ。


「なっ……! まじかよ!? ここに入学したとは聞いていたが……まさか本当だったとはな、びっくりだぜ」


 アッシュも驚きながら、そう言った。


「はい、さっきまで一緒に居らしてたんですけど、先に部屋にお戻りになられました」

「エリカ姉さんを紹介しようとしたんですけど……」


 シフィーは俯きながら、そう言った。


「また今度、紹介しますね」


 いや、紹介されても困るんだが。

 流石に、そんな大物の人物とはあまり会いたくはない。


「そう言えば……エリカ姉さんのルームメイトはもしかして……この方ですか?」


 シフィーはアッシュの方を向き、そう言った。


「うん、そうだよ?」

「そうですか……」


 シフィーはそう言ってから俯むが、直ぐに顔を上げて再びアッシュの方を向いた。


「アッシュ……さんでしたっけ、あまりエリカ姉さんを誑かさないでくださいね?」


 シフィーは笑顔で言った。

 声は笑っていなかったが、笑顔で静かにそう言った。


「お、おう、肝に命じとくぜ……」


 アッシュは声が少し震えていた。

 アッシュは、横から俺の顔に近付づき、静かに言う。


「お前さんの妹……怖いな……」


 俺は横目で静かに答える。


「あはは……いつもはこんな感じじゃ無いんだけどね……」


 それから俺達三人は寮に行き、各自室に戻った。


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