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探偵の異世界生活  作者: わふ
第一部 学校生活編
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四十六話 冒険者ギルド

 

「エリカさん! アイスクリーム屋がありますよ! あ! あっちはフランクフルトです!」


 中央通りに来てから、コルネは落ち着きも無くはしゃいでいる。


「どれから行きますか? エリカさん」

「……もしかして全部回るつもり?」

「当たり前ですよ!」


 勘弁してくれ……何軒あると思ってるんだ。


「……って、あれ……」

「どうしたの?」


 さっきまではしゃいでいたコルネが急に立ち止まる。


「あ、いえ、この建物って冒険者ギルドのですよね?」


 コルネはそう言って、目の前の建物を指さす。

 その建物の看板には、冒険者ギルドを示す文字が大きく書かれていた。


「帝国では、珍しいですね。冒険者ギルドがある街なんて」


 冒険者ギルドは、帝国じゃあ、あまり見かけない。それに伴って、冒険者も殆ど見ない。

 昔は多くあったそうだが、今は冒険者ギルドに回ってくる案件は、先に帝国兵が解決するからだ。

 そうやって段々と風化していき、あるのは小さな村や、辺境の街くらいだ。


「帝国ではあまり見ないよね。王国ではよくあるって聞くけど……」


 王国の方は冒険者ギルドは多いらしい。

 その理由は、帝国軍と王国軍の武力の差だろう。

 帝国では解決出来た依頼が、王国では解決出来ない、そう言うケースは多い。


「それにしても、こんな大きな街で、冒険者ギルドがあるって言うのも珍しいですよね。何か理由があるんですかね?」

「確か、この街の近辺に出没する魔獣の数が多い上に、一体一体が強力らしいんだ。だから軍が手に負えない魔獣の討伐が、政府から依頼と言う形でギルドの方に回って来てるんじゃないかな?」

「なるほど、王国の冒険者ギルドは、国民からの依頼が一般的ですけど、この街の冒険者ギルドは、軍からの依頼で、経営出来ているんですね!」


 そういう事だろう。

 冒険者ギルドは、依頼者が出した報酬金額から、1割程度を紹介料として貰っているらしい。

 その金で、ギルドは経営出来ていると言う訳だ。


「エリカさん、中、入ってみませんか?」

「え、何で?」

「だって、帝国軍からの依頼が多いって事ですよね? だったら、依頼の報酬は高額そうじゃないですか!」


 何だ、金目当てか。

 しかし、残念だが、そんな甘い考えは――。


「行きましょう! エリカさん!」

「え?」


 そう考えようとした時、コルネは既に冒険者ギルドの扉を開けていた。

 急いで止めようとしたが……まぁいいか。

 直ぐ現実を見て、諦めるだろう。

 それに、どんな依頼があるのかも、少し興味がある。見るだけならタダだ。

 俺は大人しくコルネの後を追って、冒険者ギルドの中へと入る。


「おー、結構人多いですね」


 中は、冒険者達で溢れかえっていた。

 内装は木造で、酒場みたいなスペースがあった。


「エリカさん、こっちですよ!」


 気付いたら、コルネは受付辺りにいた。

 俺も急いで、後を追いかける。


「見て下さい、凄い量ですよ!」

「これって……依頼ボード?」


 依頼ボード、ギルドの壁に設置されている、依頼の内容が書かれた紙が貼り出されるスペースだ。


「はい! 早速探しましょう! 高額の依頼を!」


 そう意気込んで依頼ボード見るコルネだったが、1分もしない内に、肩を落とす。


「……楽で高額の依頼、無いじゃないですか!」


 そりゃそうだ。

 依頼主が帝国軍と言っても、違いは依頼主が一般人か、軍かの違いだけだ。

 安い依頼は安い、高い依頼は高い、何も変わらない。まぁ、少しだけ、報酬金は上乗せされている様だ。目に見えて高い訳じゃないが。


「うぅ……楽な依頼でがっぽがっぽ作戦、失敗です……」


 穴だらけの作戦だな……。


「ま、まぁ、それは置いといて、軍からの依頼が殆どだけど、意外に一般人からの依頼も多いんだね」


 と言っても、殆ど雑用だけどな。

 庭の草むしりやら、害虫駆除、店番等など……。

 恐らく受ける奴は居ないだろう。当然報酬金も安いからな。


「あ、エリカさん! このい依頼どうですか!?」


 コルネは一枚の依頼書を指さす。

 それは魔獣退治の依頼だった。


「えっと、『トナラン街道に出没する、小型の鳥魔獣を討伐されたし』か」


 トナラン街道はオラシオン南門から、隣街のトゥラディアへと繋がる街道だ。

 帝国軍からの依頼の様だ。


「小型……楽そうな依頼だね」

「それもですけど! 報酬金の欄、見て下さい!」

「ん? 金貨……八枚!?」

「そうなんです! こんな楽そうな依頼で金貨8枚なんです!」


 金貨一枚は銀貨百枚と同等の価値がある。そして銀貨一枚は銅貨百枚同等の価値。

 他の同じ様な依頼は、銀貨三十枚程度。一目で破格の報酬だと理解出来る。

 明らかにおかしい……絶対何か裏がある。


「誰かに取られる前に、早く受けましょう!」

「待って! おかしいと思わない? 小型の鳥魔獣1匹で金貨8枚なんて」

「確かにおかしいとは思いますけど……きっと太っ腹な軍人さんが、報酬金を多く出してくれたんでしょう!」


 本気で言ってるのかこいつ……。


「エリカさん! こんな美味い依頼他に無いです! だから受けましょう!」

「……街は回らないの?」

「そんな事より金です!」

「…………」


 ……仕方ない、受けるか。こいつの気は変わらなさそうだし。

 危ないと思ったら引き返せばいい。


「……分かった、いいよ」

「やったー! ありがとうございます!」


 そう言って、コルネはその依頼書を引き剥がし、受付へと歩いて行く。

 全く……どうなっても知らないぞ……。


「この依頼をお願いします!」


 コルネは依頼書を受付嬢に渡す。


「畏まりました。ではこちらの同意書に氏名と、拇印をお願いします」


 受付嬢はそう言って同意書、羽根ペンと朱肉を差し出してくる。

 同意書には、依頼での怪我、及びトラブル等には一切の責任を負えない、みたいな内容が書かれていた。


「分かりました!」


 コルネは契約書に名前と、拇印を押す。


「はい、確かに確認しました。依頼達成後は1度こちらへお戻りください。依頼達成の確認や、報酬金の受け渡し、その他諸々の手続きがありますので。こちらは魔獣の位置が示された地図です。では健闘を祈っています」

「はい!」


 俺とコルネはギルドを後にする。


「確か、魔獣の場所は……何処でしたっけ?」


 ……こいつ、依頼内容、ちゃんと読んでないな……。


「はぁ……トナラン街道、街の南の」

「そう、そこです!」


 コルネは歩き出す。


「そっちは西門」

「あ、本当だ」


 ……魔獣と戦う前から、本当に大丈夫か不安になってきた……。

 まぁ、そんな事があって、何とか南門へと辿り着いた。


「この先ですね、トナラン街道。それで、どこら辺に魔獣入るんですか?」

「地図によると、結構歩かないと行けないね。トゥラディア方面だから……」


 俺は地図を見ながら、そう説明する。


「そこの人、少しいいか?」


 その時、背後から誰かに声を掛けられた。

 俺は「ん?」と声の元へと振り返る。

 聞き覚えのある声だな。そう思いながら。

 その人物は軍帽を深く被る、軍人だった。門の警備をしている人だろうか。


「何ですか?」

「…………やっぱり……」


 軍人はそう呟く。

 やっぱりこの声、聞き覚えがある。

 帝都に来るまでよく聞いていた、懐かしい声。

 もしかしてこの人……。

 軍人は帽子を脱ぐ。


「久しぶりだな、エリカ」

「……あ……アル?」


 そう、それは何と、アルベールだった。


「何でここに?」

「配属先さ。俺の配属先は第五陸軍だったんだよ」


 そうか……第五陸軍はグレスティア家の指揮下で、このオラシオンに本部を置いている。

 それにしても凄い偶然だ、まさかアルベールが第5陸軍に居たなんて。


「そっちの子は?」

「こっちはコルネ、同じ学校の友達だよ」

「そうか、俺は、アルベール・ハーシェル。エリカの幼馴染だ」

「はい! よろしくお願いします、アルベールさん!」

「アルと呼んでくれ。そっちの方が呼ばれ慣れている。それでさっきの質問をそのまま返すが、エリカ達は何でここにいるんだ?」

「旅行かな、友達に誘われて」

「そうだったのか」

「おい、ハーシェル、何油を売っている」


 そこにもう一人、男性の軍人がやって来る。


「あ、すみません、ランド伍長」

「ま、良いけどよ。俺達門の警備役は暇だしな。お、そっちの可愛子ちゃん二人は誰だ?」


 ランド伍長と呼ばれた軍人はこちらを見る。


「俺の幼馴染のエリカと、その友人のコルネです」

「ふーん、エリカ……ん、エリカ? おい、ハーシェルもしかしてだが……」

「? ……ああ、はい。あのエリカ・ライトです」


 アルベールは何でそう聞き返されたか分からなかったのか、一瞬言葉を詰まらす。


「ま、まじかよ!? あのエレナ卿のか!?」

「え、ええ」

「って事は、何だ、クロウ君も帰ってきてるのか?」

「クロウの事、知ってるんですか?」

「ああ、スカーレット大将から、散々、『クロウが帰ってくる』って嬉しそうに聞かされてたからな。そん時に、友人も連れて来るって聞いてて、その中にあんたの名前があったから、もしかしたらと思ってね」


 グレイグがそんな事を……。意外な一面もある様だ。


「……まさか、エリカが言っていた友人って……スカーレット大将のご子息!?」

「う、うん……」

「…………」


 アルベールは口を開けて呆けている。


「まぁ、折角来たんだ、ゆっくりしていってくれ。ちなみに俺はウィリー・ランド、伍長だ。何かあったら気軽に言ってくれ。じゃあ、また。ハーシェルも程々にして、仕事に戻れよー、暇だけどなー」


 そう言い残し、ウィリーは去って行く。


「……しかし、驚いたな……エリカがスカーレット大将のご子息と友人だったなんて……」

「同じクラスなんだ。後でアルベールにも紹介するね」

「いや、遠慮しておこう……エリカは今から何処に行くんだ?」

「トナラン街道。ギルドで魔獣討伐を受けて」

「そうか、気を付けろよ。俺もそろそろ持ち場に戻る……じゃあな……」


 アルベールは肩を落として、門前へと戻って行った。


「良かったですね、エリカさん、幼馴染に会えて」

「……うん、そうだね。それじゃあ私達もそろそろ行こうか」

「はい! 雑魚魔獣を倒して報酬金ゲットです!」


 そう簡単に終わると良いが……。

 俺達は歩き出し、目的地へと向かう。


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