四十一話 真相への道
翌日の早朝、俺は事件の手掛かりを求め、再び屋上にやって来た。
一刻も早く、カミラから話を聞きたかったが、流石に早すぎたのか、まだ職員室に来ていなかった。
それ迄に出来る事をしようと思い、屋上に無駄足覚悟でやって来た訳だ。
何せ二年前の事件だ、俺達学生が調べられる範囲で、物証はもう残ってないだろう。
もちろん死体発見場所にも行ってみたが、案の定、何も無かった。
当たり前だ。二年間も血の跡を残す馬鹿な学校は何処にも無い。
憲兵隊の記録には残ってるんだろうが、流石に見せては貰えないだろう。
唯一手掛かりになりそうなのは、この他の鉄柵と比較して、新しい鉄柵だろう。
そう思いながら、その鉄柵に手を置く。
「…………」
事件に関係しているという上で考えるなら、どんな傷が付いたのだろう。
大きな傷なら、憲兵が自殺以外の可能性を考える筈。
自殺ではそんな傷は付かないだろうからな。
考えられるのはほんの些細な傷……何だが、そんな小さな傷で取り替えたりするだろうか。
劣化していたからその気に取り換え――そう言う事か……!
他の劣化した鉄柵も触ってみる。うん、この劣化具合なら、憲兵が事件とは関係無いと断定する訳だ。
後は、この鉄柵が事件後に取り替えたのか、否か。
何にせよ、カミラから話を聞かなければならないな。
「ん?」
その時、校舎への扉が半分開かれ、コルネが顔を覗かせる。
「! エリカさん! 何してるんですか!?」
そう言って慌てて、こちらに走ってくる。
「ど、どうしたの、そんなに慌てて……」
「どうしたもこうもありません! 今、屋上から飛び降りようとしてませんでしたか!?」
あ、なるほど。俺はさっき、柵に手を付いて、身を半分乗り出していたから、その姿を見たコルネが誤解したのか。
「誤解だよ、えっと……」
俺は仕方なく、事件のこと、それを調べていた事を話した。
「そうだったんですか……でも、本当に危ないですから、心配させるような事はしないで下さい!」
「ごめん、ごめん、それでコルネはどうしたの? わざわざ私のところまで来て。何か用があるんだよね?」
「あ、そうです! 私、朝起きたら、エリカさんが居なくて、アッシュさんに聞いたら、職員室に行ったって聞いてですね、行ったわけですよ。でも職員室にも、エリカさんが居なくて、そしたら、カミラ教官に、エリカさんを探してきて欲しいって言われて、校内を探していたんです」
「そこで屋上に私が居た……って事?」
「はい!」
それはコルネに申し訳ない事をしたな……。
と言うか、今ならカミラが職員室に居るのか。
とにかく、呼ばれているようだし、職員室に行くか。
「コルネ、エルを呼んできて。部屋は六階の奥にあるから。扉の名札にエルの名前が書いてあるからすぐ分かると思う。職員室に来るように言って」
「えぇ……? まぁ、エリカさんの頼みですし、分かりました! 呼んできます!」
「ありがとう、頼んだよ」
俺はそう言い残し、職員室へと向かった。
「あ、エリカさん、来てくれたんですね」
職員室の中には、カミラ以外の姿は無かった。
「すみません、待たせてしまって。それで私を探していたようですけど……」
「ふふ、そんなに畏まらなくても良いわ。ただ昨日の礼を言いたくて。それと昨日の、私に出来る事なら何でもするって、その約束も果たせていませんしね」
なんだ、目的は一緒と言う訳か。
なら話が早い。
「あ、何でもって言いましたけど、卑猥な事は駄目ですよ?」
カミラはからかうように、にやにやと俺の顔色を伺う。
そんな訳ないだろ。教え子に何を言ってるんだ……。
「はぁ、分かってますよ。私はカミラ教官にある事を聞きたいだけです」
「ある事?」
「はい……リリー・サンチェスの自殺の件についてです」
「……!」
カミラの表情がぎゅっと引き締まる。
「……エリカさん、誰からその事を?」
「カイル部長からです」
「……何でその事件を調べてるんですか?」
「ヴィクター会長、それからリリーさんを大切に想ってる人達から頼まれました。真実を紐解いて欲しい、と」
「……分かりました、話しましょう」
……随分とあっさりだな……。
「良いんですか?」
「はい……私もそろそろ、腹を括ろうと思いまして」
そうか……カミラも本当は自殺じゃないと気付いていたんだな。
当然と言えば、当然だ。この人の目はそんなに曇っちゃいない。
真実を見極めれない程な……。
「……私は今までリリーさんの事件から目を逸らしていました……私の謹慎の話は知ってますよね?
俺は小さく頷く。
「実はそれ、学校側から言い渡された訳では無いんです。私が自主的に言い出しました……リリーさんの真実と向き合う勇気が無くて……」
まぁ、当然だ。教え子が亡くなったんだ。仕方ない。
「……リリーさんの人柄を知っていれば、自殺とは思えない……でも、そう考えると、こう考えるしか無くなるんです……クラスメイトの誰かが、リリーさんを……殺したと……」
…………まさか。
「知ってるんですか!? リリーさんを殺害した犯人を!」
「…………」
「誰なんですか!? 教えて下さい!!」
俺は勢い余って、カミラのデスクを叩いてしまう。
「……すみません」
「いえ、気にしないでください……私が悪いんです。リリーさんの死に向き合えない私が…………!」
カミラは涙を零す。
「すみません、こんな……」
「良いんです。カミラ教官の気持ちは分かります」
カミラは慌てて涙を拭い、落ち着いて話し続ける。
「……エリカさん、こんな形で、こんな事を頼むのは教官失格かも知れませんが、私の話を聞いて、エリカさん自身の口から、犯人の名前を聞かせて下さい。お願いします」
確かに、生徒にそれを頼むのは筋違いだろう。
でも、カミラは教官の前に、人間。言い出したくない、知りたくない、証明したくない真実がある。
それを紐解くのが、俺達探偵の仕事だ。
「分かりました、聞かせて下さい。カミラ教官が知ってる、話を」
「……エリカさんは事件の概要を何処まで知っていますか?」
「大体は知っています。会長から聞きました」
「やっぱりあの時、ヴィクター君とカイル君、盗み聞きしていたんですね。ドア越しに気配を感じてましたけど、本当に聞いていたなんて……あ、すみません、話が逸れましたね」
カミラは少しだけ、微笑みを取り戻す。
「それなら、大前提の事件の概要は話さなくていいですね」
「ええ、私が聞きたいのは先ず、屋上の鉄柵の件です。あの一部だけ、新しい部分、あれはやはり、事件の後に取り替えられた物なんですか?」
「はい、あれはリリーさんの事件によって、傷付いて、取り替えました。随分と劣化してもいましたし」
「具体的には?」
「凹みです。鉄柵の棒の部分に、片足程度の」
片足……。
「それと、年頃の少女ぐらいの腰幅の凹みが。憲兵の方々は、小さい方の凹みは、リリーさんが柵を乗り越えた時に、足場にした為に出来た傷、もう一つは、自殺する寸前に、怖気付いて、咄嗟に柵にもたれかかった時に出来た傷だと、言っていました」
「その傷は、内側ですか、外側ですか?」
「どちらも外側です」
確かに憲兵隊の言い分は、筋が通ってる。
触ってみて分かったが、あれだけ劣化しているのなら、少し体重を掛ければ、意図も簡単に凹むだろう。
だが、やはり、おかしい。一点だけ、不可解な点が。
どういう状況で、リリーが死んだのか、分かってきた気がする……。
「分かりました……では、何故、カミラ教官は犯人が、同じクラスに居ると?」
「……これも言い難い事なんですけど、残念なことに虐めがあったんです……それも、私が知らないところで…………」
カミラの握り拳に力が入る。
「……知っています。でもそれはリリーさんや周りの人にとって……」
「そうじゃないです……他にもう一人……」
もう一人……そうか、あの時、サラが言いかけたのは、その事だったのか。
「……多分ですけど、していた側は、ユリア先輩ですか?」
「……」
カミラは小さく頷く。
「……それを知ったのは、事件から一年後に、ある生徒から届いた、手紙を呼んだ時です」
「ある生徒?」
「はい、その手紙には、事件の推理が書いてありました。これは、推測ですけど、その生徒も私の様に、自分では言い出せなくて、私に託そうとしたんじゃないかと」
ある生徒、か。大体予想はつく。
そんな面倒くさい事をするのは、リリーを本当に大切に想ってる人物。
まぁ、それは今は良い。どうせ、そいつからも話を聞くんだ。
今聞きたいのは……。
「……誰なんですか、その虐められていた生徒は」
「……すみま……せん……それは……」
……それが、事件の核心にいる人物、という訳か。
「……分かりました。それは直接本人から聞きます」
「え?」
「ユリア先輩です。彼女から、聞き出します」
「……そう、ですか……すみません、勇気が無くて」
「いえ、カミラ教官は充分、勇気を持っています。今だって、前に進もうと、私に事件の事を話してくれているんですから」
教え子の事件と向き合おうとする、先生を誰が卑下出来る?
少なくとも俺には無理だな。
例え、何年逃げ、迷い続けようとも、大事なのは最後は立派であるか、否だ。
「エリカさん……」
「任せて下さい。絶対にカミラ教官が、その生徒の名前を口に出来るように、事件を紐解きます。その時は、証言、してくれますよね?」
「……! ……はい、もちろんです!」
よし、行こう、カミラの為にも。
そう思って、職員室を後にする。
「エリカ、おまたせ」
ドアをがらっと開け、廊下に出ると、そこにはエルの姿があった。
ちゃんと呼んでくれてんだな、コルネ。
「カミラ教官から、話聞けた?」
「うん……」
俺はエルに、話の内容を聞かせた。
「そう……カミラ教官に手紙を送った人……予想はついてるの?」
「うん、まぁね、十中八九、あの人から、かなって」
「私もそう思う……次はその人?」
「……ううん、その人は最後。先ずはユリア先輩から」
「分かった。行こう、エリカ」
俺達は地下の訓練所へと向かった。
居るかは分からないが、行かないよりはマシだ。
訓練所に行くと、昨日の昼間程の人数は居なかったが、数人だけ生徒の姿があった。
その中には、クリスのが居た。
「お、エリカか、どうした、こんな朝早く」
「あの、ユリア先輩って居ますか?」
「はは、あのひねくれた奴が、夏季休暇のこんな朝早く、来るわけないだろ」
「ですよね……呼んでもらう事って出来ますか?」
「あー……」
クリスは頭を掻きながら、返事を言い渋る。
「お願いします、大事な話があるんです」
「……分かった、ちょっと待ってろ」
そう言い残し、クリスは訓練所を出て行った。
十分後、溜息をつきながら戻って来た。
「どうでした?」
「来なかったら、素振り一万回やらせる、と言ったら、渋々、来ると言っていた」
一万回……確かに嫌だな、それは……。
「恐らくは、来るまで三十分は掛かるだろうな。すまないが、待っていてくれ。これはどうしようもない」
「あ、あはは、分かりました……」
それから三十分後、クリスが予言した通りピッタリに、ユリアが来た。
「何よ、急に呼び出して」
ユリアはいかにも不機嫌そうな顔で、舌打ちをする。
「ユリア先輩、話があります。少しだけ、お時間を頂けませんか?」
「は? あんた誰……って、ああ、あの親の七光りの姉ね。まぁ、あんたもそうだなんだろうけどさ」
一々、鼻につく奴だな……。
こりゃ、クラスでも相当嫌われてるだろう。
「本当、少しだけで良いんです。お願いします」
「ふーん、まぁ良いわ。聞いてあげる。暇潰しにね」
「じゃあ、ここでは人目がありますから、場所を変えましょう」
ユリアはすんなりと了承し、場所を移す。
俺とエル、そしてユリアは、適当にプールが人が居なかったので、そこに移動した。
「で、話って何よ」
「単刀直入に言います。ユリア先輩って、クラスで誰かを虐めていましたよね?」
「はぁ? いきなり何? と言うか、何で私がそんな話をしなくちゃいけないわけ?」
やはり、断るか。だったら……。
「断るんですか? じゃあ、これ。校内にばらまいちゃいますね」
そう言って、俺は一枚の写真をユリアに渡す。
「何よこ――っ! あんた!」
それは、ユリアが剣道部の部員を”訓練”とかこつけて、痛めつけている写真だった。
昨日、サラから話を聞いた後、もしかしたら、クラスだけでなく、部活の方でも虐めを行っているんじゃないかと睨み、ユリアから話を聞く為に、集めた証拠だ。
実を言うと、カミラの話を聞く前から、ユリアに話を聞くつもりでいた。
本当に、サラが言っていた事だけしかやってなかったのか、裏が取りたかったからな。
「剣道部の皆さん、私がユリア先輩の横行を止めてあげるって言ったら、すんなり渡してくれました。前々から教官方に訴える腹積もりでいたようです。よっぽど、煙たがられているんですね」
これは余談だが、ユリアは、自分に逆らえない平民の生徒だけを徹底的に狙い、虐めていたらしい。
それもやっぱり、女子部員だけを。
「ぐっ……あんた……!」
ユリアはその写真を破り捨てようとする。
「破ったって無駄ですよ。他にも何枚もあるんですから」
「ちっ……分かったわよ。虐めてたわよ、あの憎たらしいリリーをね」
「それだけじゃないですよね?」
「……ええ! そうよ! 他にも何人もね!」
「名前を挙げて下さい」
「は?」
「早く!」
「……ちっ……」
ユリアは一人一人、名前を挙げていく。
聞き慣れない名前が、続く中……。
「それだけですか?」
「違うわよ、後もう一人、憎たらしくて、本命がね」
ユリアはくすくすと笑う。
本当、ひん曲がってる奴だ。
「それはね―――――よ」
「……そうですか」
……そうか、そう繋がるのか……。
「エリカ……もしかして、その人が……」
「うん……残念だけど……」
俺は一瞬、この事件の真相を話すかどうか迷ってしまった。
こんな悲しい事件ってあるのか……?
あいつにとってこんな……。
……でも、だからこそ、明かさなくちゃいけない。
この事件は、リリーが自殺、その結論だけは避けなくちゃいけない。
「ねぇ、もう話したからいいでしょ? ってか、あいつが前に同じ様な事聞きに来たんだけど、何でいつも一緒にいるあんた達が知らないわけ? 別にいいけど私には関係ないし。私もう帰るわね」
ユリアはプールを出て行こうとする。
いや、まだ帰っては困る。
この件以外に、話しておきたいことがある。
「……ユリア先輩、これだけは約束して下さい。もうこんな事はしないと」
「は? なんで――」
「次、このような話を耳にしたら、今度こそ、この写真をばら撒きます。良いですよね? 貴方は私の様に弱みを握ったり、暴行したり、脅して口封じをしていたんですから」
「……因果報応ってやつ、大人しく、約束して」
「ぐっ……ちっ、分かったわよ! 元から、そんなつまらない事、もう辞めるつもりだったし! ふん!」
ユリアは今度こそ、プールを出て行く。
「うちの妹をもう虐めないで、後輩として向き合ってあげて下さいね」
「ちっ、うっさいわね! 分かってるわよ!」
そう捨て台詞を吐いて。
「…………」
「…………」
少しの沈黙が流れる。
「エリカ、やっぱり伝えるの?」
「うん……それが、依頼だから……」
「……エリカ」
エルが俺の手を握ってくる。
「怖い……ね、でも、私も手伝う」
「エル……うん、ありがとう…………さ、もう一人。踏み出せずにいる、人を呼びに行こう?」
「うん…………!」
俺達は部室へと行き、ある人物を待つ事にした。
一時間ぐらい待った所で、その人物が現れた。
「お前達、早速集まっているな! さぁ、今日はどんな事をしようか!」
カイルだ。
「何だ、お前達、暗い顔をして。何かあったのか?」
「……部長、話があります。リリーさんの事件の真相についてです」
「……は、真相? 何の話だ? リリーは自殺だろう?」
あくまでもとぼけるつもりか。
だったら、言葉を……想いをぶつけるだけだ。
「部長は……カイル部長はこのままで良いんですか!? このまま、リリーさんが自殺したって、会長達に思われてても!? それで納得出来るですか!?」
「そうか、ヴィクターの入れ知恵か。あいつはまだリリーが自殺じゃないと、信じているからな」
「部長もじゃないですか!? 部長だって、自分なりに調べて、自分なりに推理して、その推理を手紙に書き起こして、カミラ教官に送った! 本当に自殺じゃないと信じてるのは、部長の方です!!!」
「お、俺は信じてなんか……」
「そうやって何時までも目を逸らし続けるんですか!?」
そう叫んだ瞬間、開けていた窓から、風が強く吹き入る。
「……怖いのは分かります。怖いから逃げる、それは悪い事ではありません。でも、向き合わないといけない物だってあるんです。部長はこの事件に真正面から、向き合わないといけない、そう私は思います」
「…………分かってる……そんな事、とっくに分かっている! でも無理なんだ、俺には! 俺一人では!!!!」
「………」
「……真実を話そうとすると、震えが止まらなくなる。話したら、そいつを傷付けてしまうんじゃないかって……不安で、怖くて……」
カイルは俯く。
やっと、カイルの本音が聞けた。
確かに、怖いだろうな。俺達では計り知れないほどの恐怖だ。
でも……。
「部長、私達が手伝う。部長が一人じゃ怖いって言うなら、私達が支える」
「……エル……」
「はい、私達が支えます。部長を」
「……エリカまで……お前達、何でそこまで……」
何で? そんなの決まっている。それは……。
「だって私達、同じ部の部員ですよね? その部員が困ってるのなら、手を差し伸べるのは当然ですよ」
「ん、当然」
「だから、好きなだけ、私達を頼って下さい。私達で良ければですけど、ね」
「お前達……………………ふ、俺は何を迷っていたんだろうな……俺はもう、一人じゃないんだ……何で、そんな小さな事を忘れていたんだ…………分かった、お前達を全力で頼らせてもらう」
全力で頼る……おかしな話だ。
人が人に頼るのは当然の話だろうに。
「エル……エリカ……今日中に、俺はこの事件に決着をつける。手伝ってくれるか?」
「もちろんです。行きましょう、部長」
「ああ!」
俺達3人は、この悲しき事件を紐解こうと、決意を固めた。
……………………そして、その日の午後5時、俺達はこの事件に絡んでいる人物を屋上へと集めた。
だが、全員では無い。まだ一人来てない人がいる。それがこの事件の犯人。
この場にいない人物が犯人……その様な内容の発言を一人が口にする。
「はい、そうです」
俺は小さく、そう呟き、こくんと頷く。
「…………」
一人が息を漏らす。
暗い空気が屋上を包み込む。
この場にいる全員がそわそわする。
そんな時間が流れ、遂に、その人が姿を現す。
屋上の扉が出す、ギギ……と言う音と共に。
その姿を見た一人は、顔を逸らす。
「……来ましたね、準備は良いですか?」
俺がそう聞くと、その人は落ち着いて、いつでも、と短く口を開く。
「……では、今からこの事件を紐解く。しっかりと聞いて欲しい」
カイルの言葉に、その場にいた全員がしっかりと頷く。
「……では、先ず、事件の概要からだ」
カイルは事件の真相を話し始める。
二年振りに明かされようとする、悲しい事件の真相を。




