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探偵の異世界生活  作者: わふ
第一部 学校生活編
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三十八話 学校案内 二

 

「この学校、地下もあるんですねー」


 昇降口前の階段を下りて、地下にやって来た。


「地下は大まかに、技術部の部室や訓練所、それに室内プールなんかも――」

「え!? プールあるんですか!? 何処ですか、早く案内してください!」


 コルネは俺の腕をぐいぐいと引っ張る。


「早く、早く! 何処ですか!?」

「分かった、分かったから落ち着いて!」


 案内する側の俺が、コルネに引きずられる形でプールに続く、両開き扉前まで来た。


「入りましょう! ね、エリカさん!」


 コルネはその扉を勢い良く開け、中にずかずかと入って行く。


「え、ちょっと待ってコルネ! ……はぁ……」

「エリカ、溜息ばっかり」


 そりゃあ溜息もつきたくなるだろ……。


「はぁ……仕方ないなぁ……」


 コルネの後を追って、俺もプールに入って行く。


「わあー、凄いです! 広いです!」


 中では水泳部が、騒がしく活動をしていた。


「向こうの学校ではプール無かったの?」

「あるにはあったんですけど、いかんせんおんぼろで、浄水器が壊れて使えなかったんですよぉ……折角楽しみにしていたのに残念でしたよ……」


 だからあのはしゃぎ様か……待てよ、まさかこいつ……。


「エリカさん! 泳ぎましょう!」


 やっぱり……言い出すと思った。


「いや、今は水泳部が使ってるし……」

「あれ、エリカにS組のノスタウェじゃないか。どうしたの?」


 そこに水着を着た同じクラスのセリナがやって来た。

 そう言えばこいつ、水泳部だったな。


「あ、セリナ、調子はどう?」

「上々だよ。さっきタイムが零・五秒縮んだんだ。それでエリカ達は何でここに?」

「カミラ教官に編入生の学校案内を任されて、それでね」

「へぇ、そうなんだ。そっちの子が編入生?」


 セリナはコルネを指さして聞いてきた。


「うん、コルネ・アゼリアだよ。王国のギムレー魔法学校からの編入生で、二学期から同じクラスになるんだ」

「あのギムレー魔法学校から!? 凄いね……あ、すまない、セリナ・レニエラスだ、よろしく頼む」

「はい! 改めて、コルネ・アゼリアです! こちらこそよろしくお願いします!」


 コルネは丁寧にお辞儀をする。


「……何か私の時と態度が違う……」

「えー? そうですかぁー? 別に一緒だと思いますけどー?」


 コルネは棒読みで、すっとぼけるように言った。

 大丈夫だ、エル、お前は間違ってない。誰が見ても一目瞭然で違いが分かる。


「ふふ……面白い奴だ……どうかな、コルネ、ちょっとだけでも良いから、一緒に泳いでみないか?」

「え! 良いんですか!?」

「さっき、泳ぎたいって言ってただろう? それにもっと部員が欲しいって、部長も嘆いていたしね。部活体験って形で、どうかな? もちろん水着は水泳部の予備の物を貸すよ」

「はい、是非!」

「よし、じゃあついてきてくれ」


 セリナは更衣室の方へと歩いて行き、その後をコルネが続こうとする。


「頑張ってきてね、コルネ」


 だが、俺がそう言った瞬間、立ち止まり、こちらを振り返った。


「え、エリカさんは来ないんですか!?」

「私はいいよ」

「ええ!? 何でですか!?」

「泳げないから」

「じゃあ私が教えますよ! だから! どうか一緒に――わぁ!?」


 そう言いながら迫ってくるコルネをエルは更衣室の方向へと押し退ける。


「ちょ、ちょっと押さないでください!」

「泳ぐんでしょ、だったら早く行こう。エリカ、ルナ預かってて」


 俺はエルからルナを受け取る。


「泳がなくても良いです! だから一緒に更衣室に――」


 やはりそれが目的か……。油断も隙もありゃしない。

 その願いは虚しく散り、エルに押されながら更衣室へと消えて行った。


「はぁ……」


 今日はやけに溜息が出る日だ。

 特にコルネの案内を任されてから。


『ニャー?』


 胸元に抱いているルナが、俺の顔を見上げてくる。

 心配してくれているのだろうか。


「ふふ、ごめんね、溜息ばっかりで」


 そう言って、ルナの頭を撫でてやる。


『ニャー……』


 ルナは気持ち良さそうな顔をして、喉鳴らしをする。

 久々に落ち着きを取り戻した様な気がする。

 だがそんな静寂な時間もつかの間。


『はっ! 何ですか、その貧相な体は! そんなんでエリカさんの傍にいたんですか、はっきり言って滑稽ですよ! 滑稽!』

『うるさい、早く着替える』

『ちょっ! 変なところ触らないで下さい!』

『お、落ち着け、二人共!』


 その様な会話が、更衣室から聞こえてきた。

 更衣室で何をやってるんだ、あいつらは……。

 やっぱり行かなくて良かった、そう思わせてくれる。


「エリカさん! どうですか、似合ってますか!?」


 暫くして、水着に着替えた笑顔のコルネと、疲れ切っている様子のエルが、セリナと共に戻って来た。


「うん、似合ってるよ」

「フヒヒ……そうでしょ! そうでしょ! もっと褒めてくれても良いんですよ?」

「……気持ち悪い笑い方……」

「何ですと!?」

「何?」


 コルネとエルは睨み合う。


「二人共、ちょっとは落ち着いてくれ……はぁ……」


 セリナもエルと同様に、疲れ切っている様子だな……。


「二人共、セリナが困ってるから、その辺にしておいて。それにそんなにいがみ合ってるのなら、泳ぎで白黒つけたら?」

「良いでしょう! 勝負です、ベニヤ板!」


 ベ、ベニヤ板……。


「む……分かった、その勝負、受けて立つ」


 二人はプールのレーン前に歩いて行く。


「ごめんね、セリナ。大変だったよね?」

「いや、気にしないでくれ……」


 覇気の抜けた声でそう答え、セリナは二人の後を追う。

 さて、二人が泳いでいる間、どうしようか。

 そう言えばもうそろそろ昼だったな。

 購買にでも行って、昼飯でも買ってくるか。

 そう思い、プールを後にして一階に戻る。

 そして購買でエルとコルネの分のサンドイッチと、ルナの為に牛乳を買って、地下に戻る。

 プール前に着き、中に入ろうとした時、訓練所の方から一人の男子生徒が出てきて、そのまま俺の横を通って一階へと上がって行った。

 随分急いでいたようだが、何かあったんだろうか。

 確か訓練所は剣道部が使っている筈だ。

 気になって、ちょっと行ってみることにした。


「おい、今のはやりすぎだ!」


 プール前を通り過ぎ、訓練所中を開いている扉から覗くと、黒髪短髪の男子生徒が、金髪サイドテールの女子生徒に怒鳴っていた。

 確かあの男子生徒は、剣道部部長のクリス・リーアスだったか。

 クリスの背後には右腕を押さえて、倒れ込んでいる女子生徒の姿があった。

 倒れ込んでいる女子生徒の周りには、剣道部の部員達が数人集まっていた。

 試合中にあの倒れ込んでいる女子生徒を金髪の女子生徒が怪我をさせてしまった、と言ったところか。


「えぇー? 普通に戦っただけなんだけど? 大体、あの程度の攻撃を防げないそいつが悪いんじゃないのかしらー?」


 金髪の女子生徒は持っている木刀を見ながら、挑発的な口調で反論する。


「だとしてもやりすぎだ! ただの模擬戦だぞ!?」

「そうよ! 可哀想よ!」

「それにお前が意図的に怪我を負わせてるんだろ!?」


 クリスと金髪の女子生徒の周りにいる生徒達が、野次を飛ばす。


「可哀想? 模擬戦だとしても、勝負は勝負でしょ? それに私が意図的にやったって証拠はあるの? 無いわよね。言い掛りはやめてくれる?」

「だったらもう少し、申し訳ないと言う気持ちは無いのか!? さっきだってこの子が倒れても、見ぬ気もせず、突っ立っていたじゃないか!」

「申し訳ないって思ってるわよ。私が強すぎて、ね?」


 うわぁ……あの金髪の女子生徒、古典的な嫌な奴だな……。


「イアン教官、こっちです!」


 そう言いながらさっき一階に上がって行った男子生徒が、イアンを連れて訓練所の中に入って行く。


「おい、大丈夫か!?」


 イアンが女子生徒の腕を触る。


「痛っ!?」

「……こりゃ、折れてるな……保健室へ運ぶ、誰か手伝ってくれ!」

「手伝います」


 俺は訓練所に入り、女子生徒に駆け寄る。


「俺も手伝います」


 クリスもそう言い、3人でゆっくりと女子生徒を立たせる。

 それから慎重に女子生徒を保健室室まで運んだ。

 イアンの言った通り、女子生徒の右腕は折れていた。

 回復魔法では治せず、ひとまず応急処置をして、病院に行くこととなった。


「ほら、診断書だ。本当に一人で大丈夫か?」

「はい……大丈夫です。ありがとうございます」


 女子生徒は頭を下げ、保健室を出て行った。

 病院にはイアンがついて行こうと言う話になったが、女子生徒が断り、一人で病院に向かった。


「ありがとう、手伝ってくれて」


 女子生徒が出て行ったのを見計らって、クリスが俺に礼を言ってきた。


「いえ、気にしないで下さい。偶然通り掛かっただけなので」

「確か君は、シフィーの姉のエリカ・ライトだったね」

「覚えててくれたんですか?」

「ああ、何度か彼女を迎えに来ていたからな」

「それでリーアス、またあいつの仕業か?」


 イアンはクリスにそう聞いた。


「はい、いつもの様に模擬戦をやっていたんですが、彼女が思いっきり木刀を……」

「……そうか……ったく、何回やりゃ、気が済むんだ……」


 イアンはそう言って、頭を搔く。

 二人の口振りからして、あの金髪の女子生徒は何回もこういう事を起こしているのだろう。


「あの、過去にもこういう事が?」

「ああ、それも決まって彼女、ユリア・ラスマンが起こしている」


 ラスマン……聞いた事あるな。確か……。


「もしかして伯爵家の?」

「ああ、そうだ。そのラスマン家の娘だ。家柄良いが、いかんせん性格がな……」


 イアンは溜息をつく。


「剣道部の奴らの為にも何とかしてやりたいが、全て模擬戦中に起こった事だからな……」


 模擬戦中に怪我を負わせても、それは試合中に起こった不慮の事故、そう言ってつっぱれると言う事か。

 なるほど、巧妙なやり口だ。

 意図的にやったと言う証拠さえ見つかれば、崩せれるんだが……。


「ま、何にせよ、リーアス、お前も剣道部にいる以上、奴に標的にされる可能性がある。他の部員の心配も良いが、気を付けろよ」

「ありがとうございます、イアン教官。貴方の様な人が顧問でいつも助かってます」

「やめてくれ、そう言うのは。俺はやりたい事をやってるだけだ。ほら、早く行け、部員達が待ってんだろ?」

「はい、ではまた」


 クリスはお辞儀をして、保健室を出て行った。


「イアン教官って生徒から信頼されているんですね。コルネも優しそうな人って言ってましたよ」

「ったく、お前まで……あの編入生の案内があるだろ。こんな所で油売ってないで早く行け」


 イアンは顔を背けて、しっしっと手を振る。


「はい、また来ます」


 俺は保健室を後にして、今度こそプールへと向かう。

 それにしてもユリア・ラスマンか……シフィーの為にもなんとかしてやりたいな……。


「あー! エリカさん! どこ言ってたんですか!? 折角こよ私がこのベニヤ板に勝ったのに、ちゃんと見ていて下さいよ!」


 俺が地下に戻ると、プールの扉前に制服に身を包んでいた、エルとコルネがいた。


「嘘、私が勝った」

「はぁ? あんな僅差で勝った気にならないで下さい!」


 また言い合っている……。取り敢えずコルネはエルに負けたのか。


「あはは……お昼ご飯買ってきたから、皆で食べよ?」

「本当ですか!? ありがとうございます! でも何処で食べますか?」


 何処で食べるか……ま、部室で良いだろ。


「大丈夫、ちゃんと考えてあるから。ついてきて」

「はい!」


 俺達は一階に戻り、部室に行く事にした。


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