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探偵の異世界生活  作者: わふ
第一部 学校生活編
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三十四話 ヴィクターの頼み

 事が動き出したのは翌日の事だった。

 その日の朝九時、いきなり部屋にエルが尋ねて来て「エリカ、ついてきて」と言われ、そのまま押し切られる形で部屋を連れ出された。

 そうして連れて行かれた場所は学校の屋上だった。


「屋上……?」

「いいからついてきて」


 エルはそう言って屋上へと続く階段を上って行く。

 こいつ、カイルの性格ががうつったのか?

 そんなくだらない事を思いながら小さい背中を追う。

 階段を上り切り、鉄製のドアを開けて屋上に出る。


「……悪いな、急に呼び出してしまって」


 そこに居たのはヴィクターだった。


「会長? どうしてここに?」

「……ノスタウェから話を聞いていないのか?」

「え、はい。何も聞かされずに連れて来られまして……」


 ヴィクターは頭を押さえる。


「おい、ノスタウェ。せめて事情は話しておいてくれ」

「ごめん、会長。早く話の続きが聞きたかったから」

「……まぁいい、こうなったら俺が説明する」


 ヴィクターは咳払いをして話し始めた。


「ライト、ノスタウェ。お前達を呼び出したのは頼みがあったからだ」

「頼みですか?」

「ああ。それは……お前達に2年前の事件……リリー・サンチェスの事件に隠された真実を紐解いて、見つけ出して欲しい」


 ……何? 二年前の事件に隠された真実だと?


「どういう事なんですか? あれは自殺のはずじゃあ……」

「憲兵隊はそう決定づけた。でも俺はそうは思えないんだ。それに少し引っかかることもある」


 思えない、引っかかる、か……。

 とりあえず話ぐらいは聞いてみるか。


「詳しく聞かせてください」

「ああ。まず自殺だとは思えない、その理由は彼女はそんな事をする奴じゃ無かった。いつも明るくて、笑顔が絶えないそんな奴だった。自殺する前の日もだ」

「……じゃあ引っかかるという事は?」

「事件の概要は知っているか?」

「はい、ある程度は」

「分かった。それでこれは死体の第一発見者と憲兵が話していたのを聞いた話なんだが、どうやら死体はうつ伏せじゃなく、仰向けの状態で発見されたらしい」

「確かに引っかかりますね……うつ伏せじゃなく、仰向けで倒れているのなら、地面じゃなく、今私達が立っている方を向いて、飛び降りたって事になる。態々そんな事をする必要が無い、そう言いたいんですよね?」

「理解が早くて助かる。だから、お前達に調べて欲しいんだ、この事件を」


 まぁ確かに、仰向けで倒れていた事は気になる。でもそれは落下後に体制を変えた可能性もあるが。

 でも何で、ヴィクターは俺達にそれを頼むんだ?

 そこまで分かっているなら、なんで自分で調べないんだ。


「何で私達にそれを頼むんですか?」

「それは、昨日カイルがお前達に事件の事を話したからだ。あいつは滅多に事件の話をしない。それも事件の話をしたら怒る奴がだ。そんな奴が事件の当事者でも無いお前達話したと言う事は、きっとお前達に事件を解き明かして欲しい、そう思っている。リリーが作ろうとした探偵部を受け継ぐお前達に。だから……」


 ヴィクターはそう言って、地面に膝を着き、頭を下げる。


「頼む……あいつの、カイルの……俺の願いを聞いてくれ」


 ……参ったな。ここまでされたら……。

 断れる訳無いだろ。


「分かりました、その依頼、私達探偵部が引き受けます。だから、立ってください」


 俺は手を差し伸べる。


「ん、私達が絶対に解く」

「ライト、ノスタウェ……すまん、恩に着る」


 ヴィクターは俺の手を取って、立ち上がる。


「では早速何ですけど、会長が知る事件の情報を教えて下さい」

「分かった。死体は七月十八日の朝六時、昇降口前にて第一発見者にて発見。憲兵の調べによるとこの屋上から柵を越え、飛び降りた。死因は頭部の損傷、即死だったらしい。死体の硬直から見て、死亡時刻は前日の夕方から夜にかけてだと言っていた」

「……やけに詳しいですね……会長、もしかして……」

「ああ、さっき言っていた、憲兵と第一発見者の話を盗み聞いた。一階の空き教室で話していたのをドア越しでカイルと一緒にな」


 ヴィクターは申し訳なく思う素振りも見せずそう言った。

 うちの生徒会長は中々素行が悪いようで。


「他に聞きたい事はあるか?」

「じゃあその第一発見者は誰なんですか?」

「ああ、それは今お前の担任教官のカミラ教官だ」

「え? カミラ教官が?」

「そうだ。カミラ教官は当時俺達の担任教官でな、それで事件の責任を取って今年まで謹慎処分だったんだ」


 そうだったのか……。

 そうなると、話を聞くのは難しそうな……。カミラは俺達生徒がそういう事に首を突っ込むんで欲しく無いだろうしなぁ。


「じゃあ、Bクラスの人から話を聞く事って出来ますか? 当時のリリーさんの人間関係等を聞きたいんですが……」

「ああ、任せておけ。後でBクラスの奴と会わせてやる。一応俺からも、聞いておくか?」

「そうですね……一人でも多く話が聞きたいですし……なら、会長はリリーさんが虐められていたと言う話は聞いた事はありますか?」

「聞いた事は無いな。あ、いや、いじめという訳では無いが、クラスの女子数人から、変ないちゃもんを付けられていたのは見た事があるな」

「いちゃもん?」

「ああ……『あまり良い気になるな』とか何とか……だがあいつは、それを気にせずに突っ張っていたな。自殺する程の理由じゃ無いだろう」


 良い気になるな……か。


「その理由は分かりますか?」

「いや、そこまでは分からないな」

「分かりました。あ、後、死体が発見された正確な位置って分かりますか?」

「ああ、それなら……」


 ヴィクターはそう言って屋上の柵へと向かう。

 俺とエルもそれについて行く。


「ほら、あそこだ」


 ヴィクターは、学校の門から見て昇降口の直ぐ右手の場所を指さした。


「その日は一日中、そこに憲兵が居たからな。間違いない」

「なら、丁度屋上のこの位置から飛び降りたって事になりますね」

「……ああ、そうなるな」


 屋上の鉄製の柵は簡単にまたぎ越えれる高さだった。

 だとしたら、特に苦労もせず飛び降りれた、という事になるな。


「悪い、そろそろ、生徒会の集会の時間だ。それじゃあ後で生徒会に来てくれ。そこでBクラスの奴に合わせてやる」


 ヴィクターはそう言って、校内へと戻って行った。

 ……さて、先ずは何から始めるか……。

 取り敢えず話を聞かないと行けないのは、Bクラスの人を覗いて3人。

 第一発見者のカミラ、それとリリー・サンチェスと同じ班だった、フィオナとカイルだ。

 カイルは後回しで良いだろう。恐らく知っている情報は殆どヴィクターと一緒だろうからな。

 カミラは……難しいかもしれない。

 ……うん、最初はフィオナが良いだろう。

 だが、フィオナに話を聞きに行く前に、やっておきたい事があった。


「エル、ちょっとお願いしてもいい?」

「ん、良いよ」

「じゃあ、柵をまたいで。そこに立って」

「ん」


 エルはそう言って怖がる様子も無く、柵を超えてギリギリ落ちない所に立つ。

 俺は当時の再現をしたかった。もちろん飛び降りるふりをだ。


「ごめんね、怖くない?」

「大丈夫、これも事件を解くのに必要なんでしょ? だったら部長や会長の為に頑張る」


 エル、そこまでこの事件を……。

 っと、そんな事を考えている場合じゃない。エルの為に早く終わらせなくては。

 ぱっと見る限り、不自然な所は無いな。

 その位置からなら、間違い無くヴィクターが言っていた場所に落ちる。


「ありがとう、もう戻って来てもいいよ」

「分かった」


 エルは柵に手を着いて戻って来ようとする。


「ん?」

「どうしたの、エリカ?」

「いや、そこのエルが手を着いてる柵、他のと新しいなって思って」

「……確かに……もしかしたら事件のせいで壊れたから変えたとか?」


 エルはそう言いながら柵を跨ぐ。


「うーん、そうなると事故って言う可能性も出てくるね。でもこの柵がその事件より前に取り替えられた可能性もあるから、まだこの時点では何とも……取り敢えず屋上で調べられるのはこれぐらいだし、フィオナ先輩に会いに行こうか」

「そっか、フィオナ先輩も部長達と同じクラスで同じ班だから、何か知ってるかもしれないね」

「うん。フィオナ先輩この時間、部室に居るかな……」

「居るよ。エリカに会う前に、ルナを預けてきたから」


 そう言えば、今日はルナを抱いて無いなと思ったら、フィオナに預けていたのか。


「じゃあ話を聞きに行くついでに、ルナを返してもらわないとね」

「ん、行こ」


 俺はエルに手を引かれ、フォナオに話を聞く為に新聞部の部室へと向かった。



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