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探偵の異世界生活  作者: わふ
第一部 学校生活編
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三十二話 七年前の記事

 

 帝都に帰ってきてから数日が経った。

 帰って次の日からアリッサや、クロウは部活に顔を出し、シフィーは早速訓練を兼ねて、雷帝ステラが引き受けた任務を手伝う形で東方の国、メルディアシエへと向かった。

 メルディアシエは帝国と国教に挟まれた、海に浮かぶ小さな国だ。

 帝国との関係は良好で、良く交易が行われている。

 メルディアシエは武具生産が発展している国であちら側の交易の品も武具が主流になっている。

 刀や、アッシュが使う双刃薙刀が帝国に伝わったのも、メルディアシエかららしい。

 それとメルディアシエは帝国に限らず、基本どこの国とも関係は良好らしい。

 シフィーは八月下旬、つまり夏季休暇が終わる頃まで帰ってこないとの事。

 アッシュも帰郷のため、帝都を離れている。

 本当は帰るつもりは無かったらしい。

しかし、帰ってこいと手紙でしつこく言われたらしく、渋々今日の朝、寮を出て行った。

 だが、こちらはシフィーと違って数日で戻ってくるらしい。

 アッシュの実家の場所は詳しく分からないが、帝国西部の小さな街だと言っていた。

 そして俺はと言うと、調べ物をするために、スニエル地区の帝都図書館へとやって来ていた。


「すみません、帝都新聞社の過去の記事を見たいんですけど……」


 俺は図書館の受付カウンターに行き、男性受付員にそう言った。

 この世界でも、図書館では新聞記事が保管してあると聞き、それ目当てで図書館に来た。

 ラグナロクの使徒の手掛かりを得ようと、過去の出来事を調べたかった。

 もしかしたら過去の出来事がかんけいしているかもしれないと思い、比較的調べやすい過去の新聞記事を漁ることにした。

 本当は憲兵隊のネハルム辺りに協力してもらって調べたいが、流石に協力してくれないだろう。

 ちなみに帝都の図書館では、帝都新聞社の記事の他に、帝国各地の新聞社の記事を扱っている。


「何年頃の記事をご希望ですか?」

「そうですね……では、ここ十年程の記事をお願いします」

「分かりました、少々お待ちください」


 受付員はそう言うと、カウンター裏の棚の影へと姿を消す。

 数十秒後、受付員が国語辞典程の厚さがあるファイルを3冊を抱えて戻って来た。


「お待たせしました。十年分の帝都新聞社の記事です。図書館外への持ち出しは禁止ですので、お帰りになられる際は必ず返却してください」

「分かりました、ありがとうございます」


 俺はずしりと重い新聞記事のファイルを持ち上げ、図書館の奥へと進む。

 ずらりと並ぶ本棚の間の通路を歩き、やっとの思いで机と椅子が設備されている開けた場所に出る。

 空いている席に座り、重かったと心の中で呟いて溜息をつく。

 ……よし、早速始めよう。そう思い、ファイルを開く。

 ファイルを開くと、大きく書かれた『ユスティアリポート』と言う文字が目に入る。

 帝都新聞社が発行するユスティアリポートには、帝国で起きた大体の出来事が記事にされているので、この新聞社の記事を選んだ。

 一枚目の新聞記事には、ラグナロクの使徒についての事が載っていた。

 最近の記事か。ここら辺には用はないな。

 俺は次々と記事をめくっていく。ぱさりぱさりと音を立てて。それから数十分めくってめくって、めくり続けた。


「……これって……」


 一冊目の半分くらい進んだ所で、手が止まる。

 その新聞記事の見出しにはこう書かれていた。


「ログレス士官学校で自殺事件発生……」


 それは二年前、丁度この時期ぐらいの記事だった。


「七月八日、夕方、士官学校の教官が一年生の女子生徒の遺体を正門近くで発見……憲兵隊は状況から見て、校舎屋上からの飛び降り自殺と判断した……」


 二年前と言ったら、今の三年が一年の頃か。カイル達はこの事件を知っているのだろうか。

 まぁ、何にせよこの事件は関係ないだろう。次に行こう。

 続けてファイルをめくっていき、一冊目を読み終える。

 一冊目は約三年前ぐらいまでがまとめられていた。

 そのファイルの中で、気になったのは士官学校での記事だけだった。

 今回の事件に関係ありそうな記事もあったが、それは既に知っているインタクアスの件くらいだ。

 本当に彼女は表舞台に立つことが無かったんだな……。


「はぁ……」


 溜息をついていても仕方ない、次のファイルに行こう。

 そう思って二冊目を読み進める。

 しかし、このファイルは全くと言ってもいい程、気になる出来事、目新しい出来事は無かった。

 だが、またも関係ない記事で目が止まった。

 それは、ブラウド家のあの事件について書かれた記事だ。

 二冊目のファイルには約六年前までの記事がまとめてあり、後ろ辺りにブラウド家の事件についての記事があった。

 その記事にはアリッサの言っていた通り、ネハルムがブラウド家の密輸を暴いた事や、スレイプウェル家が告発した事が書かれていた。

 まぁ知っている情報ばかりだったので、どうということはないが、何故かじっくり読んでしまった。

 多分俺はこの事件についてもっと詳しく知りたいと思っているのだろう。

 取り敢えず、三冊目を読もう。そう思って、最後のファイルを開き、数ページめくったところで再び手を止める。

 その記事の見出しには『エメヤ村の悲劇』と書かれていた。

 エメヤ村……シフィーがイーハ村に来る前に住んでいた村だ。

 記事の本文にはルドルファス……シフィーの両親の事、他にも『生存者は八歳の少女』等と書かれていた。

 やはり新聞記事にもなっていたか。

 そんな事を思いながらページをめくろうとしたが、またまた手が止まった。


「え……」


 エメヤ村の事が書かれた記事には、他にもある事件が載っていた。


「ラリデルク村の悲劇……」


 エメヤ村の悲劇が起きた七年前の十月二七日、その同日にもう一つ村が原因不明の爆発で壊滅した、と書いてある……。

 ラリデルク村の生き残りは、当時九歳の少年のみ。そして一四歳の少年と十歳の少女が行方不明……。

 それと生き残りの少年はある孤児院に預けられたとも書いてあった。

 こっちの事件でもシフィーと同じ歳ぐらいの子が生き残りか……。

 それにこれは……。

 ラリデルク村の事件の本文の下に、その村の簡易的な位置が示されている地図的なものが載っていた。

 その地図によるとラリデルク村とエメヤ村の場所はそう遠くない。

 それに二つの村は、イーハ村とも結構近かった。

 恐らく動力車で行けば、一時間も掛からない場所にあった。

 エメヤ村は南、ラリデルク村は北、という風にイーハ村を挟む形で点在していた。

 そんな近くで大事件が二つも起こっていたなんて……。

 俺はその記事を読み終わってもページをめくれずにいた。

 それからどれくらいその記事を見ていたかは分からない。

 暫くしてからはっと我に返り、続きを読み進める。

 だが他にめぼしい記事は見当たらず、結局ラグナロクの使徒に関係する情報は手に入らないまま、ファイルを読み終えた。


「もう昼か……」


 顔を上げ、壁掛け時計を見ると十二時を回っていた。

 朝九時にここに来たはずなのに、もう三時間も経ったのかと驚いた。

 そろそろ寮に戻ろうと思い、ファイルを返しに行くことにし、椅子から腰を上げてそのまま受付へと向かう。

 受付へと向かうと、誰かが受付員と話していた。

 取り込み中だろうか、そう思って少し待とうとしたところ、その人物には見覚えがあった。


「あれ、リディア?」


 その人物はリディアだった。


「え? エリカさん? どうしてここに?」


 リディアは俺の方を振り向く。


「あ、お客様、丁度いいところに」


 受付員は俺を見て、そう言った。


「どうかしたんですか?」


 受付員に事情を聞くと、どうやらリディアが六年前の記事がまとめてあるファイルを見たいと言ってきたらしい。


「そういうことだったんですね。私も丁度ファイルを返しに来たところなんです」

「そうですか。ではファイルはそのままこのお客様に渡してあげてください」


 俺は頷き、六年前の記事が含まれているファイルをリディアに渡し、後の二冊は受付員に返す。


「ありがとうございます、エリカさん。貴方も何か調べてらっしゃったのですか?」

「うん、少し気になることがあって……リディアも?」

「は、はい、私も気になることが……」


 リディアは歯切れが悪そうにそう答える。


「そっか、頑張ってね。そのファイル結構分厚いから」

「え、ええ……」


 俺はリディアと別れて図書館を後にする。

 リディアは何を調べに来たのだろうか……。俺は学校までの道のりを歩きながらそう考える。

 六年前……もしかしたらブライド家の事件のことだろうか。

 リディアに関係する事件で六年前と言ったらそれしかない。

 でもなんで今更……。

 その時、携帯型通信機がピピと音を立てる。電話が来た時の音だ。

 俺は携帯型通信機を取り出し、耳に当てる。


「もしもし……」

「おい、助手二号! 何をやっている!?」


 それはカイルの声だった。


「今日は探偵部の活動をやると言っただろう! もうとっくに集合時間は過ぎてるぞ!」


 ……しまった。そうだ、今日は部室に集まれとカイルから言われていたんだった。

 記事を読むのに夢中ですっかり忘れていた。


「あ、すみません、部長。今すぐ行きます」

「全く……それにしても、貴様が遅れるなんて珍しいな……何かあったのか?」

「いえ、特に……とにかくすぐ行きますので、待っていてください」

「分かった、早く来いよ」


 そう言って電話は切られた。

 俺は携帯型通信機をしまい、急いで学校へと戻る。


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