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探偵の異世界生活  作者: わふ
第一部 学校生活編
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二十七話 思い出の場所

 

「そんなに畏まらんでいい。楽にしてくれていいぞ」

「は、はい……」


 いつも勝気なアリッサの面影はなく、まるで子猫のようにしゅんとして返事をする。


「ふ、まぁ良い。エリカ、三人を二階の空いてる部屋に案内してやってくれ」

「うん、皆付いてきて」


 俺は皆を連れて二階へと上がり、適当に空いてる部屋に案内する。


「一人一部屋ずつ使っていいから、荷物置いたら一階に来て」


 三人共頷き、それぞれ空いてる部屋に入って行く。

 それを見届けた俺とシフィーも自室に荷物を置きに行く。

 その後一階に戻ると、そこには既にシフィーの姿があった。

 それから間もなくして、他の三人も一階に降りてくる。


「あれ、お母さんは?」


 俺はエレナの姿が見えなかったので、シフィーにそう聞いた。


「台所で昼食を作ってくれています。アッシュさん達に手料理を振る舞うって張り切っていましたよ」


 そう言えばもう昼か。そう考えると急に腹が減ってくる。


「何だか申し訳ないわね。あたしも手伝おうかしら」


 アリッサはそう言って台所の方へと歩いて行く。


「なら僕も手伝うよ」


 クロウもアリッサの後をついて行く。残った俺達三人は大人しく食卓で待つ事となった。

 それから二十分程経った頃、エレナ達が料理を運んで戻って来た。

 会話を弾ましながら昼食を食べ終え、後片付けが終わった後、この後何をするかという話になった。


「エリカ、こやつらに村を案内してやったらどうじゃ?」


 エレナは俺にそう提案してきた。確かにこの村を知らないアッシュ達を案内するのはいい案だ。


「じゃあそうする? と言ってもあまり目新しいものは無いと思うけど……」

「んー、まぁ暇つぶしにゃなるか。他のやつらはどうだ?」


 アッシュは他の三人にそう聞いた。


「いいわね、あたしも村を見て回りたいと思ってたの」

「うん、僕も賛成だよ」


 そういう感じでアリッサとクロウは二つ返事で了承してくれた。


「あ、すみません、私は行きたい場所があるので……」


 珍しいな、シフィーが断るなんて。


「そうなの? 村の中だったらついて行くけど……」

「大丈夫です。それに一人で行きたい場所なんです。」

「そういうことなら分かったよ」

「気を付けて行くんじゃぞ」

「はい」


 シフィーはお辞儀をして、家を出て行った。


「珍しいわね。彼女があんたの誘いを断るなんて」

「だね、よっぽど行きたい場所なんだね」


 二人も俺と同じように思っているようだ。


「あいつにだって偶にはそういう時もあるもんだろ。それより俺達も行こうぜ」

「……そうだね、それじゃ私達も、あ、そうだ。お母さん、アルとティアってまだこの村にいるの?」


 俺は村を回るついでに二人に会いたいと思った。

 それにアッシュ達にも紹介しておきたかった。


「いや、アルベールは五月半ばに、ティアは先月村を出て行た。ティアはまず帝国内を旅すると言っておったな。アルベールは知っての通り、軍人になりよったわ」

「そうなんだ……」


 二人共、夢を叶える為に村を出たんだな。なら仕方ない、か…………。


「ねぇエリカ、そのアルベールとティアって……」

「うん、二人共幼馴染なんだ。アルは両親に楽をさせる為に軍人に、ティアは錬金術師になる為に村を出たんだよ」


 俺はそう言った後、玄関へと歩いて行く。


「さ、皆行こう? 村を案内するよ」

「……そうだな。案内頼むぜ、エリー」


 アッシュも玄関へと歩いて来る。それに続いてクロウとアリッサも歩いて来る。


「ま、その二人にも会ってみたかったけど、居ないんじゃ仕方ないわね。また機会があったら紹介してよね」

「きっとあるよ。その二人はエリカの幼馴染なんだから、きっとね」


 クロウとアリッサは遠回しに慰めてくれているのだろうか。

 そうだとしたら、少し、嬉しい。


「うん、またの機会に紹介するよ。それじゃ行ってくるね、お母さん」

「夕飯までには戻ってくるんじゃぞー」


 俺達四人は外へ出て、家の前で立ち止まる。


「で、どこから回るんだよ?」

「そうだね……じゃあ私のお気に入りの場所に案内するね」


 俺はそう言って、あの大樹の方へと歩き出す。


「こっちって村の外れの方だよね?」


 少し歩いて、後ろにいるクロウがそう聞いてきた。


「うん、村の外れにあるんだ、お気に入りの場所が」


 それから再び少し歩き、大樹の元に到着する。


「あ、ここって村に入る時にちょっと見えてた大樹ね!」

「もしかしてここか?」

「うん、この大樹の下がお気に入りの場所……と言うより思い出の場所かな」

「思い出の場所?」


 クロウの問いに頷きながら、大樹の根元へと近付いて行く。


「ここでね、良くアルとティアと遊んでたんだよ。だから思い出の場所。それにここから見える村の景色も好きだから、お気に入りの場所でもあるんだ」


 俺は大樹の根元から村を見渡す。


「確かに良い景色ね」

「……そうだな。ここからだと村が一望出来るな」


 俺に釣られて三人も大樹から村の方を見る。


「それにこの大樹も何だか神秘的な感じがして良いね」


 クロウは大樹を見上げながらそう言う。彼の言葉を最後に少しの沈黙が流れる。気不味い沈黙ではなく、心地よい沈黙。

 風が大樹の葉や草を揺らし、ざわざわと音を立てる。


 

「風、気持ちいいわね」

「ああ、ここに何時間も居たくなるな」

「そうだね、でも僕はこの場所から見える村の中も見て回りたいと思うよ」


 クロウの言葉を聞き、大樹に背を預けていたアッシュが歩き出す。


「そんじゃ、あの広場行ってみようぜ」


 アッシュは市場が出ている広場の方を指さし、そう言った。


「案内頼むぜ、エリー」

「うん、任せ――――」


 俺は村の方へと歩き出そうとしたその時、背後から何かが割れる音がした。

 慌てて振り向いてそこを見ると、何も無い場所に亀裂が入っていた。


「な、何!? 何が起こってるの!?」


 亀裂は次第に大きくなり、空間を切り裂く。

 切り裂かれた空間の間には、真っ赤な色がそこを埋める。


「くっ!?」


 その真っ赤な場所に、風が集まるかのように吹き入っていく。


「風が強くなってる!?」


 吹き入る風は段々と力を増す。


「駄目だ、吸い込まれる!」


 その風に俺達は為す術もなく流され、真っ赤な場所へと吸い込まていった。

 …………どれぐらい経っただろうか。

 正確には分からないが、恐らく数分、もしくはそれ以下。

 俺達は目を開ける。

 そこは禍々しい色の真っ赤な空……いや空間が広がり、宙に浮いている地面に立っていた。


「ここ……は……」


 前方には真っ直ぐ石畳の道があり、その通りから脇道が一定間隔で複数伸びている。


「え、さっきあたし達あの大樹の根元にいたわよね? なのに……ここは……」


 アリッサは呆然と立ち尽くしていた。

 いや、アリッサだけで無く他の二人、それに俺も。


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