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探偵の異世界生活  作者: わふ
第一部 学校生活編
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十九話 動き出す陰謀

投稿が遅れて申し訳ありません。遅れた理由は今後の展開の見直しをしていたからです。

 

 ―七月七日 七星祭三日目―


 七星祭最終日の午前十時、俺とアッシュとクロウはカレン・フォン・デルヴィーニュの演説を見る為にロノン大広場にやって来た。


「流石に人多いな。そんなに見たいものなのかねぇ」


 アッシュの言う通り、大広場は数え切れない程の人混みで溢れかえっていた。

 カレンは滅多に人前に姿を現さない人物なので、注目が集まっているのだろう。

 一般人だけでなく、カメラを構えた新聞記者、軍の人達も少なくは無かった。


「仕方ないよ、あのカレン卿の演説だからね。それにアッシュが見に来たいって言ったんだろ?」

「そうだけどよ、流石に―――おい、あれって……」


 その時、宮殿へ続く橋前に設置された演説台の上に黄金の中世鎧を着た人物の姿が見えた。

 演説台の上には、スタンドマイクが設置されている。


「金の鎧……あれってスリーナイトの一人、雷帝ステラ卿じゃない?」


 クロウがその人物を指さしてそう言った。

 雷帝ステラ、その名の通り雷属性の魔法と我流の剣術を巧みに操るスリーナイトの一人だ。

 本名をステラ・ロペスと言い、伯爵家の出だ。

 鎧を脱ぐ事は滅多に無く、本当の姿はあまり知られていない。声からして女性だと思われる。

 彼女もしくは彼は、カレンの護衛の任に着いている。

 実際に見たことは無かったが、本当に黄金の鎧を着用しているんだな……。


「あれ、戻って行く……」


 演説台の上がったと思ったら、直ぐに演説台の影へと消えて行った。


「きっと怪しい人が居ないか見渡したんだよ。演説台の上からだったら、広場全体を見渡せるからね」

「あ、確かにそうだね」


 俺の言葉にクロウはうんうん、と頷く。

 その数十秒後、入れ替わりのように違う人物が姿を現す。

 今度は茶髪のクールショートのスーツ姿の中年男性だ。確かあの人は……。


「おいおい、宰相も出んのかよ」


 そう、帝国の宰相、サディアス・ラスペリアだ

 前に新聞記事で一度見た事がある。


「皆さん、お集まり頂きありがとうございます。これよりカレン・フォン・デルヴィーニュ卿の演説を開始したいと思います」


 サディアスの声が広場に響き渡ると、騒がしかった広場は一気に静かになった。


「ではカレン卿、どうぞ」


 サディアスは演説台の影に向かってそう言った。

 そうすると、演説台の階段を上がる、コツコツと音が聞こえる。やがてその音を発する人物の姿が現す。

 …………あれ、あの人物って……………………。


「皆さん、今日はお集まり頂きありがとうございます。カレン・フォン・デルヴィーニュです」


 その舞台に上がった人物は、6月下旬に会ったあの金髪の女性だった。

 あの時来ていた服装では無く、白のドレスだったが間違いない。


「? どしたエリー?」


 唖然としていた俺に、アッシュが声をかけてくる。


「いや、あの人と前に学校で会った事を思い出して……」

「ああ、あの姫さんは学校側に資金を出費していて、学校関係者だからな。学校の様子でも見に来てたんじゃねぇか?」


 そうか、それで……三ヶ月ほど通ってて知らなかったのは驚きだが。


「ええ!? そうだったの? 全然知らなかったよ」


 どうやらクロウも知らなかった様だ。あまり表沙汰にはなっていないのか。

 まぁ、滅多に人前に出ない人物だから、何ら不思議はない。

 きっと目立ちたくなくて、名前を伏せるように学校側に頼んだのだろう。


「それでは今回の本題に……」

「それよりインタクアスをどうにかしろ!」


 カレン・フォン・デルヴィーニュが演説を始めようとした時、広場の誰かがそう声を上げる。


「そうだ! インタクアスの治安はどうなってるんだ!?」


 インタクアス……帝国西端のインタクアス州の事だ。


「どうにかしろよ! 総督さんよぉ!?」


 野次は次第に大きくなる。


「確かインタクアスって……」


 俺はあまりインタクアスについて知らなかったので、二人にに聞いた。


「二年前帝国から西にある隣国、スタキルトって国が戦争に負けて、帝国に吸収合併された州だ。あそこは元から治安が結構悪いんだ」

「うん、それに合併されて元からあった軍なんかも解体されて、取り締まりが困難らしいんだ」

「ああ、武器なんかの密輸、犯罪事件も茶飯事起こってる。とにかく荒れ放題で世紀末みたいな場所だ」

「……その州の総督が……」

「そう、あのカレンって奴だ」


 アッシュはカレンを見てそう言った。

 なら、野次を飛ばしている人達は、インタクアスに住んでる人達か。


「皆さん、落ち着いて下さい! その件は……」

「もう二年も経ってるのよ! いつになったら安心して暮らせるの!?」


 そうだ、そうだ、と人々が騒ぎ立てる。

 カレンが制するように言うが、野次は大きくなる一方だ。


「大体、ちゃんと治安を良くしようとしているのか!?」

「そうだ! 放ったらかしにしているんじゃないだろうな!?」

「い、いえ! そんな事は……」

「静粛に!!!!!」


 サディアスがそう声を張り上げると、野次を飛ばしていた人達が一気に黙り込む。


「……インタクアスの件は全力を尽くして対応に当たっています。不確定なので詳しい事は話せませんが、治安を取り締まる組織の設置、貧しい人々の為の物資配布を考えています。なのでどうか、もう少しだけ待っていて下さいませんか?」


 広場は静まり返ったままだ。野次を飛ばしていた人達も、そうでない人達も何の反応も示さない。


「……では今回の本題に入らせて頂きます。今日皆さんにお集まり頂いた理由は、ある歴史的な発表の為です。ではご紹介しましょう」


 カレンはそう言うと、橋の向こう側から何かが近付いて来る音が聞こえる。この音は確か、動力車の音だ。

 やがて橋を渡りきった黒色の動力車が、演説台の横に停められ、それを運転していたと思われる軍人が降りてくる。

 その動力車を見た人々は案の定、ざわついた声を上げる。


「ご紹介しましょう、数ヶ月前、セルフレア博士が発明したと言われていた馬車に代わる乗り物、動力車です」


 周りから驚きの声が上がる。


「セルフレア博士は訳あって不在ですので、僭越ながら私から動力車についての簡単な説明をさせて頂きます。この乗り物は、ガソリンという液体を注入する事で動かす事が出来ます。動力車の許容量最大まで入れる事で、継続しておよそ千キロメートル程走行可能との事です。それに馬車よりもスピードが出せるので、より早い移動手段となります。運転方法もそれ程難しくなく、方向転換も容易に出来ます。それとその技術を応用して、軍事兵器も開発中です」


 軍事兵器……戦車等だろうか。


「まだ作製コストが高く、生産速度は遅いですが、この動力車は間違いなく活気的な、列車とは違う何処でも走れるような乗り物です」


 カレンは少し黙り込んで、広場全体を見回し、後方にいたサディアスに視線を向ける。

 それを見たサディアスは頷いてから、前に出る。


「では、今回の演説は――――」


 パァン!!!

 その時、一発の銃声音が広場に響いた。


「ぐっ……」


 サディアスが右肩を押さえて塞ぎ込む。

 軍の人達は慌てて、演説台へと駆け寄る。


「なんだ!?」

「今銃声がしたぞ!」

「血だ! 血が出てるぞ!」


 広場にいた人々が騒ぎ始める。

 狙撃か!? 一体どこから……!


「え!? 何が起こったの!?」


 クロウは困惑している。


「狙撃だ! きっとまだ近くに……」


 俺はアッシュの言葉で辺りの建物の屋上を見回す。

 すると、背後の建物の屋上に人影が見えた。

 あそこか! 

 すぐ様追いかけようと、人混みを突っ切ろうとしたその時。


「おい! あそこに誰かいるぞ!?」


 広場にいた誰かがある一つの建物の屋上を指さす。

 足を止めてそこを見ると、三人の人影があった。その人影が演説台へと飛び降りる。

 その三人の姿は、一人は白髪(しろがみ)の大鎌を持った少女、もう二人は黒いローブに黒い仮面で顔を覆った、男か女か分からない人物だった。


「カレン卿、お下がりください!」


 瞬時に演説台に上がって来た雷帝ステラが、カレンを背後に庇う。


「し、しかし……」

「早く!」


 雷帝ステラが、左腰の鞘から金色の剣を引き抜く。


「……分かりました」


 カレンが舞台を降りようとする。


「逃がしマセン。B、お願いシマス」

「ええ」


 ローブの人物の一人が右手の掌を握る動作をすると、カレンはその場から一歩も動かなくなった。


「えっ!?」

「カレン卿! くっ、鉄糸か!」

「流石は雷帝、察しが良いデスネ。ですが無駄デス。その鉄糸はその剣では切れナイ」


 鉄線で動けなくされているのか……待てよ、だとしたら狙いは……!

 俺は急いで人混みをかき分けながら、演説台の方へと進んでいく。

 アッシュ達が何か言っているが、その時の俺の耳には届いていなかった。


「カレン卿の命、貰いマス」


 やはりカレンの殺害か。


「させるか!」


 人混みを進みながら横目で演説台の上を見ると、大鎌の少女が雷帝ステラの正面に突っ込んで行く。

 それを止めようと雷帝ステラは剣を振るが……。

 消えた?

 そう、その大鎌の少女の姿は雷帝ステラの前には無かった。


「何っ!?」


 雷帝ステラは、必死に大鎌の少女を探す。


「何処だ!?」

「ここデス」


 その声が聞こえた時、何かを貫く音が聞こえた。

 俺は急いで人混みをかき分けて、演説台の上へと上がる。


「がはっ……」


 そこには背後から左胸を大鎌の鋒で貫かれ、血を吐いていたカレンの姿があった。


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