十七話 常闇の姫
あの後館長は憲兵隊に連絡をして、美術館閉館後の二十一時から憲兵隊が本格的に警備を開始した。
夕方から現在まで、館長室をクロエが指揮を執って調査している。
「どうだ、何か手掛かりは?」
部屋を調査しているクロエ達の元にネハルムやって来てそう問いかける。
「いえ、残念ながら……」
クロエがそう答えた。
「……そうか……これだけ探しても痕跡一つ出ないなんて……なんて奴だ」
ネハルムは怪盗Aの事件を全て担当しており、これで5度目だ。
その度に多くの憲兵を使って調査をしているが、何一つ手掛かりは見つからなかった。
分かった事といえば、怪盗Aは絶対に予告状を出して犯行に及ぶ事、予告時刻は決まって午前零時、狙うのは人工遺物だけ。後はどうやって予告状を出しているのかが分からないという事だ。
犯行時は派手に行うのだが、予告状の時は違う。
まるで予告状が独りでに現れたかのように、いつの間にか気付かぬ内に置かれている。
「ロバーツ大尉、引き続き調査を行いますか?」
「いや、もうそろそろ予告にあった午前零時だ。トレス伍長はここの兵を引き連れ、常闇の姫の警備にあたってくれ」
「了解です!」
クロエ達は館長室を出て行く。
(……どうやって怪盗Aは予告状を出しているんだ?)
ネハルムはそう考えながら、証拠品として回収した予告状を取り出す。
(午前零時、常闇の姫を頂戴する……か……ん?)
ネハルムは予告状の文面を見てある事に気付いた。
(前回の博物館では確か……)
ネハルムがもう一枚の予告状を取り出す。
『本日午前零時、新奇な古代の遺産を頂戴する。怪盗 アルセーヌ』
前回の博物館での予告状だ。
(やはり……何故今回はちゃんと人工遺物の呼称が書かれている。……前回の予告状までは曖昧な言い回しばかりだった……なのに何故だ? 予告状を出している人物は別人か? それか狙ってる物の名前をこれまでは知らずに犯行に及んでいた……? それなら得体の知れない物を盗んでいた……)
ネハルムは脳をフル回転させて推理する。
(……もしそうなら怪盗Aには共犯者……もしくは怪盗Aを駒として操っている人間がいる……どちらにせよ敵は一人では無い……という事か)
ネハルムは考えを止めて腕時計を見る。
時計は二十三時五十二分を示していた。
「そろそろか……俺も向かうとしよう」
ネハルムは誰に言うでも無くそう呟いて常闇の姫の場所へと向かう。
ネハルムが到着する頃には、兵の配置は終わっていた。
常闇の姫と呼ばれるゴシック人形は、その空間の他の展示品に紛れるように展示されている。
「ネハルムさん、何か分かりましたかな?」
そう聞いてきたのは美術館の館長だった。
「いえ、これと言って……すみません……」
ネハルムはさっき考えた事はあくまで推測の為、言わなかった。
「そうですか……」
そこにクロエがやって来る。
「ロバーツ大尉、そろそろ予告時刻です」
そう言われ、ネハルムが腕時計を再度確認する。
二十三時五十七分を示している。
「怪盗Aはどうやって盗むつもりなんでしょうか? ここは前みたいに窓やステンドグラスもありませんし……」
クロエの言う通り、通路以外にこの空間に入る方法はなかった。
「相手は怪盗Aだ、油断するな。奴はどんな巧妙な手で来るか分からない。警戒を怠るな」
「は、はい! 了解しました!」
クロエは気を引き締め直し、持ち場へと戻る。
「全く……」
ネハルムは少し呆れながら、腕時計を見る。
二十三時五十九分……そろそろだ。
(さて、奴はどんな手で来るか……)
零時、美術館の時計の鐘が鳴り始める。
(あいつの言った通り、ここは窓等は無い。なら通路から強行突破か?)
一回目の鐘が鳴る。
(奴がそんな単純な……いやあえてか?)
三回目。
(いや、他にも手があるはずだ。例えば……)
六回。
(他に手は……)
九回。
(……もしかしたらもう既に忍び込んでいる……か?)
十一回。
(なら何かに変装して……まさか!)
十二回。
「な、なんだ!?」
その時、兵の誰かが声上げ、それと同時に空間中に白い煙が巻き起こった。
「落ち着けただの煙幕だ! 直ぐに常闇の姫を死守しろ!」
混乱していた兵達はネハルムの声で、手探りで常闇の姫の元へと走って行く。
だが、前が見えず兵達は中々辿り着けない。
結局最初に辿り着いたのはネハルムだった。
「動くな!」
ネハルムが常闇の姫に唯一近付いていた兵に銃口を向ける。
「お前が怪盗Aだな?」
「フフ……フハハハハハハ!」
その兵から、聞き覚えのある高笑いが聞こえる。
「良くぞ見破った! 憲兵の大尉よ!」
その人物は来ていた軍服と軍の帽子を脱ぎ捨て、正体を現す。
前回と同じ服装の怪盗Aの姿が顕になる。
「やはり憲兵に変装して忍び込んでいたか……何故人工遺物を盗んでいる?」
ネハルムが銃口を向けたまま聞いた。
「ふ、愚問だな」
「答えろ!」
「我の変装を見破った褒美だ。答えてやろう。貴様の考えている通りだ」
怪盗Aはネハルムが自分に協力者がいる事を見抜いていると理解していた。
「なら、その共犯者は誰だ!?」
「それは答えられない」
「何故だ!?」
ネハルムは引き金に指を掛ける。
「協力者は売らない、それが我の流儀だからだ。それに……」
怪盗Aはテールコートのポケットからあの金のリングを勢い良く取り出し、ネハルムに向ける。
「貴様の知る事では無いからだ! 止まっていろ! フリーズ!」
「なっ……!」
ネハルムは動けなくなる。
「予告通りこの常闇の姫は我、怪盗アルセーヌが頂戴する!」
「待て!」
怪盗Aは常闇の姫をお姫様抱っこをして、その場を立ち去ろうとする。
「待ちなさい!」
だが、アサルトライフルを構えたクロエが立ち塞がる。
「ふ、若き兵か。貴様にも用はない」
怪盗Aが人形を抱いたままそう言い、片手で金のリングをクロエに向ける。
「え!?」
クロエは身動きを取れなくなった。
「っ……動ける……?」
だがクロエにそれをしたと同時に、ネハルムは体の自由を取り戻した。
ネハルムは突然の事に呆気を取られたが、直ぐに怪盗Aを捕まえようとする。
「逃がす……くっ!」
だが再び煙幕を撒かれる。
今度は近距離だった為に視界が悪くなり、怪盗Aを追えない状況に陥る。
やがて煙幕の煙が消えていき、視界が開ける。
「ロバーツ大尉、大丈夫ですか!?」
身動きを取り戻したクロエがネハルムに近付く。
「俺の事は良い! それより早く奴を追うぞ!」
ネハルムが怪盗Aの後を追う。
それに続く様にクロエ達も走っていく。
その頃、怪盗Aは美術館入口の兵を軽々と素手で気絶させ、美術館の外へと出た。
そして他の建物の屋根にフックショットで飛び乗ろうとしたその時……。
「っ……!」
そのフックショットが何者かに斬られ、後方に下がる。
「貴様が怪盗Aか」
そう言ったのは、グレイグだった。
「緋の戦域殿がこんな所に居るとは驚いた」
「偶然帝都に居合わせて、おかしな輩が現れたと聞いて駆けつけた、それだけだ……降伏するなら、命までは取らない」
グレイグは両手剣を右手だけで軽々と持ち、鋒を怪盗Aに向ける。
「降伏……? 我がそんな事をすると思うか?」
「ならば仕方あるまい……」
グレイグは両手剣を構えて、距離を詰める体制をする。
「……仕方ない……」
怪盗Aは抱いている人形をその場に立たすように置く。
「降伏する気になったのか?」
「いいや、さっきも言っただろう?我がそんな真似をする筈がないと」
「ならば……どうする?」
グレイグが構える。
「こうするのさ」
怪盗Aはそう言い、人形に口付けをした。
「……何の真似だ……っ!?」
グレイグが人形を見て更に警戒する。
「ん……」
人形は驚く事に独りでに腕を動かして、声を発した。
「……誰よ、あんた」
人形の第一声は怪盗Aに向けられたものだった。
「……も、もしかして、あんた今キスで……!?」
人形は怪盗Aの顔が近い事でキスされたと気付き、素っ頓狂な声を上げる。
「ああ、緊急事態だったからな」
人形は怪盗Aから身を離す。
「あ、あ、あんた! 乙女の唇を奪っといてよく平然としていられるわね!」
「そんな事は良い! 緊急事態と言っただろう!」
怪盗Aは魔法アイテムボックスである物を取り出し、人形に差し出す。
「良くないわよ! って、何なのこれ?」
それは刃の部分が赤色の斧槍だった。
「ブリューナク、人工遺物だ。貴様なら扱えるだろう」
人形はそれを受け取る。
「はぁ? 戦えって事?」
「出来ないのか?」
「いや出来るけど……」
「ならば戦え」
人形は少し黙り込み、溜息をついた。
「……はぁ、とんでもない奴に起こされたわ……」
ブリューナクを構え、グレイグの方を向く。
「話は済んだようだな……ならば……参る!」
グレイグが一気に距離を詰め、突っ立っている怪盗Aに両手剣を振る。
人形が怪盗Aの前に立ち塞がり、ブリューナクの斧刃の部分で両手剣を受け止める。
「ほう……この一撃を受け止めるとは見事だ」
「へぇ、これ中々頑丈なのね」
「……って、あんたも手伝いなさいよ!」
人形が未だに突っ立っているだけの怪盗Aを横目で見てそう言った。
「ああ、もちろん手伝うさ」
怪盗Aはそう言って人形達に背を見せる。
「ちょっと! 何やって……」
そこにネハルムを筆頭に憲兵達が美術館から出てくる。
怪盗Aはネハルム達を迎え撃つ為に、自ら近付いて行く。
「敵が来てるなら来てるって言いなさいよ!」
人形が少し押し返される。
「余所見している暇は無いぞ!」
「ったく……! 鬱陶しいわね!」
受け止めていた両手剣を弾き返す。
「ふっ、中々楽しめそうだ」
それと同時に怪盗Aはネハルム達に接近していた。
「おやおや、お早い戦線復帰で」
「怪盗Aを逃がすな!」
ネハルムがそう指示を出すと、複数の憲兵達が銃弾を放つ。
怪盗Aはそれを上に飛んで避け、そのまま憲兵の背後を取る。
慌てて振り返る憲兵達を怪盗Aが腹部を殴って、次々に気絶させる。
「ふ、たわいもな……」
そう言いかけた怪盗Aは殴りかかって来るネハルムに気付き、右手の前腕で受け止める。
「ほう、近接戦とは……随分思い切った事をするのだな」
「お前には銃弾は効かない。恐らく何らかの魔法で銃弾だけを弾いている。その証拠に……!」
ネハルムが膝蹴りをして、それを怪盗Aが肘で防御する。
「銃弾以外の攻撃は自ら受け止めるしかない!」
怪盗Aの顔面に右ストレートを放つ。
「ほう……?」
怪盗Aが感心したかのように口元を上げてにやりと笑い、それをさらりと避ける。
「流石は憲兵隊の大尉と言うだけある。筋が良い」
ネハルムはもう一度怪盗の顔面に右ストレートを放つ。
「だが……」
しかし、怪盗Aはそれを避けようとしない。
「…………」
だがその右ストレートは当たる事は無かった。
ネハルムの拳は怪盗Aの鼻先で止まっていた……いやネハルム自身が止めていた。
「何故だ……」
それ理由はネハルムの背後に拳銃の銃口が突き付けられていた。
「何故だ……トレス伍長!」
それはクロエだった。
「ち、違うんです!体が勝手に……」
「何?… …まさかあの時!」
そんな光景を眺めていた怪盗Aが「クク……」小さく笑いを零す。
「正解だ! あの時その小娘に掛けたものは貴様とのは別のものだ!」
「くっ、やはりか……まさかお前はこの状況を見越して……」
怪盗Aはその問いには答えずにやりと笑う表情を残し、背中を見せて歩いて行く。
「待て!」
「銃をどけろ! トレス伍長!」
「だ、駄目です! 動けないんです!」
「っ……これ以上取り逃す訳には……!」
ネハルムは一歩前に踏み出す。
「駄目っ!」
その瞬間クロエの銃口から弾が放たれる。
「ぐっ……!」
その弾がネハルムの身体を撃ち抜く。
ネハルムが背後から右横腹を撃たれて膝着き、痛みで苦しむ。
地面にネハルムの血が一滴、また一滴と流れていく。
「大尉! ロバーツ大尉!」
泣きそうな顔をしたクロエは、ネハルムに駆け寄ろうとするが、まだ身動きが取れないままだった。
「ま……待て……」
ネハルムは左手で撃たれた場所を抑えながら、怪盗Aに届く筈の無い右手を伸ばす。
その間に怪盗Aの背中はどんどん小さくなっていく。
「――笑止!」
怪盗Aがそんなやり取りをしている間に、人形とグレイグは美術館前の通りで戦いを繰り広げていた。
幸い美術館周辺は一時的に立ち入り禁止になっている為、人影は無かった。
戦いは若干人形側が苦戦を強いられている。
人形が後方に飛び退いて距離を取る。
「起きて早々、なんでこんな化け物と戦わなくちゃいけないのよ!」
人形の攻撃は全てグレイグに読まれ、軽々と防がれていた。
逆に人形はグレイグの攻撃を防ぐのに精一杯だった。
グレイグが再び距離を詰めて、両手剣を振るう。
人形は柄の部分でそれを受け止める。
だがその一発の斬撃では終わらず、連続で両手剣の斬撃が人形を襲う。
人形はそれを防御するのに必死で身動きが取れない。
「うぐ……」
遂に人形が弾き飛ばされる。
「どうした、そんなものか?」
グレイグが両手剣を構え直し、再び斬り掛かる。
人形はそれを地面に転がって間一髪で躱す。
「……良いわ……」
人形は小さくそう呟き、体を起こす。
「ん?」
「……あんたさっき、こんなものかって言ったわよね?」
グレイグが身構える。
「だったら見せてあげるわ。あたしの本当の強さを」
人形の目が赤く光る。
「……来い」
人形はグレイグに向かって走って行く。
「正面……!」
グレイグは両手剣を横振りと思わせつつ、逆手持ちに切り替え縦振りする。
「っ……!?」
人形はその縦振りを読んでいたかのように、左に躱してグレイグの顔面目掛けて攻撃する。
グレイグは間一髪の所で逆方向に飛び退いて躱す。
完璧には躱しきれず、かすり傷程度だが頬に傷を負った。
「………ほう」
グレイグは頬に流れる血を指で拭う。
「それが貴様の本当の力か」
「あんたはもう終わりよ。このあたしからは逃げられない」
人形はそう言い放ち、鋒を向ける。
「……面白い、ならばやって見せよ」
グレイグは両手剣を水平に構える。
「ええ、望み通りやってあげるわ!」
人形は持っていたブリューナクをグレイグに向けて投げる。
グレイグはそれを上に飛んで躱す。
「何っ!?」
驚く事に一直線に投げられたブリューナクは軌道を変えて、グレイグを追うように上に飛んで行く。
「……しかし……!」
グレイグはそれを両手剣で防御し、軌道を変えてグレイグより高く飛んで行く。
「驚いた、これは……っ!」
しかしブリューナクは再び軌道を変えてグレイグの右胸を貫いた。
「ぐっ……!」
グレイグは痛みで荒く着地する。
「何を……やった……今のは……」
ブリューナクが独りでに人形の手元へと戻って行く。
「敵のあんたに教える訳ないでしょ」
人形の目の色が赤から青に戻る。
「ぐ……がはっ!」
グレイグが吐血し、傷口を右手で押さえる。
そこに怪盗Aが戻って来る。
「ほう、素晴らしい!」
怪盗Aは膝を着いているグレイグを見てそう言った。
「そっちも終わったの?」
「ああ」
「そう、ならこれからどうするの?」
「もちろん逃げるに決まっているだろう!」
怪盗Aは人形に歩み寄る。
「そう、ならさっさと行きましょ」
人形は怪盗Aの手を取り、そう言った。
「うむ、ではさらばだ!緋の戦域!予告状通り、この常闇の姫は頂いた!」
怪盗Aは再び人形を抱き上げ、もう一丁隠し持っていたフックショットを使って、今度こそ屋根の上に登って去って行った。
その後増援が駆けつけ、負傷したグレイグとネハルムは帝都東部のナイアル地区の帝都病院に運び込まれた。
怪盗Aは前回と同じ時計塔に登り、人形を下ろす。
怪盗Aは落ち着ける場所で話しておきい事があった。
「それで、あんた誰よ」
「我は怪盗アルセーヌ。常闇の姫、貴様の協力を得たい」
「はぁ? 怪盗?それに協力? 訳が分からないわよ」
人形はお手上げ状態と言わんばかりに、両手をヒラヒラと挙げてそう言った。
「あたしに盗みの手伝いをしろってこと?」
「そうだ。貴様の力を我の為に使って欲しい」
人形は少し黙り込む。
「……分かったわ、好きにしなさい。あたしを起こしたのはあんたなんだから」
「そうか! 貴様に口付けをしたかいがあったと言うものだ!」
「ちょ、ちょっと何よ! 乙女の唇を奪っといてその言い草! それにもっと他の起こし方あるでしょ!?」
人形なので顔は赤くならないが、明らかに照れているような表情をする。
「仕方ないだろう?他の方法は時間が掛かり過ぎる。あれ程手っ取り早い方法は無かったからな!」
「そういう事を言ってるんじゃ……はぁ…もういいわ……」
人形は額に手を当ててそう言った。
「それで、貴様の事は何と呼べばいい?」
「好きに呼べばいいわよ」
「貴様の名前は何と言うのだ?」
「名前?そんなの無いわよ。人形何だから。その常闇の姫?ってのも勝手に人間が付けたやつだし。あんたが適当に決めて、適当に呼べばいいじゃない」
「そうか」
怪盗Aは顎に手を当て、考え込む。
「そうだな……なら貴様はこれから『ヒスイ』と名乗れ!」
「ヒスイ?」
「ああ! 黒翡翠から取って、ヒスイだ。良い名だろう?」
「分かんないわよ、良い名前かなんて。ってかなんで黒翡翠?」
人形が首を傾げる。
「黒い服を着て、宝石みたいに綺麗だからだ」
「は!? 綺麗!?」
「貴様は良く出来た綺麗な人形だ。初めて目にした時は人間と見間違える程だったぞ」
人形はもじもじしながら「そ、そう」と言った。
「と、とにかくヒスイね! 分かったわ! あんたの事はアルセーヌで良い?」
「問題無い……ん?」
怪盗Aはヒスイのスカートの裾を見る、
「どうしたの……って何するのよ!」
怪盗Aは見ていたスカートの裾を掴む。
「ここ、解れているな。後で…」
「わ、分かったから、早く手を離しなさいよ!」
ヒスイのスカートはかなりめくれ上がっており、膝の球体関節が見える。
「何をそんなに慌てている。我は人形の肌等興味は無い。それに……」
「〜〜〜ッ! いいから早く離しなさい!!!」
ヒスイはスカートを両手で押さえながら叫ぶ。
「そんなに叫ばなくても聞こえている」
怪盗Aはスカートから手を離す。
「はぁ……ほんととんでもない奴に起こされたわ……」
それから暫くして、怪盗Aとヒスイは時計塔を離れた。




