百二十一話 リブリーラ城攻略戦 四
「――父さんっ!!」
声を上げたのはウィルバートだ。
彼はそう叫びながら、無き父の元へと駆け寄る。その後に続き、他の三人も同じ様に。
「……終わったんですか?」
「はい、他の敵兵は全て無力化しました」
カミラの言う通り、他の敵は倒されて戦闘不能になっていた。
彼の父とは違い、気絶と言う形で……。
――俺が上手くやれば、助けられたんじゃないか……?
「エリカ、お前のせいじゃ無い」
アルベールが俺の考えを見透かした様に、慰めの言葉を掛けてくれるが……。
「父さん……何で……何でこんな事に……!」
遺体に寄り添って泣きじゃくるウィルバートの姿を見ると、どうしても後悔が残る。
「ウィルバート……ごめん……私があの時、拘束していれば……」
これは、俺の弱さが招いた最悪の結末だ。油断と言う弱さの。あの時、もうこれ以上何もしてこないだろうと油断し、二人の援護に急いだ結果。
「――いや……良いんだ……父さんと道を違えた時、経緯はどうであれ、こうなる事は覚悟していた。エリカが悪い訳じゃない」
「ウィルバート君の言う通りだと思いますよ、エリカさん。これは戦争なんです。この結末は、誰もが予想出来るそれの一つ。引き摺る事は何もありません」
ウィルバートとカミラの言いたい事は分かる。彼が気休めでそう言っている訳では無い事も。
でも、助けたかった――死なせたく無かった。
話を聞き出す云々よりも、ウィルバートの父親だからと言う理由でだ。
「――こうしていてもしょうがない。まだ、やる事が残ってるんですよね? まずはそれを片付けましょう。エリカも気落ちしてないで、手を貸してくれ」
「……うん」
ウィルバートに尻を叩かれ、不完全燃焼のまま頷く。
「その前に訊きたい事がある。ウィルバートと言ったな。お前はどうやって攫われた?」
ラルフは時を見計らって、二人が突然消えた理由について訊いた。
「――正直分からない。攫われた時、皆の後を追って階段を登っていたんだ。それで……気付いたらこの二階に居て……父さん達に拘束された」
「……? 訳が分からないな。突然二階に居たか……これも何か魔法の力なのか?」
「恐らくそうでしょう。原因は、城全体に張られているそれかと」
「そう考えて良いだろう」
……ヴァレ、どう思う?
『彼等の意見に賛成ね。と言うか十中八九、的を得ていると思うわ』
そうだよな……俺もそう思う。
「ちょ、ちょっと待ってくれないか? 魔法の力? 一瞬にして、地下から二階に瞬間移動する魔法なんてあるのか? そんなの聞いた事無いが……」
そうか、ウィルバートは知らないのか。とは言うが、俺も具体的には把握していないが。
「あると思うよ。普通では有り得ない……常軌を逸した、とてつもない力が。そうですよね、カミラ教官。ラルフも」
二人は何の躊躇いも見せずに頷いた。
「ウィルバートも薄々気付いているんじゃないかな? さっき、銃弾から私達を守ったアルの力。そして、王国全体に張られた見えない障壁。多分、そう言うのがこの世界には存在しているんだと思う」
一年前なら、こんな話は信じなかったと思う。
でも、色々な経験をして、色々なものに触れた今なら信じる事が出来る。
「……常軌を逸した力……うん、アーティファクトと同じ様なものだと考えれば、頭ごなしに否定する事は出来ないか……ひとまず納得しておこう――」
「今は説明出来ないが、いつかきっと説明する。今は先を急ぐぞ」
ラルフの言葉を最後に、俺達は三階へと向かった。




