百二十話 リブリーラ城攻略戦 三
『何れにしても、やる事は決まってる――そうよね?』
――ああ。
「――ワープムーブ!」
敵の不意を突いて、空間魔法ワープムーブで距離を詰める。
彼等は突然の事で思考が追いついてないのか、俺が間近に迫っていても微動だにしない。
「ウィルバートっ!」
その間にウィルバートを確保し、体の自由を奪っていた鎖を刀で斬る。
「ちっ! 貴様!」
その頃には当然の如く、敵の銃口はこちらに向いていた。
「撃て――!」
「させるか! 防の陣!」
襲い来る弾から、アルベールが刻印の力で護ってくれる。
「エリカ、一旦退け」
その隙にラルフが飛び込んで来て、炎を纏った剣を振り、敵を牽制する。
「分かった!」
ウィルバートを連れ、アルベールの元へと後退する。
「ウィルバート、怪我は無い!?」
「あ、ああ……ありがとう……」
取り敢えず怪我は無い様だ。
だが一応、暫く休ませておこう。
「アル、ウィルバートをお願い」
アルベールに彼を守る役を任せ、前へと出る。
「彼は大丈夫か?」
そんなやり取りを見て、牽制は充分だと思ったのか、ラルフが敵中から戻ってくる。
「うん、後は……」
「ここを突破して最上階に行くだけですね」
俺含め三人が敵と対峙する。
「くっ……まさか無詠唱で空間魔法を使うとは想定外だ……流石、国家魔法師の娘と言ったところか」
いや、以前の俺なら不可能だっただろう。
俺の中に居るヴァレが魔法のイメージを伝達してくれた事で、複雑でイメージしにくい空間魔法でさえも、瞬時に発動させる事が出来た。
つまり大っぴらに言うと、ヴァレが居てくれるだけで思考速度が二倍になっている訳だ。
何にせよ、これで公平に戦える。全力で。
「そこを退いて貰います、フォーミュラ大佐。私達は先へと進まなければいけない……例えどんな障害があろうとも……!」
俺達は敵陣へと駆ける。
「エリカさん、貴方はフォーミュラ大佐を! 私とラルフさんは他を抑えます」
「はい!」
一直線でテレンスへと向かって走り、攻撃を仕掛ける。
「はっ!」
テレンスはライフルを捨て、腰に掛けていた剣を引き抜く。
キンッ!
刀と剣がぶつかり合い、金属音が戦いの火蓋を切る。
激しい鍔迫り合い、その状況が暫く続く。
「ふ、どうやら意地でも先に進むらしい」
切迫した状況で、テレンスが話し掛けてくる。
「――本当にこんな事が、帝国の未来だと思っているんですか――貴方は!?」
「答えは変わらない。私の――いや、我々の考えは、行動は帝国の未来へと繋がる。そう信じている!」
「……何がそこまで貴方達を動かしているんですか! 彼女と同じ様に、帝国に恨みを抱いているんですか!?」
「ふん、甘いな……実に甘い考えだ」
「……? どう言う意味ですか?」
「それは――こう言う事だ! タイムストップ!」
「しまっ――!」
テレンスが発動した時魔法タイムストップで、数秒動きが奪われる。
その間に刀が押し切られ、動ける頃には体勢を崩していた。
「くっ……!」
「帝国の未来の礎となれ!」
間髪入れずに剣が振り下ろされる。
「――まただ!」
「何っ!?」
俺は隠し持っていた銃を左手で取り出し、相手に向ける。
――そして、弾を放つ。
「ぐっ……かはっ……!」
弾は腹部を貫く。テレンスは剣を落とし、地面に膝をつく。
「――終わりです。テレンス大佐」
再び銃口を向けて、弾の代わりに言葉を放つ。
「ぐふ……土壇場からの冷戦な判断……見事だ、エリカ・ライト……」
テレンスは血を吐きながら顔を上げる。
「……殺せ――殺して、先に進め」
「……いえ、殺しません。貴方はここで捕まえ、詳しい話を聞き出します」
彼にはもう少し話を訊かなくてはならない。
これまでに至った経緯や、本当の事を。
「貴方は隠していますよね? 本当の目的について。帝国の未来や何やら言ってますが、具体的な事は何も明かしていない。それを知りたいんです、私は」
「何を言い出すかと思えば……先程言った事が真実だ……嘘偽りは無い……」
そうは言っているが、信じられる訳が無い。
しかし今は、これ以上きき出す事は無理だろう。
それに、最上階へと向かうのが先だ。きっと、そこにレジー・シンクレアが囚われている。ウィルバートと同じ様に。
「話はこの戦いが終わった後にじっくり訊かせて貰います。だから大人しくしていてください」
銃を下げ、立ち去った次の瞬間だった。
「――やはり甘いな……!」
テレンスの上げた声で、再びそこを向く。
「敵に背後を見せるとは笑止千万……!」
「……! 辞めろっ!」
俺は彼の姿を見て、咄嗟に叫んでいた。
テレンスの手にはいつの間にか、懐に持っていたであろう拳銃が握られており――引き金に指が掛けられていた。
俺はそれを阻止しようと、彼の元へと走る。
「もう遅い――」
だが、阻止する事は叶わず――。
パンッ!
と、弾を一発、自らの頭に放った。
俺が駆け寄った頃には全身の力が抜け、地に倒れていた。
「……何故ここまで……」
彼は――テレンス・フォーミュラは、自ら命を絶ったのだ。
「……当然、死んでる、か……」
屈んで死体を調べるが、結果は同じだ。
「――くそっ!」
悔しさのあまり、拳を地面に叩きつける。
一体、何がこの人をここまでさせたんだ!




