百十九話 リブリーラ城攻略戦 二
最近忙しく、更新が滞ってしまい申し訳ございません。
なるべく早く投稿します。
それは十人弱の帝国兵達だった。
「まだ城内に敵が……押し通るしかありませんね」
身構える俺達に対し、その中の上官であろう男が動きを見せる。
「ふむ……貴様らに降伏すると言う選択肢は無いみたいだな……ならば――」
男が部下に視線で合図を送ると、人影に隠れていたそれを目の前に引き摺り出す。
「え――ウィルバート……?」
それは――その人物は、手足を縛られたウィルバートだった。
そして、上官らしき男はウィルバートのこめかみに、ライフルの銃口を突きつける。
「この者の命が欲しくば、投降しろ」
彼が言い放った言葉は、ウィルバートが人質だと意味するそれだった。
「人質と言う訳ですか……厄介ですね」
「くそっ……汚い真似を……!」
「敵に通す礼儀など持ち合わせていない。早く武器を捨て、ひれ伏せ」
カミラとアルベールの言葉を切り捨て、銃口でウィルバートの頭を小突く。
ウィルバートはそれにすら反応を示す事も無く、自分が膝を着いている地面を見つめるだけだった。
しかし、俺達がどうする事も出来なくて静止している時――。
「――どうしてだよ」
そんな彼がいきなりにして声を発した。
ただ静かに、この緊迫した状況に刃物を入れる様に。
「どうして……こんな事するんだ――父さん!」
ウィルバートの発言は驚くべきものだった。
父さん――確かに彼はこの場の誰かをそう呼んだ。
誰なのか。それはギロリと睨む視線が答えを出していた。
「……まさか……!」
彼の視線の先には、こめかみに銃口を突き付けている、上官の男が冷静な眼で睨み返していた。
「貴方が、帝国第三陸軍大佐、テレンス・フォーミュラ……!」
俺が発した言葉には肯定も、否定もしなかった。
だが、ウィルバートの怒りに満ちた表情が物語っていた。
実の父のこの行いが許せないのだろう。
「実の子に銃口を向けるとは、帝国も落ちたものだ」
「貴様とて差程変わらんだろう。炎剣だったか、貴様も反乱軍の一人。もっとも、今はそちらに寝返った様だが」
――いいや、ラルフよりこいつらの方がタチが悪いかもしれない。
「本当にそうですか? 私にはクーデターを起こし、シンクレア家当主を牢に入れて、この地域を支配した貴方達……いえ、帝国軍の方が余っ程許せないと思いますけど」
まだ憶測に過ぎないが、自分の考えをテレンスにぶつける。
「ウィルバートを助けに行った時、牢には意外な人物、レジー・シンクレアが囚われていました。彼を牢に入れたのは、帝国第三陸軍、貴方達ですよね?」
「……ふん……」
テレンスは黙ったままだった。だが、代わりにウィルバートが答え始めた。
「……そうだ。シンクレア公は元々反乱軍に加勢するのは反対だったんだ。それを見兼ねた父さん達は、彼を牢に入れ、その真実を隠して裏からウェスティント州を操る事にしたんだ。あたかも、彼が兵に指示を出している体で……当然僕はそれを止めようとした。でも……」
「反逆罪で、彼と一緒に牢へ入れられた……そうだよね?」
「ああ。全部、エリカの言う通りだ」
レジーが牢に囚われていた時点で、当然疑問があった。何故、囚われているんだと。
その疑問に説明がつくのが、ウィルバートの答えだ。
ここに来るまで、もしかしたらそうじゃないかと薄々考えていた。
「ウィルバート君の話が本当なら、反乱軍に加わっているのは、州では無く軍だけ……どう言う思惑があって、こんな事を?」
「どうもこうも無い。これが帝国が歩むべき道――ただそれだけの事だ」
……こんなのが帝国の歩むべき道だと……?
「……ふざけないで。これが本当に正しい道なの? 殿下を犠牲にして、国を乗っ取って……戦火をばらまいて!」
「何を言われようとも、我々の考えは変わらない。帝国が歩む道も――未来もだ」
やっと、ウェスティント州での本当の敵が見えてきた。
作戦を開始する前、俺達はずっと領主であるレジー・シンクレアが敵だと思っていた。
だが違う。本当の敵は第三陸軍、こいつらだ。




