百十八話 リブリーラ城攻略戦 一
俺も二人が気付かぬ内に居なくなっていた事に驚く。
「え……いつの間に……?」
「一階への階段を上がるまでは居たはずだ! はぐれたのか……はたまた――」
アルベールの言う通り、一階に戻るまでは確かに二人は居た。適度に目を配り、確認していたのを覚えている。
だが、何故かその辺りから二人の姿をちゃんと確認していない。しようとも思わなかった。
「いや、それは無いだろう。ここまで一本道、戦闘も無かった。はぐれようが無い」
アルベールの言葉を否定する様にラルフは言う。
「――それに、この状況はとてつもなくおかしい。見てみろ」
そう言ってラルフは城門を開けようとする。
「この通り、門が開かない」
「なっ!? 開かないだと!?」
慌ててアルベールが扉に体当たりするが、開く気配も無くビクともしない。
「……一体、どう言う事ですか?」
「さあな。ただ、普通じゃない事だけは分かる。扉には鍵が掛かっていないからな」
冷静な様子を見せるラルフの横を通り過ぎ、俺も念の為にその扉を調べる。
……確かに鍵は掛かっていない。しかし、扉は開かない。
『久遠、その扉から魔力を感じるわ。いえ、その扉だけじゃない、この城全体から』
魔力? じゃあ魔法で開かない様に細工されているのか?
『ええ。ただし、扉自体に魔法を施している訳じゃない。城全体に。恐らくだけど、魔法によって城が支配されているんだと思うわ』
城全体を支配……。
「……エリカ。考え込んだ様子をしているが何か分かったのか?」
ヴァレと話していたと言っても、皆からは黙り込んでいるか、物思いにふけっているかのどちらかにしか見えないだろう。
そんな俺を見たアルベールがこれ見よがしに問いてくる。
「うん、多分だけど――」
ヴァレから聞いた話を自分の考えの様に伝えた。
アルベール以外はヴァレの存在を知らない。この方が都合が良い。
「その意見に俺も同感だ。この状況、魔法的なものと考えて良いだろう」
「ええ……ですがエリカさん、良くそんな突拍子も無い考えに至りましたね?」
アルベールは素直に納得してくれたが、カミラは俺の考えに疑問を抱いていた。
もちろんそう来ると思って、それの答えを用意しておいた。
「はい、自分でもそう思います。しかし転移魔法、二人が突如消えた理由、それ等を考慮して推理すると、魔法的なものが仕掛けられているのでは無いかと言う答えが出ました」
「……良いでしょう。今はそう言う事にしておいてあげます」
明らかに俺の事を怪しんでいるな、カミラ。
でも今はそれで良い。この一件が終われば本当の事を話すつもりだ。
「はい……まあ、城全体は言い過ぎかもしれませんが」
「いや、案外間違ってないだろう」
俺の考えを更に肯定するのはラルフだ。
「ラルフも何か分かったのか?」
「ああ、ここに仕掛けられた魔法、その術者について心当たりがある」
「本当なの、ラルフ?」
「城全体に魔法、その推測が正しければ、お前達も知っている王国全体に仕掛けられたそれと類似していると思わないか?」
確かに……ある一帯に魔法を仕掛ける。その点が類似している。
「恐らくその類の魔法だ。出入口を塞ぎ、俺達を外へ出さない魔法。窓から飛び出そうとしても、魔法障壁によって弾かれるだろうな――こんな芸当が出来るのは組織一の魔法の使い手……それか――」
『――ふふ、ご名答。流石は紛いなりにも内の人間だ』
「な、何だこの声は!?」
何処からとも無く聞こえる声が、ラルフがそれを言い終わる前に打ち切った。
「やっとお出ましか。そうか、やはりお前がこの城を支配していたか」
『うん、王国から彼に飛ばして貰ってね。人手が足りないからってね。君も手伝ってよ、ラルフ』
「冗談を。全部知っているんだろ? 俺がお前達を裏切った事を」
『まあね。試しに言っただけさ』
ラルフはその発する主が分からない中性的な声と円滑に話している。
あちら側にもこっちの声は聞こえているのか。
「貴方が二人を攫ったの? 私達の目を盗んで」
試しに俺も何処の誰か分からないそいつに疑問をぶつける。
『そうだよ、エリカ。この城に仕掛けた魔法を使ってね』
どうやらちゃんと伝わっている様だ。
「二人は何処なの?」
「さあね。僕の所まで来たら教えてあげるよ。最上階――三階の大広間までね」
そこまで来いと言う事か。
「じゃあ待ってるよ。君達にはその選択肢しか無いんだから――」
そこからその声は聞こえなくなった。
「行くぞ、三階の大広間に。どっちみち外には出られない。前進するのみだ。」
話を聞く暇も与えずに、ラルフは先陣を切って先を急ぐ。
「彼に対しての疑問は増えたが……」
「それも今は置いておきましょう。私達も行きますよ、二人共」
ラルフの後を追い、俺達は三階の大広間へと行く為に、二階へと向かった。
そして、何事も無く三階に上がる階段前広場へと差し掛かる。
「――あれは――」
すると、階段を塞ぐ様に待ち構える人影が数名分あった。
「――来たか、侵入者共」




