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探偵の異世界生活  作者: わふ
第三部 帝王戦役編
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百十七話 ウィルバート救出

 

 長い通路を抜けた先には、鉄格子が並ぶ空間があった。地下牢に着いたんだ。


「くそ、牢の数が多いな……」

「ですが、見張りの兵は見当たりません。追っ手が来ない内に早く、手分けして探し出しましょう」


 牢を一つ一つ確認していく。

 殆どの牢は空。ウィルバートを探し出すのに、そう時間は掛からなかった。


「――! ウィルバートっ!」


 牢のベッドに腰掛け、俯いているウィルバートを発見した俺は、間髪入れずに声を出す。

 彼はそれに反応し、顔を上げる。


「――君は……エリカ、か? 何でここに……それにその姿は……」


 薄汚れた服に、やつれた顔。投獄されてからかなり時間が経っているらしい。


「待ってて! 今扉を破壊するから!」


 牢の扉に手を伸ばし、あの時の様に爆発魔法を発動する。

 扉は吹き飛び、土煙が上がる。


「ゴホッゴホッ……一体何なんだ、いきなり……」


 ウィルバートは咳き込みながらも、牢の外に出る。


「助けに来たんだよ。貴方が反逆罪で捕まったって聞いてね」

「僕を助けに? 全くもって訳が分からない……君のその髪も……」

「とにかく話は後。今は早く逃げるよ!」


 ウィルバートを連れて脱出しようと足を動かそうとしたが。


「ま、待ってくれ!」


 と、彼はその場を動こうとはしなかった。


「そう言う事なら、もう一人助けて欲しい人が居るんだ」

「もう一人?」

「ああ、僕が収監されていた隣の牢屋に居る」


 そう言って、ウィルバートは隣の牢へと足を向ける。

 俺も牢の中を覗く。

 そこには、一人の男が居た。中年くらいの男だ。彼も同じく、衰弱し切っている様子だ。

 ウィルバートにこの人は誰なんだと訊こうとした時、彼の口からとんでもない言葉が飛び出してきた。


「シンクレア公! 大丈夫ですか?」


 ウィルバートはその男の事を、シンクレア公と呼んだ。


「え? ウィルバート、それってどう言う事?」


 その男に呼び掛け続ける彼に口を挟む。

 シンクレア公……まさかこの男が、ウェスティント州の領主の……。


「……何だ――ウィルバート君、何故君は外に……」


 男がこちらに気付き、掠れた声を出す。


「シンクレア公……! 良かった……エリカ、この扉を壊してくれ!」

「う、うん」


 戸惑いながらも牢の扉を破壊し、その男を解放する。


「う……何が起こってる……君は一体……」

「エリカ・ライトです。彼――ウィルバートが投獄されていると聞き、助けに参りました。それよりも、貴方はもしかして……?」

「……私はウェスティント州現領主、レジー・シンクレアだ」

「なっ……それは本当何ですか?」

「エリカ、信じてくれ。彼は本当にシンクレア公本人だ。これにはその複雑な事情があるんだ」


 ウィルバートは必死に訴え掛けてくる。

 こいつがこんな嘘を付く理由は無い。

 それにこの男の顔は新聞で目にした事がある。レジー・シンクレア、その名前を挙げられた記事で。

 だがしかし……。


『分からないわね。領主と言えば、ここら一帯で一番偉い人でしょ? そんな人がどうしてこんな場所に居るの?』


 ヴァレの言う通り、信じ難い話だ。

 彼が反乱に加わって、軍を動かしているのならまだしも、こうして投獄される可能性は一も無い筈。

 一体何が起こっているって言うんだ……。


「……分かりました。その話も後でお聞かせ願います。取り敢えず今は、一刻も早くこの場を去りましょう。歩けますか?」

「ああ、大丈夫だ……」


 今優先すべきは、この城からの脱出。

 俺は二人を連れて、地下牢の出入口へと急ぐ。


「エリカさん、無事ウィルバート君を発見したんですね」


 既に出入口に集まっていたカミラ達三人と合流を果たす。


「カミラ教官まで……それに……」


 アルベールとラルフ、二人の事を知らないウィルバートはどう反応すれば良いか困っていた。

 それは三人も同じだった。

 しかし、それはウィルバートにでは無く、もう一人の方。レジー・シンクレアに向けてだ。


「エリカ……彼はもしかして……」

「話は後で。とにかく脱出を優先しよう」


 真っ先に疑問を口にしようとしたアルベール。

 それに続く後の二人の意思も、半ば強引に押しのけて城からの脱出を試みる。

 通ってきた通路を通り一階へ――。

 ――そして、正門付近へと辿り着いた。


「……不自然だ」


 全員が思っていたであろう事を、ラルフが言葉にした。


「……ああ、俺も思っていた。どう考えてもおかしい」

「うん、不自然と言うよりは、不気味だね」


 もしかしたら異常と言う言葉も当てはまるかもしれない。

 その訳は、脱出しようと駆けているリブリーラ城には――兵の姿が誰一人見当たらないのだから。

 攻め入った時はあれだけの兵が居たと言うのに、今はまるでもぬけの殻。音の一つも立ちやしない。

 正直言って薄気味悪い。


「明らかに罠ですね。どうしますか、シンクレア公――」


 カミラが()()()()()()()レジーに問い掛けた――。


「――! 皆さん、お二人が……!」


 しかし、彼女は驚愕する。

 何せ、そこに居る筈――居た筈だったレジーの姿。そして、ウィルバートの姿が無かったからだ。


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