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探偵の異世界生活  作者: わふ
第三部 帝王戦役編
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百十五話 リブリーラ城

 

 十一月二十八日。深夜。


「敵襲、敵襲! 正門から四名! 至急増援を頼む!」


 夜の影が掛かるリブリーラ城を――。


「このまま突き進む。遅れずについて来い」


 ――ラルフを筆頭に駆け抜ける。

 それも、リブリーラ城の正面――正門からだ。

 カチコミかと思う様に正々堂々と。


「何者だ! 止まれ!」


 反乱軍は俺達を止めようと奮起する。


「やはり数が多いですね。流石は敵の砦と言ったところでしょうか」

「帝国軍に王国軍、それに……」


 襲い掛かる無数の反乱軍を退けながらも、ウィルバートを助けるべく先に進む。

 何故こんな事になったのか。何故反乱軍と戦っているのか。

 ――それは俺達が今、ウィルバート救出作戦を遂行しているからだ。

 その作戦とは――。


「くそ……! ラルフ、もっとマシな作戦は無かったのか?」


 戦闘中、アルベールがラルフに問い掛ける。

 この作戦はラルフ立案の元で遂行されている。


「これが一番手っ取り早い。それに他に作戦が無かった」


 ラルフが立てた作戦、それは――。


『――作戦は、真正面から城へと侵入する』


 昨日のラルフの言葉だ。

 つまり彼の作戦は、作戦と言えるものでは無く、ただ単に城へと攻め入ると言う事だった。

 聞いて呆れる。


『昨日調べて、他に侵入出来そうな場所も無かったし、この方法しか選択肢は無いんじゃない?』


 それはそうだが……。

 あの時自信満々に語るラルフの様子を見て、真剣にそれを聞いていた俺が馬鹿みたいだったなって、そう思っただけだ。


『まあとにかく、こうなった以上気が抜けないわ。注意しなさいな』


 ああ。いざとなればお前の力も貸してくれ、ヴァレ。


『ええ、任せなさい』


 頭の中でのヴァレとの会話を終え、戦闘に集中する。


「反乱軍か。改めて考えると、ちぐはぐな軍勢だ」


 ラルフの言う通りだ。

 敵兵は帝国の軍服を着ていたり、王国の軍服を着ていたりと一貫性が無い。


「所詮は寄せ集め。臆する事はありません」

「それを言うならこちらも同じ様なものだろ。雑兵と言う意味では確かだが」


 カミラとラルフは多くの敵が襲い来る中、軽々とそれをいなしす。


「な……何なんだこの二人……強すぎる……!何者なんだ!?」



 そして、恐れを成す敵兵を退けて、道を切り開いてくれる。

 流石だ。戦闘に手馴れている様子を見せつけてくれる。

 一方俺は、敵の攻撃を凌ぐだけで精一杯。まだまだ未熟だと言う事を実感させられる。

 だが今はウィルバートを助ける事だけに専念しよう。

 とにかく、体を動かすんだ。今は。


「ラルフ、早く地下牢へ!」

「分かっている。こっちだ」


 その後も激しい戦闘を繰り返しながら地下へ降り、目的の場所へと近付いていった。


「この奥の筈だ」


 地下牢へと続く石畳の通路。敵が居ない薄暗い一本道。

 ……何か変だ。静かすぎる。


「よし、一気に駆け抜けよう!」


 そんな不安とは裏腹に、気持ちが前のめったアルベールが、二人と入れ替わりで先陣を切る。


「……! 駄目ですアルベール君!」


 ――カミラがそんなアルベールを止めようと手を伸ばす。

 一瞬何故、彼女がそんな行動に至ったのか分からなかった。

 だが数秒後、その理由が理解出来た。


『――その油断、貰った』


 アルベールの背後の物陰から、殺気の刃が姿を現す。


「――っ、防の陣!」


 間一髪だった。気配に気付いたアルベールが咄嗟に刻印を発動させ、鋭い短剣の一撃を防いだ。


「伏兵……!?」


 くそ、全く気付かなかった。闇に乗じて隠れていたのか……!


「アルベール君!」

「くっ、大丈夫です……!」


 アルベールは慌ててこちら側に身を引く。


「……刻印か。まだまだ未熟で若いが、それだけでは無さそうだ」


 不意打ちを防がれた奇襲者は、ゆっくりと姿を見せる。

 その正体は三十代くらいの男。軽装の戦闘服に包まれた鍛え上げた肉体。フードから見え隠れする灰色の髪に、傷だらけの顔に鋭い目付き。

 そして何より目を引くのは、右腕に彫られた狼と月の刺青。


「やはりこちらに来たか。エリカ・ライト」


 深く耳に刺さるドスの効いた低音を発し、武器を短剣から大剣に持ち替える。


「エリカの事を知っている……? 何者だ、貴様!」

「級友を助けるべく、敵陣に乗り込んでくるとは立派な意思だ。しかし、無謀は命取りとなる」


 男はアルベールの問いを無視して、好き勝手に発言する。


『この男、色々知っているみたいね。私達についても、彼についても』


 ああ、どこの所属で何者かは知らないが、俺達が侵入してきた時点で素性を把握し、目的を把握した上でここに潜伏して居たんだろう。

 敵兵が居なかったのも、ここに俺達を誘き出す為だったんだろう。

 同時にこの男は、兵に指示を出せる程の立場を持った人物だと言う事が分かる。


「……なるほど。そう言う事ですか」


 カミラがその男を観察してから、何か分かった様子で深く頷く。


「エリカさん。どうやら私達、相当運が無いみたいです」

「え? カミラ教官、それってどう言う……」


 運が無い? カミラはこの男を知っているのか?


「……確かに。カミラさんの言葉の通りみたいだな。エリカ、彼の右腕を見てくれ」


 アルベールに言われて、男の右腕――狼と月の刺青を見る。


「あれに何かあるの?」

「ああ、刺青が示す意味に」


 刺青が示す意味……?


「――紺碧の月。あの刺青は、紺碧の月の団員の証です」

「え……紺碧の月……?」


 真剣な眼差しで語るカミラに思わず聞き返す。


『紺碧の月……確か、皇帝を殺害したかもしれないって言う……』


 金さえ用意すれば、どんな仕事も請け負う傭兵団。例えその仕事が血泥に塗れていても……。


「……まだ、それだけなら良かったのかもしれません」

「ああ、厄介なのはこの男自身だ。その灰色の髪に、顔に張り付いた無数の傷……そして、紺色の大剣。ヴェイン・クラーク、紺碧の月の団長だ」

「ふ……」


 ラルフがヴェインと呼んだ男が不敵に薄笑いを上げる。

 紺碧の月の団長……だと……!


「開戦日以来か、炎剣(えんけん)


 否定もせずにその男――ヴェインはラルフの事を炎剣と呼ぶ。


「見たところ寝返ったみたいだな」

「元々俺はこちら側だ」

「スパイと言う事か。我々、紺碧の月にはどうでも良い事だが」


 ヴェインは、ラルフからカミラに視線を移す。


「……そちらも見た顔だ。数年前、公の場で目にした程度だが」

「あら、それは恐悦至極ですね。かの有名な傭兵団の長に認知されているなんて」


 カミラは思っても無い事を言い放ち、刀を構える。


「紺碧の月……油断出来ない……!」


 彼女に釣られ、俺も刀を構える。


「その構え、四方一刀流か……どうやら、そちらも引く気は無いらしい。ならば、こちらもその誠意に答えよう」


 ヴェインがそう言うと、後にした通路から騒がしく足音が聞こえ、かなりの数の兵が現れる。


「紺碧の月の増援か!」


 その兵はヴェインと同じ様な戦闘服。それと腕の刺青で、それの団員だと直ぐに判別出来た。


「退路は絶たれたみたいだな」

「我々も鼻からお前達を逃がすつもりは無い。ここで死んで貰う!」


 ヴェインの掛け声と同時に、敵が一斉に襲い掛かって来る。


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