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探偵の異世界生活  作者: わふ
第三部 帝王戦役編
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百十四話 救出作戦

 

 俺とカミラの話が終わったのを見計らって、アルベールが口を開いた。


「さて、これからどう動くかだが……先ずは街で集めた情報を出し合ってみよう」


 アルベールの提案で、それぞれ街で聞いた情報を話した。


「成程……集めた情報はどちらもほぼ一緒か」


 めぼしい情報は二つ。

 一つは馬車の馭者も言っていた、反乱軍を殺害していると言う謎の人物。

 もう一つは、ウィルバートの件。


「反乱軍の殺害の件は一旦置いてきましょう。そちらの方は考えても仕方ないと思います」


 カミラの言う通り、その件は気に止めるくらいで良いと思う。

 それについて、今俺達が出来る事は無い。


「考えるべきは第三陸軍大佐の息子……ウィルバート・フォーミュラの件、カミラさんはそう言いたいんですか?」

「そうではありません。ウィルバート君の件にも同じ事が言えます。恐らく彼が捕まっているのは、この街で最も警備が固い場所……領主であるシンクレア家が住まうリブリーラ城。助けに行くとして、この戦力じゃどうにもなりません。アルベール君も同意見ですよね?」

「ええ、それは確かに――でも、エリカはどうでしょうか」


 二人の視線が俺に集まる。


「お前、今にも助けに行きたいって顔しているぞ?」


 そんな顔してる覚えなんて無いんだが。


『あら、助けに行きたいのは本当でしょ?』


 まあ、そうだな……。


「うん、助けに行きたい。危険なのは分かってるけど、その覚悟の上で」


 彼はシフィーの友人だ。ここで助けに行かなかったら、あいつに会わせる顔が無い。

 それに、反乱軍に好き勝手されるのはいい加減嫌だ。


「カミラさん、貴方の意見は筋が通ってます。しかし、俺はエリカと同じで助けたいと思ってしまっています。危険だと分かっているのに」


 俺とアルベールは、カミラに答えを問う。

 後は彼女が頷いてくれたら、ウィルバートを助けに行ける。


「……全く、若い子は怖い物無しですね。良いでしょう、彼を助けましょう」

「カミラ教官……!」

「私も教え子の危機をみすみす見過ごせる程、出来た人間ではありませんからね」


 そうだ。カミラにとっても、ウィルバートは大事な教え子。

 ああは言っていたが、彼女がそれを我慢出来る筈が無かったんだ。


「ただし、私の指示に従って貰います。何せ、向かう場所は敵地ですからね」

「もちろんです。この中ではカミラさんが一番その役に適していると思います」

「ありがとうございます。では早速、作戦を立てましょう」


 こうして話は纏まった――かに思えた。


『その作戦、俺にもお聞かせ願おうか』


 空いた窓から声が聞こえた。つい最近聞いた声が。


「はっ――!」


 声の主が窓から部屋の中に入ってくる。


「お前は、さっきの……!」


 その人物は、街中で俺を襲ったあのフードの男だった。


「何!? こいつがエリカ達が言っていた奴か?」

「先の今で、性懲りも無く何をしに来たんですか?」

「屋根の上で大体の事情は把握した。その奪還作戦、俺にも協力させてくれ」


 警戒するアルベールと刀に手を掛けるカミラを気にも止めずに、男は突拍子の無い事を言う。


「何だと?」

「巫山戯るのも大概にしてください。なぜ貴方が? 私達がそれを静かに頷くとでも?」


 二人は真っ当な意見をぶつける。


『訳が分からないわね。あいつは敵なんでしょ?』


 ああ、敵の筈だ。校舎の屋上で俺達を襲い、宮殿のあの場所にも居た。

 でも……。


『でも?』


 今のこいつからは敵意が感じられない。


『……確かに。武器を取り出す素振りすら無いわね』


 恐らく彼はかなり強い。殺気立ったカミラを前にして、棒立ちって言うのは有り得ないと思う。

 もしかして、あの時言っていた事は本心なんじゃないかと、今はそう思ってる。


『あの時? 手を組めってやつ?』


 そうだ。ヴァレはどう思う?


『さあ? 私には分からないわ。貴方が信用出来るって言うなら、話くらいは聞いても良いんじゃないかしら?』


 そうだな。俺もそれに賛成だ。


「……聞かせて。手を組めって言う言葉の真意について。それは、貴方達反乱軍に協力しろって事なの?」

「いいや、違う。お前に協力すると言う意味だ」

「ほざかないでください。あの時、エリカさんに剣を向けていたのは、脅して貴方達の計画に無理矢理、協力させる腹積もりで居た証拠では?」

「それも誤解だ。お前達も知っての通り、俺は彼女からは敵だと認識されていた。だからあれは、ああしなくては話も出来ないと思っての事だ。まあ結果的にこうして悪手になったが。ついでに言っておくが、断られた時点で剣を引く気だった。こうなった以上信じて貰えないと思う……だから」


 男は得物である二本の剣を、投げてこちらに寄越した。


「敵意は無いと言う事だけ示しておく」


 武器を手放して……話の筋もちゃんと通っている……。

 あの時俺が反撃したのは咄嗟の事だった。あれが無ければ、本当に手を引いていたんじゃないか?

 彼は本当にただ、協力したいだけなのかもしれない。


「分かった。信じるよ、貴方の言葉」

「エリカさん!」

「俺も信じて良いかと」

「アルベール君まで!」

「大丈夫です、カミラ教官。彼に敵意はありません」


 認めないと言いたげなカミラに目で訴え掛ける。


「それは……そうですが……」


 カミラの言いたい事は分かる。

 彼の行動原理が理解出来なくて、信じたいのに信じ切れないんだ。そこは俺も気掛かりだ。


「私達に協力するって事は、貴方は反乱軍を裏切るって事なの? どうして? そして、貴方は何者なの?」


 気になる事を一気に問う。


「裏切るか。そう捉えて貰って良い。理由は、悪いがまだ明かす事は出来ない」

「それは虫が良すぎませんか?」

「だから悪いと言っただろう。口止めされているんだ」

「誰にですか?」

「それも悪いが口に出せない。ただ、その人物はお前達が言う正規軍に属している人だ。もちろん、それだけで信用しろとも言わない」


 ……ふむ。やっぱりでまかせを言っている様には思えない。


『こうなると賭けね。信じるか否かの』


 ()()明かせない、その言葉に賭けても良いと思う。何れ話す気があると言う意味で捉えて。


「……分かりました。もう良いです。最後にそのフードを取ってください」

「ああ、そのつもりだ」


 カミラに言われ、男はローブのフードを取って姿を明かす。

 フードが擦れ、揺れる赤色の髪。

 顔にはやはり、その半分を占めるくらい大きな火傷の跡があった。

 容姿と声から考えて若い男。


「――ラルフ・ハワードだ。悪いが例の如く、詳しい素性は明かせない」


 男はそう名乗った。


「……確かに、エリカさんの言う通り、敵意は無さそうですね」


 カミラは何とか納得してくれた様だ。


「信用……は出来ませんが、取り敢えずは協力と言う形で」

「それで良い。そんな事より、救出作戦についてだ。何か案はあるのか?」


 ラルフが俺達に訊くが、誰も口を開かない。

 当たり前だ。それを今から話し合うつもりでいたから。


「そうか。ならこう言うのはどうだ?」


 ……ラルフはそれを提案した。



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