百十一話 ウェスティント州
十一月二十七日 ユスティア帝国ウェスティント州 街道
翌日、俺達は朝一にあの村を発った。
「お客さん、珍しいですね。こんなご時世なのに、リブリーラに赴くなんて。旅人ですかい?」
「ええ、三ヶ月前帝国入りしたんですか、この騒動に……全く参っちゃいますよ」
あれから二日間帝国西部を横断した。そして現在、馬車に揺られながらウェスティント州の州都、リブリーラへと近付いていた。
「リブリーラって交易の街って呼ばれてるんですよね?」
アルベールが馬車の馭者に話し掛ける。
「そうですそうです、帝国の交易口、なんて呼ばれていて、共和国や周辺諸国との交易が主ですね。それが理由で一年中賑やかな街ですよ。こんな状況じゃ無ければですがね……」
『確かに。賑やかな雰囲気で、と言う訳にはいかないわね。一刻も早くこんなゴタゴタ収まればいいんだけれど』
ヴァレが他人事の様に、俺の中で呟く。
何を静観的な事を。俺達が止めるんだろう?
『……久遠、貴方は――いいえ、そうだったわね……』
ヴァレはぎこち無く同意する。
? 今何か言いたげだったが……。
『何でもないわ。気にしないで頂戴』
彼女の冷たげな口調を最後に、内側での会話は終わった。
一体何なんだ? こっちは同調した時以来、ヴァレの心が読めない分もどかしい……。
「どうしたんだ? 何やら険しい顔をしているが……」
次は外側から、アルベールが話し掛けてきた。
「大した事じゃ無いよ。彼女と……ちょっと……」
「ああ……成程……」
アルベールはそれ以上訊かないでくれた。
「そうだ、お客さん。旅人のお客さん達には関係無いと思いますが、近頃反乱軍の連中を殺し回っているって言う輩がいるらしいですぜ」
「……殺しですか?」
「ええ、リブリーラにも最近現れたらしいです。まぁ俺達市民からしたら有難い話ですがね」
反乱軍を殺し回っている奴か……。
「……エリカ、気に止めておこう」
「そうだね……」
そして、新たな思惑と共に、俺達はウェスティント州の州都、リブリーラへと到着した。
話に聞いていた通り、街並みは賑やかとは掛け離れており、まるで生きている感じがしなかった。
取り敢えず情報収集や、この先の準備も兼ねて、この街に一泊する事となった。
「よし、十五時に宿に集合しよう」
「うん、じゃあ後でね」
アルベールとは別行動で街を調べる事にした。
人気は多いが、活気のない街を歩く。
「リブリーラ……」
ウェスティント州……と言う事は第三陸軍が主な兵か。
『そうね、帝国兵じゃないのも居るみたいだけれど』
白の軍服……王国軍だろう……。
『彼の話、本当だったみたいね。兎に角、もう少し街を見て回りましょう』




