百八話 脱出
ジャックスは二本の槍を突き出す。
「こちらも油断は出来ぬ様だ……! 受けてみよ、双撃と謳われる所以の一撃を!」
そして、槍に魔力を纏わせ、風を集める。
『いきなり大技ね……でも、今の貴方なら……!』
ああ、今なら何でも出来そうな気がする。この状態なら!
「エリカ! 俺の後ろに!」
「アル!?」
彼の攻撃に迎え撃とうと身構えた時、アルベールが割って前に出る。
「奥義――風神、双撃翔!」
魔力と風を纏った凶悪な二本の槍で、アルベールの真正面に突っ込んでくる。
「示してみせますジャックス卿――刻印、防の陣!」
しかし、その槍はアルベールに突き刺さる寸前で止まる――いや、アルベールが止めた。
アルベールの前にはその名の通り見えない壁があった。それがジャックスの一撃を受け止めている。
『これは……どうやらあの刻印とやらの力ね。通常では目視出来ない魔力の壁を作って、彼の攻撃を防いでいるみたい』
なるほど……だったら今俺がやるべき事は一つ。
「エリカ!」
「ああ!」
――今なら出来る。このジャックスの隙を突いて攻撃を喰らわせられる!
「――はぁぁぁぁぁ……」
今出せる最大の火力を――刀を両手で天に掲げ、魔力を集める。
「アル、もう少し耐えて!」
「問題無い!」
やがて魔力は光を帯びて実体化し、刀身を武装する。
――凄い力だ。これ程のもの、体感した事が無い。これもヴァレのおかげか……!
『ええ……こちらも一撃で沈めなさい! 久遠!』
ああ!
「アル!」
「よし!」
アルベールは防壁を解除し、正面から姿を消す。
すると、障害が無くなったジャックスの攻撃が迫り来る。
「む……!」
同時にジャックスは俺の刀の姿を見て驚愕する。
一撃だ。一撃で!
「――無の型、天威一閃!」
振り下ろす。その一撃を――。
刀身にまるで見合わない大きさがある、地を這う衝撃波を放ち、ジャックスの風を、魔力を、双撃を断ち斬る。
「――見事だ、若き獅子達よ――」
衝撃波はジャックスを吹き飛ばし、玉座側の壁へと打ち付ける。
ジャックスはそれでも立ち上がろうとするが、かなりのダメージなのか、中々体制を立て直せない。
『今の内よ! バルコニーに!』
分かってる!
「アルついてきて! バルコニーに出るよ!」
「あ、ああ!」
俺達はバルコニーへ続く硝子戸を突き破り、屋外へ出る。
『そのままバルコニーから飛び降りて!』
飛び降り!? わ、分かった!
「飛び降りるよ!」
「は、はぁ!? お、おい、ちょっと待――」
戸惑うアルベールの手を強引に取り、夜空へと身を投げる。
「お、おいいい! 本当に大丈夫なのか!?」
強烈な風の抵抗を受けながら、俺達の体は地へと落ちていく。
『心配無いわ! 2人共、空を舞いなさい!』
ヴァレが俺達の体に何かの魔法を掛ける。これは……。
「うわあああああ――――ん、俺達……」
ふ、成程、お前の狙いはこれだった訳か。
『ええ、これなら空に浮いてる城でも、楽々脱出出来るって訳』
先程までの風の抵抗が無くなり、体がふわりと浮く。
「……もしかして、俺達今、空を……飛んでいるのか?」
「うん。みたい、だね……」
「みたいだって……お前な……」
空を飛ぶ魔法なんて聞いた事無いぞ……。
『でも、おかげで助かったでしょ?』
……まあ、それもそうだな。
「……良く分からんが、これで脱出出来たな。エリカ、これからはお前に付き合う。一緒に帝国を取り戻そう……!」
「アル……」
アルベールは力強く頷いてくる。
ああ、仲間が居ると言うのはここまで心強いのか。
『心外ね、私も居るわよ?』
勿論ヴァレもだ。
これなら……この力があれば本当に成し遂げれるかもしれない。いや、成し遂げるんだ。何としても……!
ヴァレ――。
「――アル、これからよろしく……!」
「……ああ!」
『ええ、任せなさいな』




