百一話 魔核
これで心置き無く、事件に集中出来る。
奴がそれを知っているとなれば、何処からかあれの真相が漏れたと言う事になるが……大体は予想はつく。
予想通りなら、あいつを問い詰めないといけないな……。
「……! 終わったのです! 解析完了したのです!」
考え事をしていると、不意にアリスが声を上げる。
どうやら、解析が終わったらしい。
自分は体を起こす。
「もう服を着てもいいか?」
「あ、はい、もう大丈夫なのです」
その返事を聞き、心電図電極パッドを外して、服を着て立ち上がる。
「――それで、魔力武装が数分しか維持出来ない原因は分かったのか?」
「その前に、基礎的な確認を……アグレさん、人間の体にある、魔動脈と言うのはご存知ですよね?」
「ああ、もちろんだ。血管とは別の、人間の体内に無数にある、魔力が流れる脈の事だろう?」
魔動脈があるから自分達は魔法を使える。魔動脈は血管並に重要な気管だ。
「そして、全ての魔動脈は普通の血管の様に、心臓となる場所に繋がっているんだったな」
「魔核ですね。心臓と対になる、右胸に存在します。魔力を生成する場所なのです」
その魔核から生成された魔力が、魔動脈を通って全身に行き渡り、魔法が使えると言う訳だ。
ちなみに、一度に魔核に保持出来る魔力の量は人によって違う。これを一般的には魔力量と言う。
「ここからが本題なのですが……あの実験で貴方がたの魔核を弄った……いえ、元の魔核の性質を変えました」
「ああ、そうか」
「あまり驚かないのですね」
「エレナがそう予想していたからな。だが、魔核は心臓と同じくらい大事な器官だ。下手に手は出せないと言うことで、それ以上は踏み込まなかったが……続けてくれ」
「はい……魔核の性質を変えたと言うのは、生成する魔力を変えたのです。通常の人体では持ちえない、生成出来ない魔力に……」
その魔力のおかげで自分は普通では無い魔法や、魔力武装を使えるんだな。
「……魔力武装が、数分しか維持出来ない原因は分かったのか?」
「はいなのです。アグレさんは元は、あまり魔力の才には恵まれてなかったですよね?」
「ああ、魔力保持量は少なかったな」
「それが原因なのです。魔核が生成する魔力の性質を無理矢理変えた事で、魔力消費がコントロール出来なくなってしまっているのです。魔力武装は通常、保持している魔力を少しづつ消費し、その状態を維持するのですがアグレさんの場合、魔力武装を発動すると、一気に保持している魔力を消費してしまうのです」
だから数分しか使えないのか……。
「……厄介だな……何とか出来ないか?」
「すみません、こればっかりは……ですが、通常の魔力武装と比較して爆発的な身体強化が出来ると言う点があるので、別に劣っていると言う訳では無いのです」
「ん? そうなのか? そんな実感は無いが……」
「ええ、この目で見た訳では無いのでどれ程差があるのかは分かりませんが……恐らくは維持時間を引き換えに、通常より強化幅は大きい筈なのです」
……ふむ、早速試しておきたいが……昨日使ってしまって、まだ魔力が溜まりきっていない……。
「それで、もう一つの疑問なのですが……」
疑問……ああ、この力を消せるかどうかか。
「……恐らく、消せるかと。まだ完全には魔核に魔力が馴染んでいないので、通常の魔力で上書きすれば……どうしますか?」
「いや、このままで良い」
「……そうですか……そう答えると予想はしていましたが……」
「折角調べてもらって悪いが……さっき言った事を成すには、この力が必要だ」
「いえ、良いのです」
「今回の調査結果は、ラルフの為に使ってやってくれ」
「アグレさん、もしかして最初からそれが目的で?」
自分は小さく頷く。
「後は頼む」
「……はい、アグレさんの意思、ちゃんと受け継ぎますのです」
託すべきものは託せただろう。
後は――。
「アグレ!」
「ん?」
ゼノが小走りで階段を下り、こちらへやってくる。
「何だ? そんなに慌てて」
「大変なんだ! あんたが王国全域で指名手配されている!」
何だ、その事か。
大方、ここに戻ってきたルカにでも聞いたんだろう。
「え!? な、何故なのですか!?」
「それについて、色々話したい。今後の事も。ゼノ、ステラ達を一階に集めてくれ」
「わ、分かった」
ゼノは一階へと戻っていく。
「自分達も行こう」
「はいなのです!」




