百話 罪
地下へ向かうと、相変わらずアリス・ガルシアは機会を弄っていた。
「おい」
そこに背後から声を掛ける。
「あ……来てくれたのですか……」
「お前が呼び出したんだろう」
「あ、そうでしたね……まさか、来てくれるなんて思って無かったので……」
……そうだな、自分でも信じられない程、素直に来たと思う。
「それで、話と言うのは――」
「自分の体について……もっと言えば魔力武装について、そうなんだろう?」
「……その通りなのです。アグレさん、あの時こう言ってましたよね? 魔力武装状態を維持出来るのは数分って」
「ああ、確かに言った」
「実は通常、魔力武装はもっと長い時間、約数時間は維持出来るのです」
なるほど。だからあの時、こいつは妙な反応を示したのか。
「そうか……ずっと疑問だった。数分しか使えない力で創世の騎士団は納得するのか、と。だが、お前の話でやっと合点がいった。本来は、数時間維持出来る力だったんだな」
「そうなのです。アグレさんは何らかの原因で、その力を数分しか維持出来ない状態なのです。なので、アグレさんの体を調べさせて欲しいのです。もしかしたら、本来の力を引き出せるかも……上手くいけば、力自体を無くす事も……」
この力をか……もう無意味だが……。
「どうしますか?」
「……やってくれ」
「分かったのです。では、そちらのベッドに服を脱いで、横になってください。あ、上半身だけで大丈夫ですので……あっち向いてますね……」
アリス・ガルシアは背を向ける。
自分は武器と上着、上の服を脱ぎ、ベッドに横になる。
「良いぞ」
「は、はい……では……」
アリス・ガルシアはこちらを向き、病院の検査等で使われる、心電図電極パッドの様な物を自分の体に貼り付ける。
「暫くそのままにしておいて下さい」
そして、機械を操作し始める。
「…………なあ、聞いてもいいか?」
そんなそいつの背中に、静かに話し掛ける。
「? はいです」
「もう一つ、疑問に思っていた事があるんだ。あの時何で、自分を引き取ったんだ? 自分を迎え入れた時から、事件に使おうと思っていたのか?」
その疑問をぶつけた時、そいつのキーボードを叩く手が一瞬止まった。
だが、直ぐに手を動かした。
そして少し経った後、答えが帰ってきた。
「……その時はまだ、そんな考えは微塵も持って無かったのです。貴方を実験体に利用しようとしたのは、咄嗟の決断でした……結論から言うと、ただ助けたい、その思いからなのです。それ以外は全く考えて無かったのです。ですが、失敗出来ないと言う焦りから、貴方を……すみません、都合の良い話ですよね……」
「そうだな……だが、それが真実なんだろう?」
「はいです……」
「ならもう何も言わない。真実から目を背けたくは無いからな」
これが最後だ、受け止めよう。
「話してくれてありがとう。少し安心した、最初から裏切られて無くて、良かったとな」
「アグレさん、貴方は……すみません。私の過ちは一生かけてでも」
「そうか。なら頼みがある。今、王都で起こっている事件が終息したら――――」
自分は頼みを伝えた。
「――え? そんなの……いくら何でも聞けないのですよ!」
アリス・ガルシアはこちらを向く。
「頼む、自分はどうしても創世の騎士団が許せない。あいつらを捕まえるのには、お前の力が必要なんだ」
「で、でも……私は……分かり……ました……」
「ああ、お前はそうやって頷くだけでいい。罪は全部自分が背負う」
「……いえ、それは私が背負います。それも込みで頼みなのです」
……こいつ……。
「……ああ、ありがとう……アリス」
「! ……はい……!」




