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探偵の異世界生活  作者: わふ
序章 幼年期編
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プロローグ ある探偵の果て

 

 屋敷の一室で一人の男が煙草を吸いながら立っていた。

 彼は暗い部屋である人物を待っている。


「……」


 彼はある事件に巻き込まれていた。

 この屋敷で起こった連続殺人、という恐ろしい事件に。

 嵐で外は雨、風が強く、雷もなっており外に出ることは難しい。

 数分後、ある人物が部屋に入ってきた。


 その人物は笑いながら、呼び出された用件を男に問う。


「……分かっているんだろ?」


『何の事ですか』と笑いながら、とぼけた振りをしている。

 そう、とぼけた振りなのだ。


「……とぼけるな、全て分かっている……」


 何せその人物は……。



「……この連続殺人……あんたが真犯人だ」


 犯人なのだから。

 

「……何を根拠に?」


 犯人の顔から笑顔が消える。

 

「あんた以外の人間では、犯行が不可能だからだ」


 犯人は自分以外にも犯行は可能だ、第一の殺人は自分には不可能だ、と反論する。


「いいや、あんたにしか出来ない」


 男はそうキッパリと言い切る。


「確かにあんたは第一の殺人を実行出来ない事は、アリバイが物語っている……だが、その殺人が第二の殺人より後に実行されていたら犯行は可能だ」


 犯人は黙り込み、苦い顔をする。


「俺達は犯行順番を誤認させられ、まんまとあんたのトリックにハマったわけだ。それ以降の殺人はあんたにはアリバイが無い。第一の殺人が不可能だったから、連続殺人であるこの事件で、あんたは犯人候補から除外された。だが、それももうお終いだ……あんたの番だ、反論はあるか?」

「……」


 犯人は黙っていたが、数十秒後口を開く。


「流石ですね、探偵 来栖 久遠(くるす くおん)さん?」


 犯行の発言と同時に雷が鳴り、その光で犯人が照らされる。

 その顕になった犯人の正体は、白髪が美しい、十八歳くらいの少女だった。


「……真犯人はあんただ……如月 茜(きさらぎ あかね)……!」

「ふふ……ふふふふふ……」


 犯人……如月 茜は不気味な笑い声を発する。


「見事です……来栖 久遠さん! 素晴らしいです!」

「……何故、こんな事をした?」

「単純なこと……恨んでいたからです。あの人達を」

「……なるほど、あの事が動機か」

「ええ……流石です、来栖さん! 動機までも見抜くなんて!」

「……という事は、まだ続けるつもりか?」

「勿論じゃないですか! この屋敷の人間を全員殺すまで、私の復讐は終わりません!」


 茜は狂気的な笑顔を見せながら話す。


「……ですが貴方は例外です、来栖さん」

「……」

「貴方はあの事には関係ありません。貴方は、あの憎たらしいおじい様に依頼されてここに来ただけですから」


 彼、探偵 来栖 久遠はこの屋敷の館主にある依頼を受け、この屋敷にやって来た。

 依頼の内容は、館主に届いた脅迫状の差出人を見つけ出して欲しいという依頼だった。


「ですので! どうでしょうか、私と手を組みませんか?」

「何だと?」

「私と手を組んで他の連中も殺しましょう! 手伝って頂けたのなら、遺産の半分……いいえ! 私自身丸ごと、貴方に差し上げます!」

「……それは、俺への依頼ということか?」

「そう受け取って頂いて構いません…………どうでしょうか! 来栖さん! お受け頂けますか?」


  茜は右手を久遠の方へと差し出す。


「さぁ、私と共に参りましょう!」


 久遠は手を払い除け。


「お断りだ」


 と、はっきり言った。


「そうですか……残念です……」


  茜は俯き、右手を引っ込めた。


「なら……」


 茜は懐から拳銃を取りだし、久遠へと銃口を向ける。


「死んでいただくしかありませんね……!」

「っ……!!」


 久遠は茜を拘束しようと飛び出すがその前に――――パーン。

 と一発、銃口から放たれた銃弾が久遠の体の血、肉を侵食する。


「ぐっ……!」


 久遠は血を流し倒れ込む。

 銃口を向けながら歩いてくる茜の姿が彼の瞳に朧気で映る。


「折角チャンスをあげたのに、馬鹿な人ですね……」


 久遠は顔を上げて、茜の方を見る。


「殺……人……犯なんかと……手を組むなんて……ごめんだな……殺人……しか……思い付かなった……哀れな奴とは……な……」

「……だったら……どうすれば……どうすれば良かったんですか!?」


  茜の顔は怒りの表情に染まった。


「……俺は……探偵……だ……俺に……依頼してくれたら...あの事だって……暴き出してやった……もう少し……人を頼れば……良かったんじゃ……ないか……?」

「……」


 茜は無表情になり、引き金に指をかける。


「そうですね……でもそれは――頼れる人がいる人の言葉ですよ?」


 再び銃口から弾が放たれた。

 その弾は久遠の背中に穴を開ける。

  茜は部屋の窓を開けて、久遠の瀕死の体をそこから下の海に投げ捨て、窓を閉める。

 これまでの事件、そしてこれから起こす事件の全てを、久遠を失踪した事にして擦り付けるつもりだった。

 最も、今屋敷にいる全員を殺して、屋敷ごと爆破するつもりの茜にはあまり意味は無いかもしれないが。


「……さようなら……探偵 来栖 久遠さん」



 ◇◇◇



 一方、海に投げ出された久遠にはまだ意識があった。


(……なんだ……?)


 海面から海中へと射し込む光が久遠を照らす。


(あれ……は……)


 光の源が久遠の方へと向かってくる。


(あれは……確か……オカルトとかで……よく目にする...…魔法……陣……)


 久遠が目にしたのは円形の魔法陣だった。

 魔法陣は久遠を包み込み、光が増す。


(何が……う……意識が……)


 久遠は魔法陣と共に消えていくり

 この世界での探偵 来栖 久遠は、息絶えた。



 ◇◇◇



「……なんじゃ?息絶えてもうたか。うーむ、仕方あるまい、転移ではなく、転生という方法をとるかのう」


 来栖 久遠だったものは、円形の魔法陣が描かれた床の上に横たわっていた。


「うむ、依代は...わしの魔力で作るとするかのう」


 さっきから言葉を発している人物は、金色の美しい長い髪をしている少女の姿をしている。

 幼い顔立ちと共に幼い体をしているが、声はどことなく大人びいており、言葉遣いもそれ等とは釣り合わない。


「作ると言ってもこやつの魂は消えかかっておるし、作る暇がないのう……うーむ……そうじゃ!その手があったわい!」


 その人物は小さな手の平を来栖 久遠の体にかざす。

 数秒後、来栖 久遠の体から碧く光る球体が出てきた。


「ほう、いい色をしておるな、こやつの魂。わしの胎内に取り込むには些か勿体ないのう。まぁ、一年もすれば在るべき体に戻る。今少しの辛抱じゃ」

 

 手の平から数センチ浮いている球体を腹部辺りに近づけると、幼き体の中に入っていった。


「うむ、これで一年後には産まれてくるじゃろう……そういえば遺体はどうするかのう……」


 少女の姿をしたその人物は少し考え込む。


「ま、送り返せば問題ないじゃろ 折角だしのう、こやつを殺したあの小娘の前に転移させてやろうかのう...ムッフッフ……そうと決まれば転移じゃ!」


 その瞬間、床に描かれた魔法陣が光る。

 すぐに光は消えそこには、さっきあったものが消えていた。


「よーし! これで後始末も完了じゃ! 上に戻ったらこやつの為に部屋を用意してやらんとな!」


 腹部を撫でながら、近くにあった木製の階段を登っていく。


「そういえば……この方法……産まれてくる時、性別を決められないんじゃったな……ま、性別なんて些細な問題じゃ! 今は、こやつが無事に産まれてくる事を祈るとしようかのう……」



 ◇◇◇



 そして一年後。

 あの金色の髪をした人物は椅子座り、ある白い布に包まれている者を抱いている。


「ふぅ……無事に産まれてくれて良かったわい。うーむ、出産があんなに大変とはのう……思っても見なかったわ」


 金髪の幼き少女が抱いている者は赤ん坊だった。


「大変だったんじゃぞ?何せこの体を大人の姿に戻して、村の医者も呼んで大騒ぎだったんじゃからな?」


 その時、赤ん坊が目をゆっくりと開ける。


(……ここ……は……あれから……どうなったん……だ……?)

「まぁ、転移してきた時と性別は違うが……ん?」


 金髪の少女が、赤ん坊が目を覚ました事に気付く。


「……お、目を覚ましたか!」

(……なんだ……この少女は……? それに……ここは何処なんだ……? 室内か?)


 そこは、木製の家の中だった。

 部屋の中は、洋風の様な内装だった。


(とにかく……起き上がる……? なんだ……? 体が……言うことを……!?)


 赤ん坊は...赤ん坊になった来栖 久遠は自分の体を見て驚愕する。


(何故俺は……赤ん坊になっているんだ……?)

「そういえば、まだ名前を付けてなかったのう……」


 金髪の少女は悩み顔をしながら、赤ん坊の名前を考える。


「うーむ……うむ! エリカ! エリカで行こう!」


 手の平を握り拳でぽんと叩き、赤ん坊の方を見る。

「これからお主の名前はエリカ! エリカ・ライトじゃ!」

「ちなみにわしはエレナ・ライトと……うむ、こんな事赤子に言っても理解出来ないかのう」


 金髪の少女、エレナは顎に手を当て、考え込む。


(……どういうことなんだ……? なぜ俺が赤ん坊になっている……? 思い出せ……海に投げ出された後のことを……)


 来栖 久遠……もとい、エリカ・ライトは思い出す。


(確か……海面から光が……その後……そうだ、魔法陣……あの時の魔法陣に何かされたのか……? それとも……この少女が……?)


 エレナの顔を見る。


「んー? なんじゃ?」


 エレナは赤ん坊の視線に気付いて顎に手を当てたまま、赤ん坊の顔を微笑みながら見る。


「これからよろしくのう、エリカ!」



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