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生徒会、ないしょの欠員2  作者: キュー山はちお
3章 役員2人、お借りしてます
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3章の7 はっきり言って大きなお世話です

「オレは次の選挙で生徒会長になるが、副会長には女を指名すると決めている。これはオレのポリシーであって曲げられない。オレに副会長に指名される女は、オレのことが好きとは限らない。しかし最初はオレに関心を持たなくても、時間がたつにつれ自然とオレとキスしてもいいと思うようになるのだ」

 会場の女子から、悲鳴に近いブーイングが起こった。

「だがオレとしては、どうしても校内キスにこだわるものでもない。規約を尊重して行動していく用意がある。まあ現状はオレ以外の人間が生徒会長だから、こうした規約が役に立つかもしれないな。副会長のマヤは本当はいまの会長のことが好きではないのに、生徒会執行部を維持するために隣にいるだけかもしれないしな」

 スシ会長(中身カニ)とマヤ副会長(中身クロハ)は、タキの口ぶりにカチンときた。

 タキが発言を終え、ステージを降りた。

 代わって登場した反対派の代表は、2年2組の野球部マネージャー・サヤ。タキの口ぶりにプンプン怒りながらの登壇となった。

「新条項に反対のサヤです。野球部のマネージャーをやっています。今回、スシくん並びにマヤさんの友人として意見陳述(ちんじゅつ)させてもらいます。新条項は、はっきり言って大きなお世話です。人権侵害です。もちろんあたしも生徒の校内でのキスを礼賛らいさんするものではありませんが、新条項にはメリットがほぼないばかりか、泥縄第二高校生徒会の対外的な印象が地に落ちるデメリットが計り知れません。生徒会規約にそんな条項がなくたって、生徒会長と副会長は良識の元に行動します。むやみやたらとキスがはびこる校内になるはずがありません。とにかく反対です」

 ステージを降りて運営席の後ろを回り自席に戻ろうとしたサヤを、マヤ副会長(中身クロハ)が呼び止めて、意見陳述に礼を言った。

 会場はなお騒然としていた。

「クロハ書記次長(中身オロネ)です。生徒会執行部が対応を協議するため、一時休憩をいただきたいと思います。10分後に再開といたします!」

 生徒はめいめい席を立ち、いったん教室に戻ったり、トイレに行ったり、あるいはその場にだらだら残ったりした。

 役員席でスシ会長(中身カニ)、マヤ副会長(中身クロハ)、キラ、クロハ書記次長(中身オロネ)が困っていると、選挙管理委員会の副委員長・レサがやってきた。

「きょう選挙管理委員長のカニくんが欠席のようなので、副委員長として来ました。スシくん、面倒なことになったわね。ナハから事前に申請はあったの? そう。それだったらナハにあることないこと難癖なんくせつけて、新聞部プレゼンツのイベントそのものをやめさせる手もあったかもね。そういうやり方を好まないスシくんだろうけどね。正常化予算案の採決は、生徒に拍手してもらって『拍手が多いので可決成立』で済ませていいけど、生徒会規約の一部改正となるとそうもいかない。生徒全員による無記名投票だわ。投票箱と投票用紙がいるから生徒会室から持ってくるとして、それを役員席に置いて生徒に見せる。新条項に賛成する勢力に『ここまで執行部を動かした』というのを見せる。そうやって生徒総会活性化の目的は大部分果たされた、というムードに持っていく。そしてね、ごにょごにょ」


 泥縄第一高校の生徒総会では、壇上だんじょうのスハが生徒会規約と運用について説明していた。生徒会規約には「立候補1名の場合は信任投票を行う」と確かに記載されていることを明らかにした上で、実際の立候補者が毎年1名しかいない現状では、長らく信任投票が行われていないこと、またそのきっかけが、16年ほど前に周囲に働きかけられて渋々立候補した生徒が信任投票で信任されず、「言われたから出たのに」と納得できないまま他校に転校したことにあることを紹介した。

 クモル書記長(中身スシ)とクモヤ副会長(中身マヤ)は、スユニをじっと見つめた。

 スユニはスハの説明に「ふん、なかなか的確だな」という顔をしていた。

(クモル書記長(中身スシ)だけど、いいぞスハさん、そのまま押し切れ!)

 スハは説明を終えて役員席に戻った。生徒から見えないようにクモヤ副会長(中身マヤ)がたてになり、クモル書記長(中身スシ)がスハの頭をなでて「いいコいいコ」した。

「ひそひそ、スハですけど。クモル書記長(中身スシ)、スユニ氏がこのままおとなしく引き下がるかどうか、予断を許しません。執行部をあげつらう目的で、もしかすると過去の予算と決算の矛盾を突いてくることがあるかもしれません。なので、あと1時間くらいたったら、もう1回旧校舎に行って、今度は予算関係の資料を持ってきてください。きちんと反論しようと思ったら必要になるので」


 泥縄第二の生徒総会は、佳境かきょうを迎えていた。

 残る議事は採決だけ。正常化した予算案と、生徒会規約新条項について。

 壇上にキラが上がり、採決の進め方を説明した。

「最初に正常化した予算案の採決をします。これについてはこれまで特に異論も寄せられていませんし、この生徒総会でも反対意見が出ていませんので、拍手の多い少ないで承認判断に替えさせていただきたいと思います。続いて生徒会規約の新条項追加の件ですが、生徒の投票の対象となる条項の案は『生徒会長は副会長に校内でキス禁止』となります。投票の前に、投票そのものの見送り提案に賛成か聞きますので、生徒のみなさんは拍手で意思表示をお願いします」

 キラがステージで話している間に、役員席のクロハ書記次長(中身オロネ)がマヤ副会長(中身クロハ)のそでをそっと引っ張った。

「ひそひそ、クロハ書記次長(中身オロネ)、どうしたの?」

 クロハ書記次長(中身オロネ)は極力目立たないようにして、マヤ副会長(中身クロハ)を体育館ステージ下の秘密化身室に連れて行った。ステージ袖のカーテンの裏にある入り口から秘密通路をくぐり、入り口ドアの鍵を開けて中に入ると、マヤ副会長(中身クロハ)はクロハ書記次長(中身オロネ)にうながされるまま、2人で化身交換を始めた。

「クロハとしては、なぜここで化身を交代するのかわからないんだけど?」

 クロハはぼやいたが、わからないなりにオロネに合わせた。2人は超特急で化身を入れ替え、マヤ副会長(中身オロネ)とクロハ本人となってまた元の道を戻り、役員席に戻った。

 大半の生徒の目は、役員席に置かれた投票箱に注がれたままだ。

 キラに代わってマヤ副会長(中身オロネ)がステージに上がり、まず正常化した予算案の採決を行うと宣言した。

「これから正常化した予算案の採決を行います。収入8万6500円を加え、今年度生徒会予算の収支を一致させ、赤字を解消して正常化する議案です。賛成のかたは拍手をお願いします」

 会場全体から割れんばかりの拍手が起こった。

「ありがとうございます。本件は可決、成立いたしました。これ以降、暫定ざんてい予算に代ってこのたび可決成立した予算が機能いたします。続いて」

 会場は、拍手はまだか、拍手させてくれ、拍手したくて仕方がない、というムードになった。

「生徒会規約新条項の件です。新条項の内容は先ほど書記長のキラさんが説明した通りなので省略します。こちらは生徒全員の投票となります」

 会場の、拍手はまだか、拍手させてくれ、拍手したくて仕方がない、というムードはさらに高まった。

「投票の前に、生徒会執行部から投票見送り提案をいたします。こちらの採決を先に行います。賛成のかたは拍手をお願いします」

 再び会場から割れんばかりの拍手が起こった。ナハは席から立ち上がった。

「!」

「それでは投票見送り提案が承認されました。なお、今回の議決について意見のあるお方もおられると思います。本日から3日間、放課後に生徒会室にて生徒のみなさんのご意見をうかがう機会を設けますので、ご意見がおありのかたは生徒会室まで足を運んでいただきますよう、お願いします。これで10月生徒総会を終わります。次回予定は2月、議題は次年度予算原案審議です。ありがとうございました。本日はこれで放課となりますので、各自下校もしくは部活動に移ってください」

 大半の生徒は「自分らが面白がってできた新条項案だったけど、投票とか面倒なことにならなくてよかった」という顔をして散っていった。一部は「あれ、生徒会規約の新条項の賛成、反対を聞かれなかったけど、いいの?」という顔をしていたが、おとなしく帰っていった。「まったく納得がいかない」という顔をしているのは、わずかだった。

 泥縄第二の生徒総会は、午後2時20分に終了した。途中10分の休憩をはさんだのに所要50分。前回4月の4時間30分から比べると、大幅なスピードアップを果たしたことになる。


 泥縄第二の生徒会室にスシ会長(中身カニ)、マヤ副会長(中身オロネ)、キラに加えて、選挙管理委員会の副委員長・レサが顔をそろえた。

「マヤ副会長(中身オロネ)ですけど、あれ? クロハちゃんどこ?」

「キラだけど、そのへんにいるんじゃない?」

 メンバーが全員そろっていないが、マヤ副会長(中身オロネ)はレサを早く女子バレーボール部の部活に出させてあげようと、生徒総会終了後のミーティングを早く済ませてしまおうとした。

「マヤ副会長(中身オロネ)ですけど、ありがとうレサさん。あなたのアドバイスがなかったら、こうもすんなりいかなかったわ」

「レサとしては、生徒がそんなに『キス禁止』にこだわってると思えなかったからね。新条項に賛成するつもりで『採決見送り』のところで拍手しちゃった生徒も、もしかしたらいたかもしれない。でも、先に議案採決見送り提案の採決をすると2回も言ってあるし、そもそも生徒会規約改正は無記名投票でやる決まりだから、勢いで拍手しちゃった生徒も文句言いにくいと思うよ」

 レサが言い終えるか終えないかというとき、生徒会室にノックもなしにナハが飛び込んできた。


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