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1400文字で完結・気ままな恋模様こそ女心

作者: 鳳仙花

私は平凡な女子生徒に過ぎないけど、悲しい事に担任教師と仲が悪い。

ただ不仲だと断言はできても、肝心の原因やら要因は断言できない。

強いて言うならば波長が合わないくらいだろうか。

それくらい曖昧かつ不透明で、だけども直感的ながら決定的で、学校に関わるような話をするだけでも不思議と気まずい空気となってしまう。


だから私はぼんやりと苦手意識を持ってしまい、なるべく無関心で居た方が日頃のストレスにならないと無意識に判断するようになっていた。

でも、それが不仲の拍車をより一層かけてしまったと言えるかもしれない。


「おい」


担任は乱暴な言い方で声をかけてきた。

最初は敬語だったような気がする。


「なんですか?」


対して私は使い慣れてない敬語で返す。

多分、前の私は担任に対して友達と話すような軽い口調だったはず。


「お前、最近授業中に寝ている事が多いそうだな。過眠症か?」


「なんとか症が何か知りませんけど、単なる寝不足だと思います。夜、上手く寝付けないことが多いので」


普通の感性を持っていれば、今の話を聞いたらスマホの触り過ぎや長時間の通話でもしているのだと切り返してくるだろう。

でも、この担任は突拍子も無く親身に訊いてきた。


「……そうか、心配事があるんだな。それが積もり積もって睡眠障害を引き起こすのは珍しい話じゃない」


「なんでそうなるのですか?私は寝付けないと言っただけですし、身勝手な推測過ぎません?」


あくまで一歩身を引いた距離感で私は言い返す。

しかし、なぜかこのタイミングで担任は強く気にかけてきた。


「まだ学生の内は知らない事だらけで色々と余裕があるから、自分の異常に対して見て見ぬふりをしがちだ。俺も昔はそうだった。そして今になって思えば、自分の不安を消す対処法を知っておけば良かったと思っている」


「私に何を言いたいのか、よく分かりません。自分語りというやつですか?」


「まぁ、なんだ。お前自身のためにもちょっとした魔法を教えてやる。よく眠れる魔法だ」


急にファンタジーっぽい事を口にしてくる。

もしかして担任なりに学生の感性に合わせようとしたのか。


「魔法じゃなく、安眠方法の言い間違いじゃないですか?」


「いいや、魔法だ。まず寝る前にストレッチ、そして時間かけて深呼吸の瞑想だ。それから何もせずに大人しく眠る。慣れない内は訓練のように頑張る必要はあるが、慣れたら短時間で効果が出るようになるぞ」


「それは……温かい牛乳も飲んだ方が良いですか?」


「そこは自由でいい。とりあえず脳と体に向けて、これから私は休みますよーと(しら)せる手段が必要なんだ。人間ってのは、意地でも習慣に従う生き物だからな」


「はぁ…?そうですか」


不本意ながら、つい(いぶか)しげな反応になってしまう。

おそらく私に気を遣ってアドバイスを送ってくれたのだろうと、おぼろげながら理解できる。

不思議な気分だ。

こんな気まぐれな私のために言ってくれているのは事実で、担任だからというより単純に気の良い人間として言ってくれたのだから。


でも、余計なお世話だよ。

(ひね)くれている私は自由気ままを最優先するし、どんな形であれ言いつけを守ること自体が億劫(おっくう)に感じてストレスを覚えてしまうもの。

ただ優しさをかけてくれた事だけは心なしか嬉しくて、私の味方で居ようとしてくれている彼の事を思ったら、それだけで安心できて私は深く眠れた。


もちろん、眠った場所は家じゃなく学校だけど。

だって先生に近い場所じゃないと安心できなくて上手く寝付けないんだもの。

それにせめて夢の中では仲良くしたいじゃない?

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