第14・5話:真・桜花無双
常日頃無一文です^^
お陰さまで総アクセス数14000突破致しました。
心よりお礼申し上げます。
このような拙作に数多くの読者様がアクセスして
下さることは私にとって本当に執筆の原動力になっております。
今回も前回に引き続き読者様から頂きましたご依頼で
執筆させて頂きました。
某有名アクションゲームが題材となっております^^
当初は大山君がまさかの主人公というご希望を頂いたのですが
あまりに難しかったのでマリサを据えさせて頂きました;
私の力不足で恐縮です。
なお今後もリクエストは心より歓迎致します^^
お気軽にメッセージで御依頼下さいませ!
それではどうぞ^^
西暦189年C国。落葉では大師となった大山フトシが暴虐の限りを尽くしていた。というかあまりに頭が悪いので政治なんぞが出来るわけもなく国が普通に崩壊寸前なのだ。その穴埋めを必死でしているのが秀才と名高い皇帝シキ。
”ぐふふ俺の名前は大山フトシ”
としか答弁の出来ないこんなアホなぞさっさとクビにすれば良いという話なのだかしかし、彼にはC国史上最強の武人が仕えているため各国の諸侯達はうかつに手出しが出来ないのであった。その名は
「八雲将軍御帰還!」
都、落葉の守りの要となっている巨大な鉄の門、通称”虎狼関”がゴゴゴゴゴと左右に開かれると一頭の馬に乗ったツインテールの少女が現れた。炎が揺らめいてるのかと見間違うほど見事な赤褐色の体毛、暴れだしたら大の男100人がかりでも止められないほど巨躯な馬、その名を赤兎。そしてそれに跨って見事に御しているのが一騎当千C国最強にして貧ゴス! 容姿端麗賢良方正の美少女、マリサ飛翔将軍その人である。極彩色の艶やかな文様の甲冑を纏い、右手には細身の体には不釣合いなほど大きな戟を握っている。その余りに重く長い得物は方天戟。彼女は数千はいるであろうモヒカンの兵卒誰一人にも目をくれることなく威風堂々と馬を進めていった。
彼女の向かった先は落葉内の西北に位置する金葉城だ。満開の桃の花と生い茂った新緑の草が清々しくも美しい城内の庭園で、池の鯉をやたら楽しそうに眺めている大山君。
「それで、キョウは今どのあたりに来ているのかしら?」
マリサがポンポンと赤兎の頬をさすりながら大師に聞けば
「グフフもうすぐやってくるウスロ宮」
マリサが彼を飼育している唯一にして絶対の理由がこれである。この大山君にはどこにいても劉邦の末裔であるキョウタロウの居場所が分かるという極めて特異にして迷惑な能力を備えているのだ。例えそれがジャングルにある神社というような有り得ない場所であってもである。
「物見より報告! 美月率いる連合軍おおよそ5万が虎狼関前に集結しております!」
と走ってきたのはモヒカン頭の兵卒である。
「その中にキョウはいるのかしら?」
「現在も確認作業を続けておりますがまだ発見報告は得られていません!」
ハァっと溜息のツインテール。興味をなくしたようにペタンと石畳の上に腰を下ろし
「精兵100人くらいで迎え打ちなさい」
シッシと”お下がりなさい”のジェスチャー。隣では大山君が池の鯉にエサをやっている。
「お、恐れながらそれでは迎撃は愚か時間稼ぎにもなりません!」
「じゃぁそこで18回目の自己紹介してるバカに槍でも持たせたら?」
「残念ですが彼が総大将です!」
「ほ、報告〜! 前線に出られて兵士を鼓舞しておりましたヨードー将軍が捕獲されました!」
「何ですって!?」
半ベソかきながら現れたのはやっぱりモヒカン頭。頭悪そうな兵卒の報告にマリサが立ち上がる。
「く、ヨードーの色香を持ってしても敵わないなんて相手はどんな化け物なの!?」
「はい! 一騎打ちが始まるなり
”キャー! なななななにこの可愛い子!”
とか奇声をあげながら近づいてきた青フチメガネをかけたグラマー美人が瞬く間にヨードー将軍を捕らえて
”お姉さんがたっぷりオメカシしちゃうんだからうふふふ今度は猫耳に首輪付けてにゃんにゃんにゃん”
と自陣の更衣室に引きずり込んで行きました!」
戦場にいらないものが設置されてる! などとは突っ込まず
「何ということ美月に大賢良師アヤが加勢したっていうの!? 確か香禁党は先の大戦で滅んだはずなのに!」
「ほ、報告〜!」
「今度は何よ!」
「キョウタロウ3兄弟が現れました〜!」
その知らせに待ってましたとばかりに目を輝かせたツインテール。勘弁してくれ。
「よ〜し! いよいよ俺の出番だわ!」
と名馬赤兎に颯爽と跨り、手にした戟を数度頭上で振るって旋風を起こした。吹き飛ばされた大山君は
「グフフフ俺の名前はな〜んだ」
と読者に謎の確認作業。正解者の方にはもれなく彼が自宅にやってきます。
「さぁ門を開けなさい。身の程知らず達にレベルの違いっていうのを教育してあげるから!」
と戟の先を物見櫓に向けて出陣の号令を出すと、既に勝利を確信したモヒカンの兵卒達は
「オー!!」
という地鳴りのような雄たけびをあげるのだった。
「はっはっは見ろモヒカンがゴミのようだー!」
とエレガントなセリフをのたまっているのは俺、劉邦の末裔キョウタロウである。趣味はスネ毛処理で口癖は”ザマーミロ”。後にC国史上最も仁徳の高い名君として祭られるホープである。サイン欲しいか。そんな俺の指揮の下、青龍円月刀を振るってモヒカンどもを掃除しているシロクマのように大きな男は愚弟のヒロシ。緑色の着物に牛革の胴当て。胸下まで伸びたストレートのつけヒゲがなかなかにむさくるしい。彼との出会いはそう、確か名門園田家の令嬢美月ちゃんが大山君討伐のための義勇兵を募っている時だったな。むさい男共しかいない廃村に突如現れたルビーの如き紅一点。オレンジ色の大きなリボンを揺らしながら壇上に立って
”皆さんどうか力をお貸しくださいね”
とニッコリ微笑まれて、俺と同じく鼻の下伸ばして首を縦に振っているクマがいたのでツナ缶で餌付けをしたのがキッカケだ。次々に現れるモヒカン共を演舞のように切り伏せていくヒロシを遠目に見つつ、俺は馬に跨らず寝そべって抹茶オーレのパックにストロー差して3時のティータイム。英国式だ。
「おいキョウ、お前もちっとは手動かせ!」
モヒカン第一波をしのぐとツキノワグマがハァハァと息を乱しながら振り返った。、
「黙れヒグマ。下僕のくせして主である俺にタメ口で命令とか貴様なにクマのつもりだ」
モヒカン軍団第2波到来。ほ〜らよそ見してると危ないぞ。ヒロシは”ちっ”と舌打ちして戦闘開始。
「頑張れ頑張れ今無双ゲージ溜めてるから、ドモホルンリンクルみたいに丹念にな。MAXになったら代わってやるただし30秒だけな」
「ええい口ばっかり達者なムシロ売りと兄弟になった俺がバカだったよ! どうやらその双剣は飾り物のタケミツらしいな!」
「……」
「え?」
「……」
「え〜〜!?!?!?」
人には触れてはいけないことがあるんだよヒロシ君!
「せりゃ〜! 我と思わんものは名乗りでんか!」
と蛇矛を片手に息巻いてるこの御老体はキョウタロウ3兄弟で最高齢でありながら何故か末弟の平八。赤い着物に虎の毛皮を腰に巻いてるワイルドな爺だ。モジャった白ヒゲがやっぱりむさくるしい。もう諸君の記憶からデリートされてるかもしれないので異次元的な解説をすれば部活紹介の時に真剣片手に出てきた柔道部顧問である。生まれる時代に失敗した人その1だ。たぶん今後もあんまり出番ないと思うのでここで存分に活躍してもらおうか。さぁ我が弟たちよ存分に武を振るうが良いわ。ふむ今度は黒ゴマオーレがいいな。
「お〜いヒグマ。ヒグマや。飲み物切れたぞ買ってこい」
「生死の境を紙一重で潜ってる俺にいうセリフかよそれ!?」
「うるさいなそんな雑兵如きに手を焼いていて美髯公の役柄が務まると思っているのかアナグマ。文句があるなら拠点兵長に格下げするぞ」
「倒されたら肉まんに変わるとかそんな斬新な役になってたまるか!」
「ならとっと黒ゴマオーレをサンクスで買ってこい。5分だけこの空になった抹茶オーレの出涸らし吸って我慢してやるわズズズズ」
チラリと連合軍の一味となった香禁党の陣を見たのだが天公将軍アヤさんの姿がないな。目の保養をしようと思ったのだが残念だ。とか思ったら猫耳カチューシャつけたやたら可愛い子が捕虜になってるではないか。弓なりの眉、切れ長の瞳。いったい誰だろうか、あんな萌え萌え武将いたかな。モヒカン共をバッタバッタと切り伏せて
「お前コソ真の桜花無双よHAHAHAピロシキ食うか〜!?」
と外人か何人か分からない孫堅さんに褒められているヒロシの背中に
「お〜いツキノワグマ」
「黒ゴマは後にしろ」
「いや、そうじゃなくてあそこで首輪つけられて”もうお婿にいけない”とシクシク泣いてる妹系捕虜は何と言う名前だ?」
「ああ。C国史上最も美しい舞姫と言われているヨードーちゃんだ」
ほほう。これは是非ともお近づきになりたいものだな。
「でも男だ」
ですよね〜あんな可愛い子が女の子の訳がない!
こうして押せ押せムードになって美月ちゃん率いる連合軍はあっという間に最後の砦、虎狼関の前まで来た、のだが。この大軍勢を前にして一歩も怯まず堂々と立ちはだかるツインテールの騎馬が一騎。体に不釣合いな戟を左右一回ずつヴォンヴォンと振り回してから馬が反り立つ程手綱を引き絞る。霊獣麒麟を彷彿とさせるような咆哮を発して前足を高らかに上げて空を掻いた。知らぬ者はいないあれは名馬赤兎だ。そしてそれを乗りこなせるのもただ一人、
「ごきげんよう皆さん。さぁ私の戟の錆になりたい方から順番にいらして」
その100万ドルの笑顔で放たれた投げキッスに一瞬皆が虜となって空には薔薇が咲き乱れた。しかし数瞬後
「ま、マリサだ〜!!」
「飛翔将軍だ〜!」
戦う前から軍勢が雪崩のように崩れ始めた。お、お前ら退くな! 戦え! 戦ってしね!
「皆さん戦って下さい!」
美月ちゃんが懇願しているというのに野郎どもは総崩れ。情けないぞ貴様ら! ズズズズ黒ゴマまだかな。
「逃げろ〜!」
「助けてくれ〜!」
「死にたくない〜!」
「ママ〜!」
「わ〜ん!」
収拾がつかなくなった。
「ここで逃げたら私のクッキー食べさせるわよ!?」
「「「「「突撃〜!!!」」」」
おお! さすが美月ちゃん! でもなんか使い方違くないか今のセリフ!? ”わ〜わ〜”と雄雄しく突っ込む勇敢な兵士達! 自らを襲ってくる目も眩むような槍衾にマリサはニッコリして……横薙ぎに戟を一閃! 前線の兵卒たちが噴水のように巻き上げられた。それはまさに暴風。一定のリズムを置いて千の単位で次々と兵卒達が中空にアラレのごとくばら撒かれていく。
「ぬるいったらありはしないわね!」
防ぎようの無い嵐が戦場を縦横無尽に駆け抜ける! あかん無茶苦茶やこの貧乳妖怪。こうなったら俺の腕の見せどころだ!
「良いかヒロシ、作戦だ」
ヒロシの目を見据える。
「言ってみろキョウ」
「まずお前があのツインテールを引きつけろ」
ゴクンとシロクマが喉を鳴らす。
「それから?」
「お前が倒せ」
「全部俺じゃね〜か!」
とうとう我らがキョウタロウ軍団にも破壊神の戟が奮われ始めた。アイフルでもどうしようもない。
「そらそら! どうしたのかしらこの兵隊さん達! ちょっとは抵抗なさいな!」
4万以上を残して虎狼関前に殺到して来た連合軍がわずか一騎の前に1万に満たなくなった。流石の美月ちゃんも
「せ、全軍撤退! 撤退して下さ……もが」
その口に手を当てたのは京都銀行のお付き合いより長そうな槍を携えた黒髪ロングの麗人。白銀の甲冑が実に神々しい。切れ長の目端で美月ちゃんを見つつ
「今しばらく待ってくれないか? あの戟を私の槍で食い止めて見せよう」
と静かに呟いた。美月ちゃんはこのお姉様の目を見たままコクンと頷くと名も知らぬ容姿端麗な槍使いは
「淡き光の下鮮やかに刺し穿て」
そう呟いて矢のような速さで死の嵐へと突っ込んでいった。
「月下美人!」
一喝の後に戦場に轟いた雷鳴の如き轟音と閃光。眩んだ目を瞬いて戦場を見据えれば火花を散らせて鍔迫り合うマリサと
「趙雲子龍!」
と呼ばれたお姉様。子龍姉様は歯を食いしばっているマリサとは対照的に口元には薄っすらと笑みを称えていた。
「元気そうだな八雲。あのような愚かな大師など祭って何を企んでいる?」
ヒドい言われようだ大山君。
「私だって好き好んであんなのをチョイスしたんじゃありませんわ!」
怒っていいぞ大山君。膠着していたせり合いだがギリギリと押し負けて来たのは何とマリサ。何者だこのお姉様。知ってるけど。
「ではその理由を聞こうか?」
何となく聞かないほうが良い。バシ! っとマリサは辛うじて槍を払いのける。二人には歩数にして10歩程の距離が出来た。マリサは息を乱しながらも自分を取り囲んでいる大軍勢を見渡して
「いるんでしょキョウ? 出てきなさいよ」
と仰る。子龍姉様は腕組みして
「私怨による敵討ちか? それとも大儀のための国賊討伐か?」
「いいえ。どっちも違います」
即答のツインテールに眉をひそめたお姉様。
「ではそのキョウとはお前にとって何なのだ?」
と言えばこの妖怪は頬をカーっと染めて……おお可愛い。
「な、どうしたんだ八雲?」
困惑気味ですお姉様。どうしよう名乗り出ようかな俺。
「キ、キョウは私の幼馴染で、それで、それでいつか私を迎えに……」
ゴニョゴニョと口ごもってる怪力美少女マリサって可愛ええのう可愛ええのうようし出ちゃうぞお兄ちゃん!
「なのに私を放って勝手に村を出て……」
ジワっと目に涙……って
「え〜!?!?!?!?」
素っ頓狂な声をあげてしまった俺にマリサ含めた全軍の視線が集中。
「するとこの乱の発端はお前のせいか?」
違います! 違いますお姉様!
「迎えに行くってどういうことキョウ君?」
美月ちゃん何で君が怒ってるの!? そんなフラグこの時代ではたってないよ!?
「キョウ、よくものうのうと俺の前に顔を出せたわね?」
ごめんなさい! 生まれ来てごめんなさい!
「ぐふふふ俺の名前は大山フトシ」
もうレギュラーだからそんな主張いらないよ! てかラスボスここに来て良いのかよ!
「成敗じゃ〜!!!」
平八爺が大山君ばっさり! 耐えろ大師! これでエンディングとか嫌すぎる!
アナコンダに飲まれながらもフルネームで自己紹介したガッツを見せてくれ!
「グフフフ」
やったよく耐えたぞ!
「ぎゃ〜!」
あかんかった! 今の無意味な時間差なによ!
「敵大将! 討ち取ったわえ〜!!」
良いとこだけもってくなこのチョイ役が!
目が覚めた。何かヒドイ夢を見たような気がする。チラっと大黒柱の壁掛け時計を見れば短針がピタリと4を差している。午前4時ジャスト。寝なおしても全く問題ないな、今度は極上ハレームな夢を見てニタニタとキモい寝顔を作ってくれるわフフフ、と反対側に寝返りを打てば目前にはすごく良い香りのする浴衣姿のマリサ嬢が0距離でスー、スー……。おお何とも可愛い寝顔じゃないか普段からおしとやかに振舞っていれば美月ちゃんにも全くヒケを取らないプリンセスなのに実に惜しいなさて俺も寝るとしようかうん。
その前に状況を整理しようか。
ここで考えられるケースは2パターンある。一つはマリサが俺の布団に入って来ているケース。次は俺がマリサの布団に入ってるケース。後者なら死ねる。すっごい死ねる。漂ってくる甘い香りと穏やかな吐息は俺の脳に血液を急激に送り込んでウトウトしていた意識を瞬く間に覚醒させる。脳内を荒らしつくした血液の暴走は今なお止まらず、今度は心臓へと狙いを定めて濁流となって押し寄せバクバクと胸を強く叩き始めた。さぁどうするキョウタロウ!