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アマリリスは夢を見る。  作者: 真中ユウ
アマリリス13歳
29/30

お兄様の春


クロードお兄様は容姿端麗な次期公爵家の跡取り。仕事はそつがなく、誰にでも分け隔てなく優しく、権力を振り翳す人間には容赦ない。公正な判断ができる次期宰相候補でもある。


いわば優良物件だ。


そんな優良物件だが、未だ婚約者がない。

理由はキャンベル家の方針『恋愛結婚』にある。


高位貴族の場合、早くから政略で婚約者を決めることも多いが、そうとも限らない。


お姉様は結婚相手を学園生活で手に入れたし、そうでなくともお茶会などでの出会いもある。

…が、そこはお姉様曰く、クロード兄様は仕事の鬼とのことだ。


次期当主という責任感から学園では学ぶことに集中し、お茶会などは必要最低限のみ。それは出会いなどない。



…筈だったのだけれど。




「お…おとうさま…!?」

「なんだい、アマリリ…スゥ!?」



突然の王宮への呼び出しを終えて帰路に着こうと馬車に乗って王宮を出て王城を抜けるタイミングでの出来事だった。



ぼんやりと外の景色を眺めて、本日受けた精神的な疲れを癒そうとしていた時にその景色が入り込んできた。



「…あ、あれはクロードだよな??」

「そう…ですわね」



クロード兄様が笑顔で女性と談笑している姿を見た。相手の女性に見覚えはない。



自分に下心がある女性…ならまだしも公爵家の旨みを求める女性には容赦なく冷たい眼差しを注ぐ、別名『氷の貴公子』の異名を持つ兄である。


家族であるお姉様や私以外に笑みを浮かべることは殆どないし、浮かべたとしてもあそこまで砕けた笑みではない。


人の恋愛、ましてや兄のそんな姿を見た気まずさがある。お父様も同じような気持ちだったらしく、ポツリと帰ろうか、と一言呟いた。


その後の馬車の中の空気は何とも言えない気まずさだった。例えば、家族で見に行ったオペラがドロドロの愛憎劇だった時のような気まずさだ。




***



屋敷に戻った後、アマリリスは正装を解除する。


ベットに寝転がり天蓋を見上げてぼんやりと考えるのはクロードお兄様のこと。

お兄様は今日、仕事で登城していたはず。

ということは仕事仲間の女性ということなのだろうか?



相手の女性に見覚えはない。

まぁ、当たり前か。



アマリリスは聡明だが13才の少女であり、デビュタントも迎えていない。貴族名鑑というものはあり勉強はするものの、基本的に姿絵が載るのは当主とその奥方、そして次期当主である後継のみ。



恋しているかもしれない兄の姿を見て、恋は盲目と思いつつも、羨ましさを感じる。


どこかで、『いずれ私も』と思うぐらいは、アマリリスも年頃の乙女である。




***



お兄様が傷付いている姿を見る。

美しい彼女と別れたから、と。


今までの次期当主としての威厳や自信をなくしたお兄様のそんな姿。

そんなのは、私が見たくないわ。





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