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アマリリスは夢を見る。  作者: 真中ユウ
アマリリス12歳
19/30

姉様のドレスを探せ⑤





姉様達に髪をアレンジされた。今日はサイドに髪をまとめられた少し大人っぽい雰囲気だ。この感じは私好みではある。



「アマリリス、出ていかないの?」

「リリア姉様のドレスもっと見ていたいの」



チャンスと言わんばかりに、このまま居座れ作戦に変更したのだ。とりあえずこれで大丈夫だろう。…パーティの間はどうするかはまだ思い悩んでいるが。



「そう?じゃあ気が向いたら出てきてね。私達はお母様と紅茶でも飲んでくるわ」


女同士積もる話もあるのだろう。お母様も朝食時は緊張している様子だった。6人の親と言えども親として子供の結婚式に出るのは初めてであり、何より娘だ。家から離れて暮らす事になる姉様を案じていた。



「…姉様が悲しむだけじゃない。お母様だって、お父様だって、みんな悲しむ」


それを見逃せるほどに私は強くない。

弱いからこそ全力で戦う。







「お嬢様」

「…ふぁい!?」



驚いた。思わず声が裏返ってしまった。



「足音を立てずに近づくのが良い執事ですから」

「…心臓に悪いからやめて」



先程の嫌味が混じった言い回し。さすがのアレクだと感心するが、本当に驚いたので出来れば控えて頂きたい。



「で、結局昨日の夢は回避できてないんですね」

「え…?」


あれ?私アレクに今日の夢のことは話ししてないはず。昨日の晩、お父様にちらりと釘を刺された気がしたのでアレクを振り回さないように控えていたのに。


『アマリリスもおいたは程々に』

…だいぶ直接的だったかもしれないわ。




「お嬢様の態度を見れば、何かあったというのは馬鹿でもわかりますから。」

「…酷いわ」

「お嬢様が動くとすれば夢のことかと思っただけです。…貴女は人の為に動く人だから」

「買い被りすぎよ。私だって嫌だもの。大切な人が悲しむのは嫌。私は私のために私が大切な人が傷つかないためにやっているのよ?私はそんな偽善者じゃないわ」



誰かがドレスを盗むということは、それを行う人に利があるということ。その利が何か分からないが、その他人の利を無視して私は動き、私が傷つかない為に動くのだから。




「まぁ、貴女はそういう人ですからね。そして、夢ってことは否定しないんですね。…全く」

「……あ。」

「…次からはちゃんと言ってください。私だって力になりますし、何よりお嬢様が無茶をしないようにブレーキ役をしないといけませんから。」

「分かったわ」



結局のところ、アレクにはお見通しなのだ。




「…今日の晩餐会に来る人の中に犯人がいると思うの。…お客様を疑いたくはないのだけれど」

「何故そんなことがわかるのですか?夢で犯人でも出てきましたか?」

「…いいえ、出てきてないわ。でも、夢で犯人と思わしき手がかりは手に入れたわ。」




今回の夢は少し違った。お姉様のドレスが無くなるのは一緒だったけれども、犯人がドレスを盗む前から夢は始まり、そして盗まれた瞬間に右手首の三角形に並んだ黒子が見えたのだ。

他の部分は靄に隠れてわからなかったが、これは大きな手がかりになるかもしれない。




「…わかりました。私も晩餐会の時よく見るようにします。右手首ですね」

「ありがとう」

「で、ちなみにいつまでこちらに居るんです?」

「…ふふ〜」



呆れたように大きな溜息が聞こえたけれども、アレクの表情は寧ろ少し嬉しそうに見えた。



…不謹慎ね。









晩餐会が始まるまで結局姉様の衣装部屋に居座り続け、アレクに引っ張られるように部屋を出て行かざるを得なかった。



晩餐会としているが、親類達が集まるため結局のところ立食パーティーだ。

お姉様達に最後の仕上げだと晩餐会に出る前にキラキラ光る粉をデコルテラインにかけられた。


おかげさまで視界に入る部分がキラキラして目がチカチカする。




「アマリリス、今日はまた可愛いな!」

「うっ…ヴァンス兄様…」


毎度お馴染みのタックルのような抱擁に声を出さないよう呻き声を飲み込んだ。久しぶりに会う家族になら兎も角、毎日のように顔を付き合わせて食事しているのだから出来ればタックルはやめて。



「ヴァンス、貴方も早く婚約者作って妹離れしなさい」

「いや、リリア姉様がよく結婚出来たと思ってるよ。僕はシーヴァー様を尊敬する」

「失礼しちゃうわ!」



2人のやり取りを横目にクロード兄様を探す。クロード兄様の側にいれば必ず来賓と挨拶をする。次期当主に挨拶をしない人間はいない。犯人を捜すのには一番有効だろう。




「やぁ、アマリリス。」

「…こっちに来たの?」


ヴァンス兄様の横にはローレンス兄様がいた。…ローレンス兄様は昔から私に意地悪するから少し苦手だ。みんなには優しいのだけれども、私が知らぬうちに何かしてしまったのかしら?




「向こうの二人を放っておくなんて、原因はアマリリスでしょ?何とかして来てよ」

「私に何とか出来るなら既にしてるわ。」


ローレンス兄様はとても綺麗な金色の髪をしている。お母様譲りである。瞳はお祖父様に似ているらしく、家族誰一人被らない赤の瞳をしている。



そんな瞳で私を見る兄様は、口をへの字に結び私に対して笑わない。…やっぱり嫌われているのかしら。




「…クロード兄様、僕はあちらに行って止めて来ます。」



私が来た方へ行く彼。

ちらりと目があったが直ぐに逸らされてしまう。



「…また怒らせちゃったかしら」

「アマリリスは悪くないよ。ローレンスがまだ子供なんだ。あいつを嫌いにならないでやって。本当はアマリリスのことが好きで仕方ないんだから」

「嫌いになんてなりませんよ」



しばらく前からこんな感じの兄の態度だが、それ以前はとても優しく頼れる兄でもあった。


きっと私が何かしてしまったのだろうとは思うのだけれど、心当たりはないのでどうしようもないのが現実である。




クロード兄様に挨拶する来賓を注意しながら過ごす。三角形に連なった黒子を探して探して、しばらく経った。



…何故か見つからない。




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