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アマリリスは夢を見る。  作者: 真中ユウ
アマリリス12歳
18/30

姉様のドレスを探せ④




「リリア姉様!」

「あら、アマリリス。貴女だけよ出迎えてくれなかったの。寂しかったわ」



すみません。急いで帰ってきたけれど裏口からの屋敷への侵入と衣装チェンジに時間が掛かりましたとは口が裂けても言えません。

なので笑って誤魔化します。


私が屋敷に戻る少し前にリリア姉様は屋敷に戻ってきていたらしい。本日の夕方に戻ると聞いていたのに、おかしいなぁ。



「アマリリスってば、少し大きくなったんじゃない?」

「1ヶ月だけだよ。そんなに変わらないわ。お姉様の方こそ綺麗になったんじゃないかしら」



姉様の様子を察するに、ドレスが盗まれるような事態にはなっていないのだろう。盗まれたのであればきっと今頃慌てふためいている。



「リリア姉様、ドレスは…?」

「さっき届けてくれて調整のために着たわよ。アマリリスがちゃんと顔を出してくれたら見れたのに残念ね。本番まで楽しみにしてて。」



てことは、メンリーさんとは入れ違いになったという事?ドレスが無事に届いてるということは、盗まれる心配はないってこと?



「髪の毛が乱れてるわよ。整えてあげるからこちらに来なさい」


急いで着替えたせいだ。

そこまで気が回らなかった。




姉様に連れられるまま姉様の部屋に行きドレッサーの前で髪に櫛を通される。


「…アマリリスの髪の毛、こんな風にもう触ってあげることは出来なくなるわね。」

「姉様…」

「貴方の髪の毛、本当にお母様にそっくりよ。とても綺麗。私はお父様似だから羨ましいわ」



鏡越しに見えるリリア姉様の顔は微笑んでいて、今まで見たことのないぐらい綺麗。

こんな姉様の晴れ舞台を台無しになんて出来るわけがない。



「私も寂しいわ。リリア姉様に髪を解いてもらえなくなるのは、とても寂しい…」

「あら、いつにもなく素直ね。いつもはツンツンしてるのに。貴女は甘える事が素直に出来ないから、たまにぐらい人に頼る事を覚えなさい」


…それ、アレクにも似た事をよく言われる。

そんなに私は人を頼ってないのかしら。

振り返ってみても思い当たる節はない。




「アマリリスだけの王子様が出来たら甘えられるようになるのかもね。」

「王子様って…」

「あら、信じてないの?キラキラで完璧なみんなの王子様じゃなくて、欠点ばっかりだけど私だけの王子様って必ずいるわ」

「リリア姉様にとっての王子様はシーヴァー様なのね」



シーヴァー様に欠点かと考えてみても出てこない。きっと2人の中でしか知らない事なのだろう。



…私には現れるのかしら。

いや、現れないと困るのだけど。

じゃないと私はアーノルドと結婚することになる。



ただ、姉様の表情を見て私自身がこんな表情を出せるようになるとは全く思えない。愛しくて愛しくて仕方ないと言わないばかりのそんな表情ー…。





***




『何故ドレスがないの!?』



リリア姉様が泣いている。

大粒の涙を流して。


やっぱりない。

どこを探してもない。



『リリア…』

『シーヴァー、ごめんなさい。私、私っ…』



ただただ立ち尽くす私は2人の様子を見守ることしかできない。







「っ…!!」


また同じ夢だ。あの時と同じ、姉様のドレスが無くなる夢。

まだ安心してはいけない。姉様のドレスは死守しないといけない。


式が明日へと迫っている。

本日はシーヴァー様の所の家族、親類がキャンベル家に足を運び、結婚前の最後の晩餐会となる予定だ。





「…今日の晩餐会も危険なのね。気をつけないといけないわ」



守りに動かなければ、みすみすドレスが無くなる自体になりかねない。リリア姉様の笑顔を曇らせないように、私はただ対策を頭の中で練る。




「アレク、今日は早めに身支度したいわ」

「早めって、いつです?」

「今からよ!」



晩餐の用意でドレスに身を包むのは夕方になる。だけれど出来れば夕方にはドレスを見張る警護をしたいと考えてるので着替えてるわけにはいかないのだ。


…まぁ、ドレスなんて着なければいい話なんだけれど、着ないと流石にお父様やリリア姉様の顔に泥を塗る行為になりかねない為、そこは受け入れた。


アレク何故固まったままなの、ねえ。



「…何その有り得ないって言いたげな顔。主人が言い出したことにスマートに対応してこそ良い執事でしょう?」

「お嬢様は着飾るの嫌いじゃないですか。いつも最後まで着たくないとか面倒くさいとか言うじゃないですか。どうしたんです?熱でもありますか?」

「無いわよ!」



だいぶ失礼ね、アレク。

私だってやるときはやるのよ。



「じゃあ槍でも…」

「降らないわよ」



アレクではもう話にならない。侍女を呼びアレクを部屋から放り出して着替え始める。普段着であれば一人で着替えられるものだが、正装となれば面倒でしかないが人が手伝わないと着替えれない。


コルセット、嫌い。




「アマリリス!もう着替えたの?」

「こっちにおいで、髪の毛してあげる」


屋敷内を歩いて姉様のドレスが置いてある衣装部屋に向かう所をリリア姉様とシンディ姉様に捕まった。


抵抗できぬまま連れられるまま、やってきたのはリリア姉様の衣装部屋。

目的地だったから良かったけれども。



「…リリア姉様のドレス、綺麗」

「そうでしょう?明日にはこれを着ていくからね」



衣装部屋の真ん中にトルソーに着せて型崩れしないように佇むドレス。純白の白がキラキラと光に照らされている。とても綺麗で美しい。



「アマリリスの結婚式もこんな真っ白なドレスを着ていくのよ」

「私は結婚なんて…」

「アーノルド様と婚約しているのに、何言ってるの?」



…それを言われればそうなんだけれど。

シンディ姉様に痛いところを突っ込まれた。婚約解消を目指してるなんて、口が裂けても言えない。



「ほら、アマリリス座りなさい。髪の毛可愛くしてあげるから」




いつもの着せ替え人形。といってもドレスは着替え終わってるので髪の毛だけ。いつもの定番だけれど、これがなくなる。嫌々ながらに付き合ってきた今までだけれど、姉様からの愛情を一身に感じていたのも知っている。



「…姉様、私が結婚するときは、髪の毛結ってくれる?」

「もちろんよ!家飛び出して来るわ!」



リリア姉様の暖かい抱擁。私が結婚するときなんてやってくるのか分からないが、それでも姉様にやって欲しい。



少しだけ視界が涙でぼやけた。




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