姉様のドレスを探せ②
数ヶ月なんてあっという間で、季節は秋へと変わる。姉様が花嫁修業へと旅立ちもうすぐで1ヶ月となる。
つまり、結婚式が近づいてきていた。
夢は毎日のように見続ける。ただしそこまで大事なことは見ることもなく、苦手な食べ物が食事の席に並ぶ夢や、アーノルドがいきなり訪ねてくるから回避するようにしたりなどが殆どである。正夢になるかどうかは五分五分。といっても、私が回避のために動くからこそ五分五分になるだけであって、回避しなければ確実に正夢である。
「…さま、お嬢様」
「ん、…おはよう、アレク」
「うなされていましたよ。どんな夢見ていたのです?」
「…嫌いなグリンピースが追いかけてくる夢」
「どんなですか。ということは今日のメニューにはグリンピースがついていますね。平和です」
そう言ってアレクはグリンピースが出てきそうなメニューを推理し始めた。こらそこ、辞めなさい。人の不幸をダシにしない。
もうこんな夢ばっかりだ。
最初は気構えてしまっていたのだけれど、こんな夢ばかり見ていれば気も抜ける。油断していた。
ー…久しぶりに、怖い夢を見た。
『ヒック…うぅ、』
リリア姉様が泣いている。幸せそうな姉様、ではなく悲しみに暮れる姉様。なぜ、泣いているのですか?
少し髪が伸びた姉様は少し大人っぽく、それでいて号泣している姿は子供のようで。
ただ、私はそんな風に泣く姉様なんて知らない。いつでも姉として振る舞い、貴族として気品に溢れる姿を目にしてきたからこそ、只事でない。
『ドレスが、なんでないのっ…?』
姉様の悲痛な叫びが耳に残る。
夢に飛び起きた朝は、姉様が屋敷に戻ってくる日でした。
…え?
「お嬢様?どうされたのですか?
私が起こしに来る前に起きてるなんて、槍が降りますよ」
「ア…レク、どうしよ…」
お姉様、最悪の場合婚約破棄になるかもしれません…。
落ち着いてくださいと差し出されたハーブティは寝起きの頭をスッキリするには有効だった。こういうときアレクは冷静に私の動揺を汲み取り、執事として適切な行動を取ってくれる。
「で、どういうことですか?…まさか、夢でも見られたのですか?」
「そうよ。…夢で姉様は婚約破棄をされるわ。何故って、ドレスが無くなるのよ。明後日姉様が着る婚姻の儀のドレスが」
私が見た夢はこうだ。
婚儀の当日にドレスが行方不明になる。屋敷内総動員してを探しても見つからない。姉様はシーヴァー様との婚儀に間に合わず、相手方からキャンベル家の意向を問われ、婚姻の破棄を申し込まれる。
「…成る程、この国の文化に上手く付け込んだものですね。」
「歴史書を読んでるぐらいの知識があれば、なんて言うこともないわ。…実際に何世紀か前には起きたそうよ」
この国の婚儀とは神への誓いの儀式である。だからこそ、婚儀は良い日を占いで導き決め、神に誓う。
婚儀を白紙にしたと言うことは、神への誓いを冒涜したとされる。この国でそれは認められない。ドレスも純白の新品を調達し、神に穢れのない姿を見てもらうのもその為である。最近は簡素化しているが、それでも必ず純白のドレスに花嫁は身を包む。
実際に過去にあるのだ。ドレスが失われて婚儀が取り止めになり婚約そもそもを破棄としたことが。
「…婚儀は明後日よ。お姉様は今日結婚の準備のためにこの屋敷へ戻られるわ。ドレスは昼から届くとは聴いているけれど…」
「そもそも屋敷にドレスが届けられるかどうか、ということですね」
「さすがアレク。よくわかってるわ」
ハーブティを飲み終えた。頭は冴えて考える余裕も出てきた。さぁ、作戦会議をしましょう。




