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アマリリスは夢を見る。  作者: 真中ユウ
アマリリス12歳
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夢の見始めは12歳の誕生日からでした。①




周りの景色はぼやけて霧掛かったような風景だけれど、既視感があった。


相手の顔もぼんやりとぼやけて見えている。髪が紺色の男の子。知らない男の子。



『私はアマリリス。よろしくお願いしますわ××××』

『アマリリス、可愛い名前だね。とても気に入ったよ。ねぇアマリリス…僕の…○◇△☆』



あれ、聞こえない。

貴方は何を伝えようとしているの?



***





「お嬢様、目が覚められましたか?」


朝の暖かな日差しが私の重く閉じた瞼を開かせようとする。私は目が覚めたく無い。普段全く見ない夢を見ていたらしく、寝つきが浅かったらしい。



「お嬢様!」

「ぎゃ!」


ふかふかのお布団を剥ぎ取られ、露わになるあられもない私の姿。剥ぎ取ったのは私の専属執事であるアレク。



「お嬢様、流石に『ぎゃ!』などの品位のない叫び声は辞めてください。公爵家の者としてはしたないと社交界で言われてしまいますよ」

「社交界デビューにはまだ3年あるもの!何なのよ、ケチ!」



私はアマリリス・グレース・キャンベル。キャンベル家の末娘。上には兄が3人と姉が2人の合計6人兄弟の末っ子である。


ちなみに、今目の前にいる私を叩き起こした男はアレクレア・オスカー・チェルタであり、2歳年上の私専属の執事だ。



「はぁ…お嬢様はそれでいいかも知れませんが、公爵家が恥を書くことがあればそれはお嬢様のご両親にも影響があるのですよ?」

「わかってるわよ!いざという時に出来ていれば問題ないでしょう??」

「いざも何も、常に意識しなければいきなり出来るわけないでしょう!?」



毎日の日常であり、今更ながらに変わることのない。これが私の日常。


だけれど、今日は一つ違う。

キャンベル家の末娘、つまり私の12歳を祝う誕生祝賀会である。つまり、パーティだ。



「憂鬱…」

「それは言わないで下さい」





キャンベル家には当主とその妻、つまり私の両親とその間に6人の子供という大層大所帯の家となる。男女比率も一律で、男児が生まれたら女児という具合に見事に交互に生まれている。



父は若い時にキャンベル家の当主となり、今やこの国を担う国王の側近、宰相となった。母も元は伯爵の令嬢で両親は恋愛結婚である。貴族の中では政略婚も珍しくない。そんな両親はいまだに熱愛中だ。そりゃそうだろう、6人も子供がいるのだから。



「おはようございます、お父様、お母様」

「あぁ…アマリリス、おはよう。12歳の誕生日おめでとう」

「大きくなったわね」



嬉しそうに笑う両親に挨拶。そして兄達と姉達にも挨拶して食事の席に着く。家族みんな揃ってお祈りを捧げて食事の時間となる。私たち家族の仲は物凄く良いと思う。



一番上の次期当主で今年22歳のクロード兄様、それを支える18歳の次男ヴァンス兄様、それに追いつきたい私と一つ違いのローレンス兄様。


そして、私を猫可愛がりする19歳のリリア姉様と私をさらに猫可愛がりする15歳のシンディ姉様。


そして私、アマリリス。



流石に弟や妹がさらに増えるというのはないのだろうけど、食事も他の家に比べたら騒がしい方なのだろう。

姉2人はよく話すし、お父様も子供達の話が大好きで色々聞きたがる。



「アマリリス」


「はい」


「今日はパーティだからプレゼントにドレスを用意したから、是非とも着て欲しい」




…あぁ、やっぱりか。





フリフリとしたレースが沢山遇らわれた可愛らしいピンク色のドレス。確実にお父様の趣味。私の趣味では断じて無い。


母親に似た私の姿形。髪色は見事な金色で瞳はエメラルグリーン。確かにピンクが似合いそうな出で立ち。それでも私が好きなのはモノトーンとか原色系の色なのだ。パステル系は好きでは無い。せめて水色とかならまだ良いのだけれど、渡されるのはいつもピンク。



楽しみな誕生パーティだが、このドレスは出来ればご遠慮したいのが本音。



だけれど末っ子の世渡り上手をこれでも発揮し、嬉々として受け取ってしまったのだ。これでは来年もピンクのドレス確定になってしまう。




「アマリリス、着替えましょうね」

「うんと可愛くしてあげるわ」


2人の姉は私を着せ替え人形のようにして遊ぶ。侍女はあくまでもお手伝い程度。基本的にはお姉様のおもちゃであれ。無心。



本日の誕生パーティーは私の誕生パーティーだ。社交界デビューしていない為、基本的には父や母の交友関係である人たちが呼ばれる。


そのため、呼ばれるのも私の馴染みの人たちしか呼ばれない。私自身も公の場は苦手としているので都合がいい。…なんならパーティーすらなくても良いのに。




「リリアお姉様はシーヴァー様にエスコートされるのでしょう?ステキな婚約者様にエスコートされるなんて羨ましいですわ」


「シンディはこれからよ。…それより、クロード兄様が未だに婚約者がいない方が問題よ。お茶会の度に令嬢方から質問を受ける身にもなって欲しいわ」



姉様方、お手が止まっております。出来れば早く終わって頂きたい。




リリアお姉様は結婚適齢期で婚約者がいる。キャンベル家は公爵の地位にある為、貴族の中の貴族とされている。ただ、両親の恋愛結婚が故に我が家では恋愛結婚を推進推奨しているため、あらかじめ婚約者はいない。



最も、貴族の中で上位の地位にいるため、家紋同士の関係を無理矢理築く必要もないから自由が効くとも言える。



ちなみにリリアお姉様も漏れなく恋愛結婚となる。相手は同じ公爵家なので互いにスムーズに事は運んでいるそうだ。




「お兄様は無理よ、仕事の鬼だもの。次期当主で仕事も出来るし見目も良いと評判だけれど一つのことにしか集中できないから、仕事一筋からは変わらないわ。私ならローレンスの方が良いもの」


「お兄様が令嬢に振り回されてる姿を一度でいいから見てみたいものだわ。ローレンスよりもヴァンスお兄様の方が婚約相手には最適じゃない?」




…私的には結婚するならクロード兄様なんだけれどなぁ。



みんな意見がバラバラである。




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