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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界転生――初期の大まかなイメージ。この段階では先を考えていない

作者: おにぎり昆布

 ガツッ


 ガツッ

 

 ガツッ


 雨音に混じり、俺は頭をブロック塀に叩きつけていた。何度叩きつけたかわからないが、額の皮膚は裂け、顔を伝う雨は血の味がした。

 夜の闇を切り裂くかのように、稲妻が何度となくと轟き、そのたびに辺りは黄色く照らしだされた。

 白かったスニーカーは赤く染まっており、水たまりには無数の波紋が現れては消え、現れては消えを繰り返していた。


 ガツッ


 ガツッ


 ガツッ


 俺は何度となくブロック塀に頭を叩きつけた。それに呼応するかのように雷の轟音が轟く。

 ブロック塀についた両手の感覚はすでになく、雨のせいか、血の流し過ぎのせいかはわからないが、凍えるほど寒かった。


「くくくくく、けけけけけ、ががががが」


 体を震わし、狂気じみた笑い声を俺は上げた。

 笑い声は雨音に混じり、雨音をかき消すほどに、高々と俺は笑い声を上げた。


 パチパチパチ……。


 拍手ではなく、上空で雷が粉を撒き散らしたかのような音が鳴り響く。

 ――――そして、次の瞬間、

 世界が黄色く染め上がる。


 一瞬の出来事。


 分厚い黒雲から降り注いだ、枝分かれした稲妻は、避雷針に落ちることなく、俺の体に落ちた。

 避けることなどできなかった。また避けるきもなかった。

 痛みはなく、痺れすらなかった。

 俺の世界から音が消失し、俺は膝から地面に倒れたのだということがわかった。アスファルトに溜まった水たまりに顔を半分浸した俺の目に、排水溝のわきに生えている、名もしらない雑草が雨に打たれているのが入ってきた。


 それから、視界がノイズがかり、次第に白く染まってゆき、俺は全ての感覚を失った。

 ああこれが死ぬことだな、ということがなんとなくわかった。


 あらゆる感覚を失ってから、何秒後、何十秒後、何百秒後・・・どれくらいの時間がすぎたのかはわからないが、声が聞こえていた。

 最初は遠くの方からかすかに聞こえていた声は次第に大きくなり、うっとうしいくらいになり、俺はうぐぐぐ、と呻った。


「ぶぶぶぶぶ、おはようございます、おはようございます、おはようございます、お、は、よ、う、ご、ざ、い、ま、す」


 小さい女の子の叫び声に我慢できなくなった俺は薄目を開けた。

 白い太陽が輝く青い空をを背景に、手のりサイズの女の子が、白い翼をパタパタはばたかせながら、俺の顔を覗き込んでいた。


「ここは・・・」


 上体を起こしてみると、俺は裸で石畳の道脇にある、一畳ほどの空き地で横になっていた。

左右には西洋風の家が建ち並んでおり、目の前の通りには豪奢な服に身を包んだ通行人が俺のことを気にすることなく、通り過ぎてゆく。


「おめでとうございます、おめでとうございます、ご主人様。あなた様は当選いたしました」

「あ、あん? 当選?」


 寝起きのためか、頭がぼんやりとして、小さな天使の言うことがよく理解できない。


「はいそうなのです。すごく幸運なことなんですよ。なので、あたし――エルがこの世界をナビゲートいたしますね」


 エルは俺にウィンクをし、俺はぼんやりした頭で、こんなことを思った。


――ここはどこなのだろう――


 そして、俺は自分が誰かもわからなくなっていた。


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