焼肉
「陽さん、売れ行きはどう?」
「ぼちぼちかなあ。露店と違って、見ても買わない人は減ったけど、場所柄で一見さんも減ってるからねえ」
「悪くない場所だと思うんですけどねえ」
「とりあえずは知名度かな? ユーリさんの弓がやっぱり評判良くてトッププレイヤーの人も覗きに来てくれるんだけど、別にトッププレイヤー御用達の店にするつもりもないからね。キヌさんもいっぱい宣伝しといてね? あ、キヌさんの場合はNPCに宣伝することになりそうだけど」
「まあ確かにプレイヤーの知り合いは少ないですけど、痛いとこつかないで下さい……」
うん、それは本当に胃が痛い話だ。
基本的に家に居るか、ミッコミキアイの4人で狩りに行くかくらいしかしていなかったのが原因だろうが、八重さんに「友達居ないの?」と聞かれた時は返す言葉がなかった。
い、居ないわけじゃないんだけど、皆ダグザ超えてヴァハに居るんですよ。……実はこっち来てから一度も会ってない友人の方が多いけど。一応ウィスパーからフレンド登録はしているが、特に会おうという話が出るわけでもない。最前線で攻略をしてる彼らに「早くここまでこいよ」と急かされるばかりだ。
「やーごめんごめん、ところで、NPCもこういうの欲しがる人居たりするのかな?」
「うーん、正直戦闘職のNPCとかこんな町には居ないけど、ポーションとか服、あとアクセサリは需要あるみたい? 後は値段かなあ」
「つまり性能より見た目重視? 町から出ない生産職も、確かに見た目重視する傾向にあるよね」
服やアクセサリによるステータス増強も馬鹿にならないが、それでも生産だけを楽しみに町で生きている多くのプレイヤーは、自分の好きな格好をしている。
それが彼ら、彼女らの楽しみの一つなのだから取り上げるつもりもなく、プレイスタイルは人それぞれなんだな、と思うばかり。
ちなみに自分は面倒くさがりというのもあるが、狩り時と町中で格好を全く変えていない。衣装に拘りのある陽さんからは「もうちょっと身だしなみに気を遣わないと」と小言を言われることはあるが、まああまり気にしていない。
元から衣食住に然程執着がないオタクだったというのもあるのだろうが、流石に何とかしなければいけないとも思う。うん、一応思ってはいるんだよ。
「似たようなものですかね。そういうのあれば割と勧めやすくなると思うんで、気が向いて作ったら宣伝するんで、教えて下さい」
「はーい、意見ありがとうございまーす」
「軽いなあ」
「ま、キヌ君は大分NPC寄りだもんねえ」
「好きでそうなったわけじゃないんですけどね……」
うん、好きでNPCとの仲介役をやっているわけではない。配達したり、互助会ギルドを作ったりしていたら気付いたら周りにはNPCが沢山居ただけの話だ。今やギルド≪ホワイトフォレスト≫の事務所ビル、NPCの溜まり場となっている。
折角金かけて無人化したのに勝手に人が集まってるからもう良いやと、NPC代表のアヤトを副ギルドマスターにし、運営は彼に丸投げしている。たまの護衛依頼はプレイヤーに回すが、ギルドに登録するNPCも増えたことから、大抵の専門依頼もNPCだけで回せるようになっている。まだギルドを設立して日も浅いのにここまでシステムが完成されるとは、システムを提案した時には考えもしなかったほどだ。
「そういえば、隣のビル今どうなってるの? なんか工事っぽい音してたけど」
「あー、なんか2階にカフェをオープンするとかで、それの運び入れとかしてるっぽいですよ?」
っぽい、というのは、直接見たわけではないからだ。
自分のところには提示連絡であるメールが来るだけに過ぎない。一応決定権は自分にあるから「カフェを作ってもいいか?」という質問は来たが、あれだけ大きな建物で1階しか使わないなど勿体無いにも程があると前から思っていたので、特に止める理由もなくオッケーを出したのだ。
「え、そんなお金あったの? 店舗開業って結構お金かかったと思うけど……」
「そのお金を徴収するシステムもNPC運営なので、全部0円で済んでるみたいで。コネ様様ですね」
「……ギルド開設もギルドホール購入も0円でやったどころか店舗開店まで0円って、完全にNPCチートよねそれ……」
呆れたように陽が言う。
まあ、その通りだ。この家は元から買っていたにも関らず陽が商店を開業するに当たって安くない出費をしたし、今はそれの元を取るので精一杯。店は、軌道に乗るまでが大変なのだ。
「ま、彼らも楽しんでやってるみたいなので、自由にやらせてる感じで。AIというか完全に人間なんですよね」
「うん、こっち来て、たまに思うのよねえ、NPCも実は中の人が居るんじゃないかって。いくらなんでも一人一人の設定が細かすぎるのよ……。モデリングだけの話じゃなくて、全員にしっかりストーリーがあるし、意思持って動いてる。キヌさん覚えてる? ベータの頃、NPCにも中の人が居るって噂あったじゃない。最近たまに思い出しちゃうんだよねえ」
プログラムノアの、噂話。こちらに来てからそれを思い出したのは、二日目あたりだろうか。
ふとした時、NPC達の言葉に、明らかな“命”を感じたのだ。それの正体が何かは分からないし、きっとゲームクリアをしても分からない。だから疑問として残さず、自分の中で結論を出すのだ。彼らはこの世界で生きている、人間なんだと。
「……自分も、実は。中に人が居ないんだったら、もうプレイヤーもAIなのではって思えてきたり。実は生きてるのは自分一人で、それ以外皆AIなんじゃーみたいな?」
「あー、昔ネットで流行ったよねそういうネタ」
「ここでNPCと交流してると、思い出しちゃうんですよね、やっぱり。最早この思考する自分すらも人間なのかどうか分からなくなるけど、ま、それはそれでいいかなって、思うわけですよ」
「あはは、そこまでポジティブにはなれないかなあ私は」
くすくすと笑われる。うん、そんな反応をされるのは分かっていた。けれど、考えてしまうのだ。あれだけ精巧なAIが作れるのなら、プレイヤーくらい作れるのではないかと。プレイヤーの中にNPCが混ざっていても、気付かないのではないかと。
「だって、人でもAIでも、この世界なら生きてるじゃないですか。指と脳だけの生命体じゃなくて、生きてるって認識できたの、こっち来てからですよ」
「うーん中々重い話来ちゃった。まあこんなとこに来た人がまともな頭なわけないっちゃそうなんだけどね」
「ええ、こっちに来た、皆狂ってますよ」
ずっと思っていたこと。
狂った人たち、社会不適合者の集まり。きっと外の世界では、コールドスリープしてまでゲームをする自分達のことが、そんな風に言われていることだろう。
実験体になりたくて志願した者など居ない。皆、ゲームの世界に入りたくて志願したのだ。
そんな人間が、狂ってないはずがない。
「それもそうだ。うん、私も八重も、家の皆も狂ってる。だから楽しいんじゃないかな、この世界」
「ですね。狂人が狂人のままでいられる世界なんて、ここにしかないんだから」
「そうそう。ゲーム廃人に24時間プレイできる環境与えちゃったら、そりゃこうなるって。狂うのが一周回って会話が成立してるからね。常人には理解できないよ、私達のことなんて」
「ま、そうですよね。…………なんか話が暗くなりそうなんで、この辺でやめません?」
なんかお互いトラウマ発症するのも怖いし、話の区切りを提案。問題抱えまくりな住人達に、リアルの話を振るのはやめておきましょうね。
「そうね。じゃ、キヌさんはこれから狩り?」
「いえ、今日は友人に会いにヴァハへ行こうかと」
「そか。キヌさんの友人は皆最前線で戦ってる人なんだよね、お店、宣伝しといてね。いってらっしゃい」
「はーい。行ってきます」
陽に別れを告げ、ポータルに向けて歩き出す。
ギルドホールの前を通ると、引越し作業をしている若者や、中で暇をしている町長に手を振られるので、大きく手を振って返す。うん、今日も良い一日になるだろう。
◇
「おっ久しぶりでーーーす! りっきゅんです!」
「あー、はいはい、ひさ」
飛びついてくる金髪ショタを手で払いのけながら適当に返答する。うん、久し振りに会ったが、友人――リクは元気そうだ。
「あれ、なんかキヌさん冷たくないですか!?」
「普段通りだよ。……初めて呼び出されたと思ったら、何この集まり?」
「え、何って……バーベキューですけど」
複数の七輪に火がくべられ、テーブルには様々な食材が並んでいる。
しかし不自然なことに、誰も手を出そうとしないのだ。集まっている凡そ10人のプレイヤーは、箸と皿を持ちただ突っ立って話している。
「見りゃ分かるわ。で、誰が焼くの?」
「…………キヌさん」
「ふざけてんのか全部食うぞテメェ」
「らめえ! 折角僕らが必死に殺したミノタウロスが落としたA5等級の肉を独り占めするのはらめえ!」
「キモい! 引っ付くな! つーかこれミノタウロスの肉かよ!」
引っ付く金髪ショタを押し返しながら、周囲に集まっているプレイヤーを見る。1,2,3......合計11人。
うーーーん…………あ、一人NPC混ざってる。たぶん誰も料理スキルを持ってなくて、肉を切ることもできないからそこらに居た人に頼んだんだろうな……。彼に焼かせれば良いのに、それをしないのは何故なのか少し悩んでしまったが、そういえばNPCは料理スキルを持ってなくても切るくらいの簡単な調理だったらできるんだったなと、記憶を辿る。
「え、マジでこの場で料理スキル持ってるの俺だけなの?」
「です! だから呼びました!」
「ふざけんな! お前らが勝手に焼いて焦げた肉食ってろ!」
プレイヤーは料理スキルを持っていないと加熱どころか野菜を切ることすらできない。家で色々試したところ“ちぎること”はできたのだが、それ以外のカットは不可能だった。レタスみたいな道具無しで細かくできる野菜なら、料理スキルを持ってなくてもなんとかなる。
あとできるのは、塩を掛けるなどの調味程度だ。コーヒーに砂糖を入れる、オムレツにケチャップをかける程度なら大丈夫だった。うん、まあそれ料理でもなんでもないからね。
「そんな! 酷いです! キヌさんも肉とか食べてないだろうなって親切心で呼んだのに!」
「親切心で呼んだなら普通全手動肉焼きマシーンなんて頼まねえだろ!!」
「そ、それもそうだ!」
「今更気付いてんじゃねえよ!」
「で、どうすんですか焼くんですか焼かないんですか!? ちなみに焼いたらここに居るハイエナ共が一瞬で駆逐します!」
「クソ予告してんじゃねえよ! なんでお前ら誰も自分で焼いて食おうとしねえんだよ!」
大人が10人集まってるのに、誰も肉に手を付けず皿を持って雑談する姿は中々に異様な光景だ。
いや、誰も焼けないから仕方ないのだろうが、それにしても異様。まあ間違いなく自分が呼ばれるまでに様々な地獄を見たんだろうし、それに対して同情することもない。料理スキルを取らなかったこいつらが悪いんだ。
「誰が焼いても丸焦げになるからに決まってるじゃないですか!!! ちなみにもう全員生肉食べまくりましたけど食中毒っぽい症状にはなってないからたぶん大丈夫です!」
「我慢してすらないじゃねえか! ちなみに生肉による主な食中毒の腸管出血性大腸菌は3日以上の潜伏期間があるから我慢しなかったお前ら皆3日後に寝込め! 攻略止まっちまえ!」
……自分で言っておいてなんだが、たぶんこいつら皆最前線で戦うトッププレイヤーだ。
彼らにこんなことが言えるのは間違いなく自分が料理人として今この瞬間だけ一番上に立てているからであり、普段外で会ったらダッシュで逃げる。絡まれたくはない。
彼らは皆不安そうな顔をしてお腹をさすってる。つーかNPCまでそうだ。お前ら皆生肉食ったのかよ! ミノタウロスの生肉を! 安全か確認してから食えよアホかとりあえず焼いて食えそうか焼けなかったんだやっぱこいつら皆アホだな!
「早く観念して焼いてくださいキヌさんいやキヌ大明神! 食べざかりの二人がまだ来てないからその二人が来るより前に! さあ!」
「まだ来るのかよ! 一人くらい料理できる奴いねえのかよマジでさあ!」
「居ません! つーかガチ戦闘職が生産スキルなんて持ってる隙間ありません! どっかの隙間ビルドとは違うんです!」
「おま、まだ完成してもないんだから馬鹿にするのはやめろって! つーか隙間だから料理取れたんだっつーの分かれ! 今お前らの希望イズ俺! 俺が隙間ビルドだからお前らは肉にありつけるの!」
「えっ焼いてくれるんですか! ありがとうございます!」
「そんなこと言ってなくね!? あーもうべたべたすんな!」
引っ付き虫と化してるリクを何度目かの引き剥がしに成功すると、どこからともなく「ニチャア……」という音が聞こえる。うん、クリーチャーでも現れたのかな?
「……随分仲が宜しいようで……ヒヒッ」
「…………ユーリさん、なんでここに来てんの」
クリーチャーではなくそこに居たのは家で稀に見る(食事中しか見ない)ユーリさんであり、いつの間にやら普通に混ざっていた。
おや? 誰も不審がってないぞ? こんな不審者丸出しの水色頭女が現れたのに、おっかしいなあ。
「いや、何でって、呼ばれたからですけど……」
「…………ユーリさんの弓使ってる人って」そう聞くと、二人の男が手を挙げる。うん、君の顧客こんな近くに居たんだね。めっちゃリクと仲良さそうだよ。世界狭すぎない?
「ところでお二人は一体どんなご関係でしょうかいや……! 言わなくても良い……! 私が考える…………ッ!!」
「考えるんじゃねえ! やめろ! リアルの友人! 以上!」
「なるほどつまりリアルとネットで繋がった関係!? うまっ…………私的にはショタは性欲強いものなのでリクキヌがウマい!!」
「もう黙ってくれない!? お願いだからさ!??」
厄介なショタの次は厄介な腐女子だ。もう厄介まみれだ。ファンイベントで追い出されてろ厄介共め。
つーか誰も止めないんだがこの集団はいつもこんな様子なのか? 正気かよこいつら。脳みそまで筋肉でできてんのか。
「おお、君がリクが呼んだという料理人君か」
ユーリが妄想の世界に入り静かになったところで、いつの間にか現れていた男に突然声を掛けられる。
…………うん特徴ありすぎ。アンタなんで上半身裸なん? 俺が女児ならセクハラで訴えるぞコラ。
「ギルド≪オキュラス≫のギルドマスター、神谷だ」
上半身裸のマッチョに握手を求められる。なんかこの空気で断るに断れなかったので一応返しておく。うわっ力強っ! 手折れるかと思った。
うん、きちんと手を洗ってから調理しますよ。ちょっと怖いですよ具体的に言うと黄色ブドウ球菌とか。
「……そこらへんに居た料理人のキヌです、どうも」
「キヌ…………何か聞いたことがある気がするが」
「あー、どうせリクからですよリクから」
「む……そうか。じゃあそういうことにしておこう」
なんか含みある言い方をされたが、気にしないでおこう。
つーかこの人、神谷ビルドの神谷だよなあなんでリクこんなんと知り合ってんだと思いながらも、ふと以前ミッコに言われたことを思い出す。
……あ、もしかして。
「……ヴァハ開放した人、手ぇ挙げてー」
そう言うと、7人が手を挙げる。リク、神谷、名も知らぬ男が4人と女が1人。男のうち1人はさっきユーリさんの弓を使ってると言っていた人だ。
……はい、やっぱりそうでした。この町開放したの自分の友人らだったし、脳筋火力パーティの正体はこいつらでした。
「……やっぱりかー。なんかショック」
「えっ喜んで下さいよ!」
「じゃーとっととネヴァンも開放しといて……料理スキルそこで開放されっから……」
なんか現実を見たくなくて、つい適当な返答をする。
ネヴァンが開放されれば料理人人口はもっと増えるはずだ。職業で選ぶ人が居ないにせよ、スキルを取るだけで簡単な調理くらいならできるようになる。バフさえ気にしなければ、美味しい料理も作れるようになるのだ。
「分かりました! じゃあじゃんじゃん肉焼いちゃって下さい! 肉を栄養に僕らは戦います!」
「……はいはい」
なんかもう全てにおいてリアクションをするのが疲れてきたので、大人しく肉焼きに入る。
……マジで誰もひっくり返そうとすらしないな。七輪を周囲に並べて肉の皿を次々と空にしていくと、あたり一面良い匂いに包まれてくる。……あっ普通に町中だから野次馬みたいなのも現れた。奴らに食わす肉はねえぞ、追い払え廃人共。
「いっただっきまーす!」
集まった全員が皿に肉を載せると、リクの号令で全員が実食。ついでに自分も。
あっ……これめっちゃ旨いわ。やっぱ牛肉旨いわ。何度も言うし当たり前だけど牛肉は旨い。
なんか脂の甘みも感じるし、サシが入ってるわけでもないのに肉は口の中で溶けるように消滅していく。あー駄目美味しい。こいつらには食わせたくない。けどひっくり返してしばらくすると一瞬で駆逐される。焼くの忙しくて全然食えない。うん、すごくつらい。
焼肉が終わったらまだ余っているブロック肉を貰うという約束を取り付け、必死に焼く。焼いて、焼いて、焼く。たまに食う。旨い。こいつらその数倍食ってく。腹立つ。けどブロック肉貰えるなら我慢。我慢だ、我慢だ、たまに食う。めっちゃ旨い。
こいつらのお陰でダグザにも牛肉が回ることになるんだよなあと思いながらも、焼いては取られ、焼いては奪われを繰り返す。いつしか腹立ちよりもどれだけ焼いても食い続けるこいつらが面白くなってきて、酒も入ってないのに爆笑。
焼肉が終わるのは、開始から2時間は過ぎた頃だった。お前ら2時間食べ放題じゃねーんだぞ。
「はい、報酬の肉です」「俺も」「あっ自分のもどうぞ」と周囲から取引ウィンドウが開かれ、どんどんと大量の肉が置かれていく。なんでこんなポンポンと、と思ったが、そうか、こいつらもう満腹だし、自分で肉を持っててもどうせ料理できないから要らないんだ。戦闘職のプレイヤーが食材アイテムを抱える理由は全くない。金にはなるだろうが、彼らからしたらはした金だろう。まだ食材の相場は低いのだ。
絶対に食べきれないぞこれと思うが、料理人集会に持っていけば相当喜んでもらえることだろう。だからとりあえず、貰えるだけ貰っておく。なんか本当に大量になってきたが、貰えるだけ貰っておく。冷蔵しかできないインベントリと違って、実体化すれば家の冷凍庫にも入れれるのだ。多少余ってもどうとでもなる。というか、足りなくなればまたこいつらから貰えば良さそうだし。
当分メインは牛肉料理だなと考えながら彼らと別れ、ダグザへ戻る。
「あっそういえばユーリさんも同じ家だっけ」
「えっ酷い。普通に忘れてたリアクションだ……」
隣を歩き出すユーリさんを見、つい言ってしまう。
うん、すっかり忘れてたよね。普段から食事の時くらいしか見ないし。
「いや、なんか肉を食う様が戦闘職にも負けてなかったから……あとユーリさん割とコミュ力あったんだな意外」
「あ、それ口に出しちゃいけないやつですよキヌ氏」
「氏言うのやめろ」
「えー、じゃあ受け」
「今日からユーリさんのご飯はパン1枚かなあ」
「すみません私が悪かったです。まーあの人達は気楽なクソオタク共なんで、そこまでコミュ障にはならんですよ」
「あのクソオタク、今このゲームで一番強い奴らのはずなんだけどなあ……」
「クソオタクはクソオタクですわ。ウチらも総じてクソオタク。いえー」いえーと手を合わせる。うん、やっぱり酔っ払ってるのかなあ、酒一滴も飲んでないけど。
「私的には、キヌさんがあんなキャラだったのも意外でしたけど。あっちが素なんですか?」
ユーリがこちらをじっと見てそう言う。うん、そう言われるとなんかむず痒く感じるな。
別に生産者の家でキャラを被ってるわけでもない。どちらも自分で、どちらも素だ。
「いやー、素というか、突っ込み不足だと自然と突っ込みに回らざるを得ないというか」
「魚世界でメスが少なくなるとオスがメスに性転換するみたいな奴ですね、分かります」
「全然分かってないな、うん」
そんな馬鹿話をしながら、大量の肉をお土産に、家へ帰るのだった。




