第2話 【波乱の入学式】 4
「違う違う、ハーフじゃないよ。純粋な日本人!」
「へぇ、そうなのか。珍しいな」
(ほらやっぱりこういうことになるじゃん! まったく余計なことしてくれたよ、学園長は!)
『生徒会長、御門院沙織さん。ありがとうございました。次は、学園長の挨拶です』
『はい。皆さんおはようございますぅー』
(キタァァ! 噂をすれば来やがった! コイツ、本当にうざい!)
「おい、騎士さん? どうした、顔がめっちゃ怖いぞ?」
「そ、そうかな? あはは……」
全ての元凶とも言える学園長が涼しい顔で挨拶しているのを見て、新太は体が沸騰しそうなほどの苛立ちをおぼえた。
「ねぇ、桐生君? あたしも質問あるんだけど、いいかな?」
「おう、もちろんいいぞ」
「名前といえば、【アイリス・ステファニー】って子、知ってる?」
新太は自分の右隣をさして言った。
もちろん、自分の【アリス】という名前も珍しいが、さすがに【アイリス・ステファニー】という名前のインパクトにはかなわない。無論、新太はそれにかなおうとも思わないが。
「なに? 騎士さん、【アイリス・ステファニー】を知らないのか?」
「え、もしかして有名人?」
「いやいや、有名人なんてもんじゃない。なんてったって彼女は、【二重能力】なんだぞ」
「二重……能力?」
「本来、女性が劣るとされる戦闘能が彼女にはあるんだよ。それに加えて、回復能じゃトップクラスの【A】スコアらしい。有名な魔法雑誌の話題はそれでもちきりさ」
「そんなすごい子なんだ……」
桐生の話を聞いて新太は思った。
自分には回復能しかなくて危うくこの学園に通えなかったのに、【アイリス・ステファニー】は回復能と戦闘能のどちらも持っているのか、と。
もはや嫉妬だ。
この世の中の不公平を恨む。
戦闘能と、回復能はもともとの才能だから、いまさら新太にはどうすることもできないのだ。