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 第16話 【覚醒】 8 


 (俺が想像イメージする【光矢ライトニング・アロー】は被弾者の状態を回復するだけじゃない。俺の回復能が本当にAAダブルエースなんだったら、もっと欲張った効果にしてやる!)


 「アイリスさん、今だ! 今、【炎山えんざん】を使って!」

 「なっ、アリスがウチに命令……ふふっ、面白い。でも、【炎山えんざん】は桐生智也きりゅうともやに一度完璧にかわされている。もう一度、それを承知で無駄斬りしろ、と?」


 アリスの言っていることは、それをまじかに見ていた新太も百も承知だ。

 双剣決闘ペア・デュエルの開始序盤にアイリスが智也に使用した火属性の【炎山えんざん】を、智也はいとも簡単に避けた。

 あの時アイリスは【速度強化スピードハイ】を使っていたにもかかわらず、だ。

 なぜ智也が避けられたのかは依然として不明。

 わかることと言えば、あの時のように斬りかかったら再び避けられる、ということだけだ。

 では、あの時のようでなかったら?


 「アイリス、次は絶対当たる。大丈夫」

 「……根拠は?」

 「あたしがアイリスを『強化』したから」

 

 ーー『【強化蘇生アップ・リザレクション】!!』

 

 アイリスは新太が叫んだ言葉を思い出した。

 蘇生しつつ、強化も行う。

 そんな使い勝手のよすぎる回復魔法があるのだろうか。

 はたまた、強化されたとして劇的に状況は変わるのだろうか。【炎山えんざん】は、当たるのだろうか。


 (……アリス。やっぱり、アリスは面白い。これまで接してきた人とまるで違うものを、アイリスは持っている。ウチの知らない何かを、アリスは持っている)


 この状況が、面白い。

 アイリスは顔を満足そうにしながら思った。

 新太の【光矢ライトニング・アロー】を避けるために距離をとった二人組はフィールドの終焉ぎりぎりのところにいる。

 アイリスの位置から【速度強化スピードハイ】を使用し攻撃を仕掛けたところで、奇襲とはいかずに相手に反撃カウンターをとられる確率は非常に高い。

 だが、仮に新太がアイリスになんらかの『強化』をほどこしているのならば……。


 「双剣ペアがそういうのなら……仕方ない。信頼するとしようっ……!」

 

 顔の各部位が不機嫌と笑顔を交互に繰り返すような、なんとも言えない表情でそれを言うアイリスを見て新太はなんだか胸がキュッとなった。

 

 「お、おう。ありがとね」

 「『おう』なんて、女の子は使わない!」


 完全に不機嫌な顔で言われ、新太もまたやはり胸の高鳴りは気のせいだと流すことにした。

 そして。


 「【速度強化スピードハイ】! 属性選択は火。使用するのは、【炎山えんざん】ッッッ!!!」


 不機嫌面ふきげんづらに瞳に確かな闘志を灯して、アイリスは再び獅子となる。

 燃え盛る大剣。

 自身の思いが込められた大剣。

 一度はかわされた大剣。

 アイリスは、その全てを両手一杯に握りしめている。


 (なっ、アイリス・ステファニーが【電気麻痺パラリシス】から回復している!? さっきのアリスの放った光の矢のせいなのか……? だが何度斬りかかって来たところでリーチが長い大剣を俺に当てることはできない。ボクシングで鍛えた動体視力に加えて、鍛えてきた【速度強化スピードハイ】が俺にはあるんだ。そう簡単にやられるまい)


 闘志を燃やすアイリスとは裏腹に智也は冷静だった。

 それに、いざとなれば後ろ盾には【電気麻痺パラリシス】が使える双剣ペアがいる。

 

 「せやぁぁぁっ!」

 

 凄まじいスピードで智也達に急接近するアイリス。


 (ふっ、何度着ても同じことだ! この双剣決闘ペアデュエルもらった!)


 目の前には炎を宿した大剣。

 

 (これを避けて、【電気麻痺パラリシス】が発動された時には今度こそ俺が【二重能力ダブルアビリティ】を倒す!)


 そうしてとうとう、アイリスが大剣を振りかぶったその瞬間。

 

 「ふっ、見えた」  

 「さぁ、それはどうだか」

 「なっ……ッッッッ!?」


 再び空を切るかと思われた炎の大剣の感触は、ずっしりと重かった。

 大剣は智也の芯を捉えたのだ!



 



  

 



 

 

 

 

 


  

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