第1話 【性転換】 3
キラリと八重歯をのぞかせる学園長に、頭の整理ができない新太。
そして、それに追い打ちをかけるように学園長はさらに続ける。
「で、次にだよ? 君の入学試験での成績を見せてあげようかなぁ」
(俺の……成績か)
正直、新太は入学試験で手応えがあった。
黒影魔導学園の試験は一対一の実践戦闘形式であり、『受験生』対『試験官』の構図がとられる。
そんな中、新太は時間こそかかったものの試験官に倒されることなく制限時間終了までほぼ互角に渡り合った。
「はい、学園長。見せてください!」
だから、新太は堂々とそう言い放った。
ニヤリ。それに対してまたまた八重歯をのぞかせる学園長。その右手からは再び光の粒子が文字を描く。
(ゴクリ……)
ーーーーー
【騎士新太】
総魔力……B
技術値……D
戦闘能……E
回復能……E
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「騎士って苗字珍しいよねぇ」
「よく言われます……そこじゃないでしょ!? あきらかに値がおかしいよっ! 総魔力以外ゴミかすじゃないかっ!?」
「まぁそう騒がないでくれぇ。君がおかしいのはこっちも重々承知だからぁ。あ、ちなみにこのデータの内一つだけ僕が今いじっちゃったんだけど……どれかわかるぅ?」
「冗談きつすぎますよ! 俺はこの学園に通いたくて必死に勉強したんですよ……てか、明らかに戦闘能ですよね? 統計データってやつ的に」
しゃべり方がむかつく。不安。期待。
たくさんの感情が新太をどんどん混乱させていく。
「ん……まぁそう答えるのが普通だよねぇ。この学園の職員全員がそう答えたんだ、無理もないよぉ」
「なっ、職員全員って!? 一体どういうことなんだよ学園長!?」
感情が押さえきれなくなった新太に学園長は肩をつかまれる。
それを静かに手で撫で払い、つかの間の沈黙。
そして再び時が動く。
「試験官との入学試験戦闘を終えた君のスコアが、導き出されてきたとき職員はみんな騒然としてたよ。これは【戦闘能】と【回復能】が逆のスコアになってしまっている、とねぇ」
「逆……? ということは、まさか?」
「そう、そのまさかさぁ」
一振りされた右手の動きで【回復能】の【E】スコアの文字が光の粒子となって消える。
そして。
「僕がさっきいじったのは、【回復能】さっ」
ーーーーー
【回復能】……AA
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「え?」
「あははっ」
「えええええええええ!?」