ダンジョン
更新が遅くなりました。
学生の方々はそろそろ、テストだ課題だとてんやわんやになる時期ですよね。
はい。自分もテストだ課題だといったことで、更新が遅くなるので、この時期は嫌いです!
そんな言い訳ばかりの黒兎の駄文。読んでいただけたら嬉しいです。
プランを話し合った結果、俺たちはダンジョンに潜ることになった。
理由は二つある。第一に、身を隠す必要があるこいうこと。これは、召喚魔法という規模の大きな魔術を使ったために、居場所がバレてしまった可能性が高いからだ。
第二に、ローナが力をつけること。力を手に入れれば、革命軍を抑えた後、魔王に力がないからという理由で再度反乱が起きることはないからだ。魔人は自身より力のある者の下にしか仕えようとは思わないらしい。
しかし、ダンジョンモンスターを倒してレベル上げといっても、ローナはすでにレベルがカンストしているらしい。そのため、ステータスの向上は見込めないということで、モンスターを倒すことでの実戦経験と、限られたダンジョンを攻略した者が持つことのできるダンジョン魔法を手にいれようということになった。
そんなような理由で俺たちは、見張りがいるであろう魔人領にのダンジョンは避けて、近隣にあるエルフ領のダンジョンの攻略を始めていた。
「なんかうじゃうじゃ出てきて気持ち悪いのぅ」
現在の階層は七階層。ダンジョンに潜ってから八時間と、それなりに早いであろうペースで各階層を攻略している。
本来行われるダンジョン攻略というのは、大人数の軍隊を投入して、各階層の端から端までマッピングしてから次の階層へと行くというのが普通なのだが、今回の俺たちにそこまでの余裕はなく、次の階層へと続く階段を見つけたらさっさと次の階層の攻略を進めるといったことをしていた。
「そんなこと言ってないで援護してくれよ」
俺たちは、五階層以降、増え始めた罠にたびたび引っかかていた。今もモンスタートラップに引っかかって、部屋の中心を俺たちが陣取るようにして、集まって来るモンスターを討伐しているという状態だ。
「いえ、そもそもマーブルが罠を起動しないように抑えれば、こんな目に合う必要はないと思うのですが……」
ミノタウロスやスケルトン、シェロブという毒を持った蜘蛛たちが四つある通路全てから押し寄せている。最初に比べると勢いがなく、もう少し耐えていれば終わるだろう。
「うーん……。マーブルの知的好奇心は抑えられないみたいだからな。無理やり止めたらなにしでかすかわからないし」
「そ、そうですね」
そう罠にたびたび引っかかるのはほとんどが、マーブルのせいだった。罠発見の能力が高いマーブルが罠に引っかかるというのは少し語弊があったな。マーブルが今まで見たことの無い罠を片っ端から作動させてしまうのだ。
「え?待ってよミノル。僕がそんなに自制の効かない奴だと思うのかい?王女陛下にやめろって言われたらさすがにやめることくらいできるよ」
こっちを向きながら悠々とミノタウロスの首を切り落とすマーブル。ミノタウロスの影になって見えていなかったスケルトンからの奇襲も一瞬視線を向けただけで、またこっちを向きながら今度はそのスケルトンと、横にいたもう一体のミノタウロスまでも捌いてしまった。
「じゃあ、なんで何も言わず罠を見つけ次第真っ先に起動させていたんだ?」
俺にはマーブルのようなことをする技術はなく、モンスターが来てはきちんと視野に収めながら倒していく。マーブルの方を向いて答えていないから、怒っているように捉えられるかもしれないが、単純な疑問として言っただけだ。
「そりゃあ知的好奇心っていうのもあるけど、罠をあらかじめ知っておくことがダンジョン攻略だと大切っていうのが僕の自論だからね」
「面白いことを言うなマーブル。私も騎士団の任務としてダンジョンに潜るのは幾度も経験しているが、罠は基本的に触れないというのがルールだったぞ」
今まで、後衛で後ろから迫るモンスターを相手にしていたエリックさんが背後からのモンスターラッシュが終わったのか、中衛のローナとナーシャをの近くにより、もしもに備えて守れるような態勢を取っている。
「すべての罠に引っかからないのが一番いいんだけど、階層が下がるごとに罠の発見が難しくなったり、罠自体が強力になっているからね。それにダンジョンごとに罠は同系統の物ってなっているみたいだから、早い段階で知っておくことが深い階層で生きるのには大切なんだ」
「ふむ……。そんな風に考えたことがなかったな。確かに以前、落ち着けば対処できたであろうに、予測もついていなかったがために、焦ってしまい死んでいった者は何人もいるな」
「そう。そういうことがあるからこそ、できれば軽い罠の内に情報を集めて、深い階層での役に立てたいんだよね」
この場の全員が、今までのマーブルの行動に納得するような説明を受け、改めてマーブルの聡明さに素直に驚いた。
「まあ、すでに大体の解析は終わってるんだけど」
悪びれる様子もなく、あはっといった感じに笑いながら、最後のミノタウルスを一刀の元に斬り伏せた。
ミノタウロスはその巨体を地に落とし、沈黙した。
「今は私の知的好奇心でトラップを起動させてまーす」
その場でくるっと半回転し、いたずらっ子のようにこちらを向いたマーブル。
「うむ。何かを知ろうと前向きに取り組むその姿勢は良い。しかしマーブルよ。我としては危険なく、かつできるだけ早くこのダンジョンを攻略したいのじゃ」
「そうですね。解析が終わっているのでしたらわざわざ危険な目にあう必要もないでしょう。次からはトラップを避けて、攻略最優先で進みましょう」
「はーい。了解いたしましたー」
マーブルにとってトラップ自体に対する知的好奇心は、ローナの『ワード』に関する話への食いつき具合と比べるとかなり低いみたいで、すんなり話を聞いてくれた。
「それじゃあ、このまま先に進んじゃう?」
「いや、待ってもらっていいか?」
マーブルの言葉に反応したのはエリックさんだった。
「今の戦闘もそうだが、この階層に来るまででもそれなりに戦闘をしている。前衛職の私たちだけならば体力がある限り平気だろうが、後衛職の魔王と王女が体力に余裕があっても魔力が減っていたら、後の危険に関わる」
「そうだね。僕も何かあったときに備えて魔力は回復しておきたいかな」
意見が一致したということで、一度休憩を挟むことにした。先ほど見つけた周りが壁に囲まれた行き止まりの部屋と、そこに繋がる唯一の部屋に陣取る。
行き止まりの部屋に簡易天幕を張り、交代で休憩をできるようにした。
その手前の部屋では、いつでもモンスターに対応できるようにと行き止まりの部屋に通じる道の前に座るようにして料理をしていた。料理をするのはマーブルで、何か手伝えることがあればと思って俺はマーブルと一緒に残っていた。
ローナとナーシャは汗をどうにかしたいと言って天幕に入っていき、エリックはナーシャの身の回りのお世話をするということで、ナーシャについていった。
薄い布越しであの二人が裸になって身体を拭いているという状況……。エリックさんマジ裏山……!!
「おーい。ゆーしゃさーん」
ローナとナーシャのウフフなところを想像していたら、マーブルに呼ばれていたことに気づくのが遅くなった。
「う、うん?どうかした?」
横に並んで座ってあることもあってか、覗き込んでくるマーブルの顔がすごく近くて驚いた。
めっちゃ近いよマーブルさん!近いせいで、ふんわりいい匂いがするよ!汗の匂いも混じっているけど、それが何かの香料と混じってよりヤバい感じになってるよ!
「あ、そっか。モンスターのことだね。モンスターの気配はしないみたいだよ」
数秒のうちにいろいろ考えてしまったが、なんとか気取られないように振る舞った……つもりだ。
「いやいや。モンスターはだいぶ狩ったから、当分現れないと思うんだよね。それより、スープを作ったから、味を見てもらえない?まあ、勇者も男の子だし?王女殿下と魔王が着替えているのが気になるかもしれないけど、とりあえず気づけかれないようにした方が良いよ」
はい。バレていたみたいですね。
「そんなに顔に出てたかな?」
マーブルが、スープを掬ったおたまを俺に差しだしてくる。それを飲みながらマーブルの返事を聞いたら、むせてしまった。
「ううん?鎌をかけただけ」
この子はなんて子なんだ……。などと思いながらおたまを返した。
「だって、ねえ」
マーブルはケラケラと笑いながら、スープをかき混ぜる。
「男ってそういうものでしょ?」
「否定できない自分が悔しいよ……」
俺はマーブルと違い、渇いた笑いしか出なかった。確かに、男っていうのはそういう生き物なんだよ!しょうがないでしょ!
「で、勇者としてはどっちの方が好みなの?」
肌が触れ合うほどに近づいてきたマーブルが、声を潜めて話す。
「いや、待った!こういうのは同性で話すものであって、女の子と話すことじゃないでしょ!?」
「まあまあ。そんなことは気にしない~」
鼻歌交じりに俺の意見を一蹴された。マーブルはそれでそれで、と話を続ける。
「あ、何なら……僕っていうのもアリなんだよ」
マーブルが、俺の腕に手を這わせ耳元で囁くように言ってきた。
俺から離れると、鍋からおたまを上げ、自分の顔より高いくらいまで持ち上げる。マーブルは口を開けると、おたまから落ちそうで落ちないしずくを舌を這わせ器用に、妖美を感じさせるような舌使いで口に含んだ。そのままコクンと喉が動くのを見てしまった俺は、息子がおはようと言って起きるのを感じた。
「マーブル?そういうことはやっちゃいけないとは言わないけど、せめてこのパーティ内だけにしてくれよ?襲ってくるような奴がいないとも限らないんだ」
「へー……。それは心配してくれてるのかな?それとも、今のを見ていいのは俺だけだってことかな?」
「確かに魅力的だったから、下心がないって言ったら嘘になる。だけど、心配しているっていうのもあるんだ」
マーブルを引き離してお互いがお互いを見るような形になる。
「うーん……。しょうがないな~。わかったよ。本当に心配してくれているみたいだし、勇者の言う通りにするよ」
聞き入れてくれたマーブルに、俺はホッと胸を撫で下ろした。
「けど、まだだれが好みか聞いていないんだよね~」
マーブルは忘れていてはくれなかったようだ。
「いいこと言って終わりみたいにしていたけど、僕は忘れてないよ?」
また、さっきのにやつきをし始めたマーブル。
忘れてなかったのか……!華麗にスルーができたと思ったのに。
「うーん……。まあ、みんながみんないいところもあって、悪いところもあるって感じだね」
適当に答えてみたが、逃がしてくれる気はないみたいだ。
「それじゃあ、僕だったらどこが良いのか教えてよ」
「もうこの話は終わっても良くないか?」
「ダメー」
マーブルがふざけているのがわかっているから、強く断れないし、マーブルもそれをわかっているようで、見事に逃がしてくれない。
ならいっそ、これを答えて話を終わりにしてもらえるように、話を持っていこう。
「わかった。それなら、マーブルの良いところを答えたら、この話は終わりにしてくれないか?」
「うーん……。わかった!いいよ」
少し考えていたが、なんとか了承してくれたマーブル。マーブルのことだけだからいいかと思いながら、マーブルの良いところを考える。
マーブル自身、下ネタを言っていたみたいだし、そっちの方を良いところとしても大丈夫だろ。
「えーっと……。まあまずは総合的に見て可愛いし、その年であの2人よりも胸がある。しかもさっきのマーブルが舌を出してってやつ。あれがエロかった。まあそれ見て、マーブルはいろいろとヤバくて、男としては良いと思ったかな」
女の子と下ネタ交えての会話なんてしたことがなかったから、なぜか緊張してしまった。
マーブルは俺の言葉にふむふむと頷きながら、自分の言葉に直した。
「僕はパーティで一番年下にもかかわらず、胸が大きいし、それに可愛いと。プラスで僕の舌技がエッチで興奮したんだ」
だそうですよ、とマーブルが言いながら後ろを振り向く。俺は嫌な予感がして、後ろを振り向くのを躊躇った。
「へー。そうなんですか。ミノルは、マーブルのように胸の豊満な女性が良いのですね。」
「ふむ……。ミノルは我が胸が小さいことを気にしているのを知っておったハズなのじゃが、そこで比べるのに出しておったということは、そんな我を馬鹿にしていると受け取って良いのかの?」
多分鬼のような形相になっている二人に俺は肩をがっしりと捕まれ、ガタガタと震えることしかできなかった。
「い、いえ……。その……」
振り絞って出した言葉も、なぜか敬語になっていた。
「しかも、マーブルさんの舌技がえ…エッチで興奮したったいうのはどういうことですか!?」
「どうって、特になにもないヨ?」
声が裏返ってしまった。
「そんなはずはないでしょう!?」
「なにもなかったら、そもそもそのようなことを言わないじゃろうししのぅ」
詳しく話を聞かせてもらいますと怒鳴ったナーシャと、なぜかローナにも引きずられ天幕がある部屋に引っ張り込まれた。
最後に見えたマーブルはお腹を抱えて、声にならないように笑っていた。エリックと交代で、もう一つの部屋に引き込まれた俺は、こってり数十分も事情聴取をされ、ことの顛末を全て語りようやく解放された。
休憩するはずだったのに逆に疲れているのはどうなんだろうかと思いながら、マーブルが作ったスープと、モンスターから採取した肉をみんなで食べた。食事中もこらえきれずに声を殺して笑うマーブルに、ジト目を向けることも度々ありながら、食事を終える。
食事を終えるころには、不満も取り除かれ、数時間後の出発へ向け、交代で睡眠を摂ることにした。
読んでくださり、ありがとうございました。
次回更新も不定期となっております。
報告などをTwitterで行っていますので、フォローしてもらえると早めに情報が届きます。
黒兎のマイページからぜひフォローしてください。