女の子の戦い
いつも読んでくださりありがとうございます。
いたらない点ばかりですが、最後までお付き合いください。
感想、ブクマは黒兎の頑張る力になります。
「な、なにをしているのですか!?」
「なにって、さっきも言ったであろう。腕を絡ませておるだけじゃ」
ローナはナーシャのことなどどこ吹く風といったように飄々としている。
「腕を絡ま……、組むなんて私もしていないのですよ!それに、仲良くしたくないのはあなたに対してであって、タナカ様に対してではありません!」
「そうかそうか。なら、お主もすれば良いではないか。腕は2本あるのじゃ。我のことなど気にせず、ミノルのもう片方の腕を使うとよい」
ローナが俺を無視して勝手なことを言い出した。
「ローナ?ナーシャはローナに腕組みをやめさせたいだけであって、自分がやりたいわけじゃないと思うぞ?ほら、召喚もまだ続きだから。なあナーシャ」
俺はナーシャに聞くが、ナーシャは顔を赤く染めたまま返事はなかった。
「おーい、ナーシャ?」
ナーシャは顔を俯かせたため、様子を見ようと覗いてみる。
「ずるいです……。私も、名前呼びも腕組みもしたいです……」
すごく小さい声でボソボソっと言ったため、その声は誰にも届いていなかった。
ナーシャは顔を上げ、真っ赤な顔で俺を見てきた。
「わ、私も、ミ、ミ、ミノル様と、し、し……したいです!」
なんだろう。勇者になったら、本当にハーレム補正でも付くのかな。
そんなことを思いながら、俺まで顔が熱くなっていることに気がついた。
ローナはニヤニヤしながら俺を見てくる。
「モテる男は辛いのう」
ローナの勘違い行動に怒りたくなったが、それよりも今はナーシャの方だ。ナーシャは上目遣いのまま俺を見ている。
「ダメ……ですか?」
こんな頼まれ方をされては、断ることもできない。
渋々といった感じでOKを出すと、ナーシャは大袈裟だと思うほどに喜んだ。
「ありがとうございます!そ、それじゃあ……」
ナーシャはそう言い、恐る恐るといった感じに腕を組んできた。ぎゅっと握られたせいか、2つのメロンに腕が挟まれる。ローナみたいに頬擦りまではしないが、腕に頭をくっつけ、存分に満喫していた。
「……そろそろいいか?」
「もうちょっと……」
「なにを言っておるのじゃ」
いつの間にか腕を解放していたローナが、ナーシャにぐいっと詰め寄っていく。
「きゃっ」
ナーシャは驚いて、俺から腕を離した。
そのナーシャをローナが引っ張っていき、俺に聞こえないように話し出した。
「それでそなた。どうじゃった」
「ど、どうとは一体何のことでしょうか」
「とぼけるでない。ミノルに抱き着いての感想じゃよ」
もともと赤くなっていたナーシャの顔が、ボンっと湯気が出るほど紅潮した。
「よ、よかったです……」
「なにが良かったのじゃ?詳しく言ってみぃ」
ローナはさあと迫り、さらにナーシャと密着する。
「その……。たくましい体ももちろん、体から香る男らしい匂いなど……。癖になりそうでした」
恍惚の表情で話すナーシャ。それを好機ととらえたローナは畳みかける。
「ふむふむ、そうかそうか。なら、我との単なる協力関係だけでなく、仲良くなることも考えた方が良いのではないかの」
「うっ!」
ローナの言っていることがわからないナーシャではない。ローナはナーシャに、我と仲良くしていれば今みたいなうれしいことが起きるやも知れない、と言っているのだ。
ナーシャは数秒考えたが、誘惑に勝てずあっさりと崩れ去ってしまったようだ。キラキラとした綺麗な目をしながら、ローナに向き直り握手を求める。
「魔王……、いえ、私もミノル様のようにローナと呼ばせていただきますわ。よろしくお願いします」
「うむ、ナーシャよ。よろしくのう」
2人はぐっとお互いの手を握り、利害を一致させた。
「……。なんか俺すごい置いていかれているんだよな」
まあ、2人が仲良くなったなら良いかな。そう思い、2人が握手をしているのを眺めていた。
ローナとナーシャは秘密の会話を終えたのか、俺のもとに戻ってくる。
「コホン!ミノル様。私、考えを改めましたわ。やはり、協力関係を結ぶ以上お互い仲良くした方がより良い連携を取ることができると思います」
「いきなり考えが変わった理由を知りたいとも思うが、確かにナーシャの言う通りだな。あれ、そういえばナーシャって俺のことタナカ様って呼んでなかったっけ?」
本当はさっきお願いをされたときからミノル呼びだったが、今と違って余裕がなかったためミノルは気づいていなかった。
「はい。それに関しましても、これから様々な敵と戦う際に意思の疎通が遅れては危険ということで呼び名を統一しようということで、私もローナのようにミノル様と呼ばせていただきます」
たしかに、呼びかけるとき2人の人からそれぞれ違う呼び方をされて戸惑ってしまった、なんてことになっては大変だからな。
「なら、『様』もなくていいんじゃないか?タナカ様なんて呼ばれていたのも、やっぱり俺からしたら違和感があったからな」
「そ、そうですか?では、ミ、ミノルと呼び捨てにさせていただきます」
俺は了解したことをナーシャに伝えると微笑まれた。さすがの俺でも、ここまで迫られたら勘違いをしてしまう。ナーシャは俺が勇者だからと親密にしてくれているだけで、俺が勇者じゃなければ振り向きもしないとわかっていても、さすがに勘違いしてしまう。
俺は息子が反応して自制が効かなくなる前に、ナーシャから視線を逸らした。
「それじゃあ、ナーシャの意思が決まったってことで残りの二人も召喚しちゃうな」
少しワザとらしかったが、話題を変えその場から逃げる。俺は今までやったことのない、魔法陣の複数発動を試してみようと、2つの魔法陣に魔力を流し始める。
「うむ。実質トップのナーシャが説得できた今なら、残りも召喚してしまって良いじゃろう。……そう考えると、どの魔法陣も同じ条件付けをしているのにトップを呼び出したミノルの幸運は相当なものかもしれないのう」
初めてのことに集中してしまったミノルにはローナの声はとどいていなかった。ローナもそれに気づいていて、形だけの返事をしておく。
「それはあるかもしれませんね」
ローナの言葉に返事をしたのはミノルではなくナーシャだった。
「過去にも経験を積むためなど、いくつかのダンジョンに潜っておりましたが、その時は価値の高いダンジョンアイテムを見つけたり、多くの道や部屋のせいで入り組んだ作りのダンジョンなどを勘で踏破していましたからね」
ナーシャはまるで自分のことのように嬉しそうに話す。
「ほう。ダンジョンアイテムはどのような物を手に入れたのじゃ?」
「そうですね……。能力はさまざまでしたが、宝具認定してもいいほどの威力、効果を持つ物ですね」
ダンジョンアイテムはその名の通り、ダンジョンでしか手に入れることができないアイテムで、武器や防具、はたまた自身の能力を底上げするような物まである。そのダンジョンアイテムの中でも、ランクというものがあり、ランクが高ければ高いほど、効果の上がったものとなる。宝具はそのランクの中でも一番上にあたるもので、現在までに踏破されているダンジョンで探すと、何百年かに一度持ち帰られるかどうかというものだ。ミノルはその宝具クラスのダンジョンアイテムを踏破済みのダンジョンから2個、踏破されていないダンジョンから8個持ち帰るという偉業を成し遂げていた。
「それはすごいのう」
ローナも今までに聞いたことの無いような出来事に素直に感心し、ミノルが特別な者なんだと認識する。一方で、もしその強力なダンジョンアイテムの矛先が魔人族に向いてしまったらという懸念が浮かんでいた。
「ですがまあ、その宝具はすべて常人に使えるような代物ではなく、ミノル様専用のアイテムとして使っているので、国の戦力として増えたわけではないですね」
ナーシャは敵対する意思がないことを再度確認し、ローナに伝えた。
「ふむ。ナーシャの話しを聞いていると、ミノル1人の力で十分じゃったかもしれんの」
「念には念をとも言いますし。それに私の召喚がなかったら私たちはミノル様を探し続け、魔人族の領土で発見なんてことになっていたら、魔人族が勇者様を何かしらの手を使って召喚し、始末しようとしているなどと勘違いしてそのまま戦争ということもありえますからね。事情の把握というだけでもこの召喚に意味はあったと思いますよ」
「そうか。まあナーシャにしてみれば、結果がこれでよかったのじゃろう?ミノルと親密になれたしの」
ニヤニヤと笑いながら、ナーシャを見るローナ。ローナが思うほどミノルとの距離を縮められていなかったのだがそれを知る者はいない。
今回は、前回から出ていたキャラ、ナーシャの設定についてです。
話しを読んでいただいてわかった方がほとんどだと思いますが、一応書かせていただきます。
ナーシャ・デルデ・ダルタリア
・王女+巨乳+むっつり
今回のキャラは、魔王幼女(少女)とは逆のお色気担当ということで、今後も桃色展開があるかもです。
次回は、さらに勇者パーティの人間が召喚され、動き出すと思われます。たぶん……。