見えた希望に向けて
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ローナに必要な物をリストアップしてもらい、どれはいつどこで手に入るというのを教えてもらった。魔王討伐のためと王国を出たのが日が天辺に来る頃で、その直後ローナに召喚されてからいろいろと話しているうちにいつの間にか日が傾いてきていたようで、夕方になっていた。なので、夕方から夜に掛けて手に入れることのできる素材を集めることにした。
ちなみに、召喚をおこなうのに必要な素材は、今いる地域で揃う物が選ばれるようだ。ローナの作業を見ていたが、こういう製作や製作といった生産系はとことんゲームに似ているんだなと思った。必要な物はローナ自身が選んでいるのではなく、ローナがウインドウ魔法を使い、今いる場所、条件付けを魔法陣作成手順と書かれたページで打ち込むことで勝手にリストアップされるのだ。俺自身はこの世界に来てから、生産系の生の字も見る機会がなかったため、ウィンドウ魔法にこんな使い方があるというのを初めて知った。興味本位で、自分のウィンドウ魔法を開いて、ローナと同じページを探してみたが、俺のウィンドウ魔法には、魔法陣作成手順と書かれたページが見つからず断念していた。そんな俺に気が付いたローナは、魔法陣作成手順と書かれたページは、さっき説明した職業補正にある[過去の遺産]というスキルの使い方の一つで、魔王以外には使えないと教えてくれた。さっきの説明ではイマイチ分からなかったが、これで理解できた。[過去の遺産]は、『かつて存在した魔王により集められた知識』という風に教えてもらっていたのだが、簡単に言うと、俺がいた世界にあるウィキ○ディアに近いようだ。更新は一人ずつしかできなく、リアルタイムな更新がされないため過去のことしか見ることができないという難点もあるが、この世界ではチート能力の一つに入るんじゃないかと思う。その能力があるからゲームみたいに素材を調べることができるみたいなのだが、作るときはすべて手作業で行うみたいだ。
まあ、ローナの能力のことはとりあえず置いておいて、俺とローナは素材を集めに出た。
2人並んで歩いていては移動だけで時間がかかってしまうため、ローナをおんぶしながら俺が指示を受けた方向にひたすら走るという作戦を取った。
「まずはこの先の崖で手に入るロックキメラの卵じゃ。巣は崖にできた隙間などに藁を詰めて作っているらしいの」
ローナが、俺の肩越しに指を指した先には確かに崖が見えていた。ところどころ、崖の中に隙間ができており、そこからは藁で作られたロックキメラの巣らしきものが見えていた。
「ロックキメラは夕方から夜にかけて活動しておるから、ロックキメラ本体ではなく卵を狙う場合は今がチャンスなのじゃ」
「了解。それじゃあ、見つかる前に卵を回収するか」
巣の周囲を、俺は走る速度を上げた。ローナも振り落とされないように俺の首に手を回していたが、俺自身もローナを振り落としてしまわないように、しっかりと支える。
「跳ぶから、しっかり捕まっていてくれよ」
前方の崖は、人ひとりが乗っかっても危険がないような突出部がいくつもある。俺のステータスならローナを気にしながらでも、その突出部を渡って簡単に崖の高いところまで昇れるが、念のため、落ちてしまわないようにと声をかける。
しかしローナは、崖をよじ登っていくとでも思っていたのか跳ぶという言葉に驚いていた。
「え?跳ぶ!?」
「それじゃあ行くぞ!」
「な、ちょ、待つの――ぎゃあああ!!」
俺はローナの言葉を待たずに、爆走からの跳躍に移った。突出部から突出部への跳躍を3回繰り返すだけで、崖の8割付近にたどり着いた。
ローナは高速移動の平行運動には耐えられても、跳躍の上下運動には耐えられなかったようだ。言葉が途中で叫びとなってしまっていた。僅か数秒の後には、体に力が入っていなかった。口をあけっぱで放心している姿は、まるでアニメなどで観た魂が抜け出ている状態のようだった。っと、そんなことを考えている暇はないんだ。ローナの叫び声で、ロックキメラが戻ってくるかもしれないからな。早く素材を集めるには、できるだけ面倒は避けていかないと。
「おーい、ローナ?」
一向に俺の背で放心状態になっているローナ。
「ちょっと休まないとだめだな」
巣も目の前だし、危険はないだろうと、俺はローナを下ろし休ませ一人でロックキメラの巣に行くことにした。
「よっと」
崖を登るときとは違い、軽く跳ぶ。着地で巣を壊してしまう可能性があったため、鋭い跳躍ではなく、ふわりとした跳躍にしたのだ。しかし、想像していたよりもロックキメラの巣は頑丈だったため、その心配は杞憂に終わった。
「えっと、卵は……っと」
さっそく卵を手に入れるべく周囲を見る。巣の大きさが普通の鳥の巣の何倍もあるのと同じように、卵も普通より大きいと思っていたが、そんなことはなかった。俺の知っているサイズの卵が50個近く巣の中にあっただけだった。
「これがロックキメラの卵なのかな?」
卵を1つ摘み見てみる。卵にまるで石ころのような模様が入っている。
「うーん……。巣がロックキメラのなんだから、卵もこれであってるだろ」
ローナはまだ復活して来ないため、聞くことができない。
「よし、ここにあるの全部あれば足りるだろ」
そう思い、ここにある卵すべてを、入れるところのサイズ以下のアイテムなら何でも、いくつでも入れることのできるマジックバッグに入れていく。このマジックバッグは、召喚されたときからいつの間にか装備されていた物で、異世界から勇者が召喚されたときに持っている物の一つらしく、勇者しか持っていないらしい。マジックバッグの中は異空間と繋がれているため、適当に入れても卵が割れる心配はない。マジックナック内のアイテムはウィンドウ魔法で確認でき、いつでも取り出しが可能だ。ちなみに、ウィンドウ魔法で見た卵についている名前は『なにかの卵』で、もしかしたら、ロックキメラの卵じゃないかもしれない。まあ、巣にあるんだあから、そんなことはないだろうけど。
「あれ?」
卵を回収している途中で、1つだけ柄が全く違う卵を見つけた。柄が石のようではなく、火に見えるような卵だった。
「まあ、一応回収しておくか」
柄の違う卵が気にはなったが、この崖に近づく前から発動していた気配感知に空を飛ぶ何かが引っかかったため、とりあえずその卵もマジックバッグに放り込む。
「よし」
全ての卵を回収し終えたため、ローナのもとに戻る。休ませていたおかげか、放心状態から戻っていた。
「ただいま」
「うむ。お帰り……じゃないのじゃ!ミノルの身体能力を甘く見過ぎていたのじゃ!あんなことできるのなら、初めから言っておいてくれれば我だってこんな放心状態になることもなかったじゃろうに。だいたい、ミノルは……」
戻ってきてそうそう元気になったローナから文句を言われた。これは長くなるなと思い、ロックキメラに見つかる前に移動をした方が良さそうだと感じた俺は、ローナを肩に担ぎ上げた。
「長くなりそうだから、見つかる前に移動するな」
「な、我の話しはまだ……ぎゃあああ!?」
ローナの話を遮り、3歩で登ってきたこの高さを一足で飛び降りた。
さっきよりも強い縦の重力に、ローナは放心状態よりひどい失神状態になってしまった。とりあえず、戦闘しないようにと逃げ、ローナが気が付いたら起こられつつも、他に必要な素材を集めて回った。そのときそのときでいろいろ言われていたが、気にせず爆走し、夜中の素材集めを終わらせ、明日の日中の素材集めに備えて、休むことにした。
今回は短いため、早めの更新です。
主人公と魔王幼女のキャラがイマイチ分からなくなり始めているので、そろそろキャラをまとめていこうかなと思います。(いつになるかわかりませんがw)
誤字脱字などがあったらご一報ください。
感想なども気軽にどうぞ。